大腸カメラでのポリープ切除は、検査と同時に行うこともでき患者さんの身体の負担が少ない治療法です。
大腸ポリープは大腸の粘膜に発生し、さまざまな形状・大きさをしているため、適切な方法での切除が求められます。
この記事では、大腸カメラでのポリープ切除や治療の手順、切除後の過ごし方について紹介します。
これから定期検査を始める人や、大腸ポリープ・大腸がんへの不安がある人は参考にしてください。
大腸ポリープが疑われる症状
大腸ポリープでは、自覚症状はほとんどありません。
大腸がんの多くは、腫瘍性のポリープが時間経過とともに肥大化することで形成されるため、定期検診による早期発見が重要です。
便潜血検査はポリープの発見に対して感度が低いため、早期発見のためには大腸カメラでの検査が大切です。
大腸ポリープができやすい人の特徴
以下の特徴がある人は、大腸ポリープができやすいとされています。
飲酒や喫煙の習慣がある人
飲酒や喫煙の習慣がある人は、大腸ポリープができやすいです。
アルコールの約80%は大腸で吸収されるため、日常的に飲酒する人の大腸では消化液の分泌や神経の反応が過剰になり、ポリープが発生しやすい環境を作ります。
またタバコに含まれる有害物質は、大腸に悪影響を及ぼしポリープのリスクを上昇させる危険があります。
欧米型の食事を好む人
大腸ポリープができやすい後天的な要因として、欧米型の食事が挙げられます。
赤身肉や加工肉、脂質の多い食事は大腸ポリープや大腸がんの発生リスクを高めるため、摂りすぎに注意が必要です。
糖質の過剰摂取や食物繊維の不足は便秘を引き起こし、大腸へ負担をかけるためポリープが形成される原因となります。
普段から食生活に気を遣い、ポリープの発生予防に努めましょう。
40歳以上の人
40歳以上の人は、40歳未満の人と比較して大腸ポリープができやすいです。
大腸ポリープは、40代を目安に増加し始め、加齢に伴いリスクが上昇します。
大腸カメラを受けた人の約40%に大腸ポリープが見つかるとされていますが、初期症状がほとんどないため、ポリープから派生する大腸がんを予防するためには検診が必要不可欠です。
50代になるとそれまでよりも一層ポリープやがんに注意が必要になるため、40歳以降は定期的な検査が推奨されます。
家族に大腸ポリープや大腸がんの既往歴・現病歴がある人
家族に大腸ポリープや大腸がんの既往歴や現病歴がある場合は、遺伝により大腸ポリープや大腸がんが発生するリスクが高まる傾向があります。
家族性大腸腺腫症は大腸にポリープが多数発生する遺伝性疾患で、10代からすでにポリープが出現し、放置すると60代までにほぼ必ず大腸がんを発症するといわれています。
また両親のいずれかに家族性大腸腺腫症がみられる場合、約50%の確率で子どもに遺伝するため注意が必要です。
大腸カメラでのポリープの切除方法
大腸カメラでのポリープ切除には、大きく分けて3通りの手法があります。
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
いぼ状の隆起したポリープは、内視鏡的ポリープ切除術と呼ばれる方法で切除します。
内視鏡的ポリープ切除術は、大腸カメラの先端に取り付けられたスネアと呼ばれる金属の輪でポリープの根元を締め付けて切除する方法です。
傷口が大きい場合は、1週間ほどで自然に排出されるクリップを用いた止血処置を行います。
内視鏡的粘膜切除術
平たい形をしたポリープや早期がんの可能性が考えられるポリープは、内視鏡的粘膜切除術と呼ばれる方法で切除します。
内視鏡的粘膜切除術は、ポリープの下層に生理食塩水を注射することで隆起させ、スネアを用いて焼き切る方法です。
隆起していないポリープにスネアを引っ掛ける場合、健康な腸壁に損傷を与えるリスクがあるため、このようなケースでは内視鏡的粘膜切除術が適用されます。
内視鏡的粘膜下層剥離術
内視鏡的粘膜下層剥離術は、リンパ節転移のリスクが低いと判断された20mm以上のポリープや早期がんの切除に適用される治療法です。
内視鏡的粘膜切除術と同じ方法でポリープを隆起させたあと、ナイフを用いて粘膜を切開し、病変部分を下層から剥離します。
入院加療が必要になりますが、内視鏡を用いた手法で外科手術と同等の治療効果が期待でき、患者さんへの体の負担を軽減する方法として有効です。
大腸カメラ・ポリープ切除の手順
ここからは、大腸カメラやポリープ切除の手順を紹介します。
事前診察・検査予約
大腸カメラを受ける際は、事前に外来を受診してからの予約になるため、保険証や医療証を忘れずにお持ちください。
初診の方は、コチラを詳しくご覧ください。
当院の大腸内視鏡検査については、コチラを詳しくご覧ください。
検査前日
検査前日は消化の良い食事を20時までに済ませ、水・お茶・スポーツドリンクなどの飲料以外は20時以降の摂取を避けてください。
体調を整えるため、早めの就寝を推奨します。
検査当日(検査前)
当日は、検査の4時間前に前処置用の下剤を内服します。
検査前は食事を避け、水やスポーツドリンクなどの飲料のみ口にできます。
お薬は医師の指示通りに服用できますが、血液の凝固に関する薬や血糖値に関する薬を常用している場合は、必ず事前に相談しましょう。
検査・ポリープ切除
希望に応じて鎮静剤を注射し、検査・ポリープ切除を行います。
検査の所要時間はポリープの数や大きさ、発生場所によって異なりますが、切除を含めおよそ15〜30分です。
大腸ポリープはほとんどのケースで自覚症状がないため、基本的には検査で発見され次第その場で切除します。
切除したポリープは病理検査に回し、がん化のリスクがあるか否か診断します。
当院では、10mm程度の大きさの大腸ポリープであれば検査当日の日帰り切除が可能です。
検査後
検査終了後は、検査結果の説明を受けます。
ポリープの切除を行った場合、術後の過ごし方について医師によく確認しておきましょう。
検査時に鎮静剤を使用した場合、院内のリカバリールームで休憩してからの説明・帰宅となります。自転車や車の運転は禁止のため、付き添いや送迎の手配が必要です。
大腸ポリープを放置するとどうなる?
大腸ポリープを放置すると大腸がんになる可能性があるため、ポリープの早期発見と切除が重要です。
大腸ポリープは腫瘍性のものと非腫瘍性のものに分類されますが、がん化のリスクがあるのは基本的に腫瘍性のポリープで、およそ5〜10年ほどかけて大腸がんになるとされています。
また大腸がんのほとんどは、良性の大腸ポリープから発生するといわれています。
大腸ポリープの発生を調べるためには、便潜血検査を行う方法もありますが、ポリープの段階では約70%が陰性になり、陽性反応が出る場合はすでにがん化しているケースが多いです。
大腸がんは、バランスの取れた食事や適度な運動で予防効果が期待できますが、人によっては体質や家系が原因で発生しやすく、一度切除しても新たに出現する可能性があります。
そのため、大腸カメラを用いた定期的な検査で早期発見し、ポリープの段階で切除するのが有効です。
大腸カメラでポリープ切除ができないケース
以下のケースでは、大腸カメラでポリープ切除ができない可能性があります。
ポリープが大きいと判断された場合
ポリープが大きすぎると、大腸カメラでは切除しきれないと判断される場合があります。
この場合、専門の医療機関で入院を伴う外科手術を受ける必要があります。
大腸ポリープは大きいほどがん化のリスクが高まり、20mm以上になると約65%ががん化するとされているため、小さいうちに早期発見し切除することが大切です。
ポリープが粘膜下層よりも深く浸潤している場合
ポリープが粘膜下層よりも深く浸潤している場合、大腸カメラで切除しきれない可能性があります。
大腸カメラで切除できるのは、粘膜下層に軽度浸潤したポリープまでで、それより深くに浸潤したものは外科手術による切除が必要です。
ポリープに緊満感(張りや光沢)がみられたり、腸管内のひだがポリープに集結していたりする場合は、粘膜の深くに浸潤している可能性が高いです。
大腸カメラの検査時に、ポリープがどの層まで浸潤しているか正確に判断し切除方法を選択することで、体への負担を抑えた治療法を選ぶことにつながります。
大腸ポリープ切除にかかる費用
大腸ポリープの切除のみにかかる費用は、ポリープの個数によって異なりますが、1割負担で約7,000〜9,000円、3割負担で約20,000〜27,000円です。
その他、診察・生検・鎮静剤の使用、ポリープの数などによって追加料金が発生するほか、年齢や収入によって保険適用の割合が異なります。
特に生検は、ポリープの腸管への侵食の度合いや転移の有無、がんの種類や性質を調べ、その後の治療方針を定めるための重要な検査です。
当院の大腸内視鏡検査とポリープ切除費用の詳細はコチラをご覧ください。
大腸ポリープ切除後の過ごし方
ここからは、大腸ポリープ切除後の過ごし方について紹介します。
激しい運動や腹圧がかかる行為は避ける
大腸ポリープの切除後は、激しい運動や腹圧がかかる行為は禁止です。
激しい運動は血行を促進し、傷口からの出血を助長する可能性があります。
またゴルフやテニスなどのスポーツや、筋トレ・スクワットなどで腹圧がかかると、出血や穿孔のリスクを上昇させます。
これらの行動や、重いものを運んだり持ち上げたりする仕事は術後2週間ほどは避けましょう。
食生活に気を付ける
大腸ポリープの切除後は、飲食物に気を付けて生活しましょう。
術後1週間は香辛料や脂肪分、食物繊維を多く含む飲食物を避け、腸を休ませる食事を心掛けることが大切です。
アルコールは血行を促進して出血のリスクを上昇させるため、術後2週間ほど控えることが推奨されます。
術後は排便時に腹圧がかかることを避けるため、便秘を予防する必要があります。
胃腸へ負担をかけない飲み物を選び、いつもより多めに水分補給をしましょう。
遠方への旅行や出張は避ける
大腸ポリープの切除後は、遠方への旅行や出張などの遠距離移動は避けましょう。
長時間の座位や気圧が変化する飛行機での移動は腹圧がかかるため、術後2週間は長距離を座って移動する予定を避けることが推奨されます。
また術後に大量の出血がみられる場合は速やかに止血する必要がありますが、旅行や出張先では処置が遅れる可能性があるため危険です。
入浴の仕方に注意する
大腸ポリープの切除後は、入浴の仕方に注意しましょう。
当日のサウナや長風呂は血行を良くし、出血のリスクを高めます。
湯船に浸かることは極力避け、シャワーで済ませるようにしましょう。
出血の様子を観察する
大腸ポリープの切除後は、出血の有無や量をよく観察しましょう。
便に少量付着する程度の出血はよくある症状の一つですが、便器が真っ赤になるほどの出血がみられる場合は速やかな受診が必要です。
術後10日前後は、特に出血の様子をよく観察し、異常が見られた場合はすぐにポリープ切除を受けた医療機関を受診しましょう。
まとめ
大腸カメラでのポリープ切除について紹介しました。
大腸のポリープやがんは初期症状がほとんどなく、症状が現れた時点ではすでに進行しているのが特徴です。
予防するためには生活習慣の改善だけでは不十分であるため、定期検診での早期発見・治療を目指しましょう。
広尾クリニック内科・消化器では、大腸内視鏡検査に対する苦手意識を持っている患者さんの不安解消に努め、定期検査を受けやすい環境を提供します。
大腸ポリープや大腸がんのほか、潰瘍性大腸炎やクローン病などの難病を患っている患者さんも、日常生活を穏やかに過ごせるよう治療を行います。
大腸内視鏡検査をしたことがない方、血縁者に大腸がんになった人がいる方をはじめ、ポリープの検査・切除を考えている人はぜひ一度ご相談ください。