胃の調子は、食事や生活リズム、服用している薬など、さまざまな要因から影響を受けます。普段は問題なくても、突然みぞおちが痛くなったり、吐き気を感じたりすることがあります。胃に関する症状は一時的な体調不良でもみられますが、胃の粘膜に炎症や傷が生じている場合があります。また、似た症状の消化器疾患もあるため、症状だけで原因を判断することは困難です。
急性胃炎とは?
急性胃炎とは、胃の内側を覆う粘膜に急激な炎症が起こっている状態を指します。胃炎にはさまざまな種類がありますが、急性胃炎は比較的短期間で発症する点が特徴です。急激な粘膜障害によって出血やびらん、潰瘍などが生じ、強い上腹部痛などを伴う状態は「急性胃粘膜病変(AGML)」と呼ばれることがあります。
胃粘膜には、強い酸性を示す胃酸や消化酵素から胃そのものを守る働きがあります。しかし、薬やアルコールなどの影響によって粘膜を守る機能が弱まると、胃酸による刺激を受けやすくなり、炎症や粘膜の損傷につながりやすくなります。
急性胃炎の原因
急性胃炎は、薬剤やアルコール、身体への強い負担などによって胃粘膜が傷つくことで起こります。
たとえば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は痛みや発熱を抑える目的で広く使用されていますが、胃粘膜を保護する働きに影響を与え、胃炎を引き起こすことがあります。処方薬だけでなく、市販の鎮痛薬にも含まれている場合があるため、服用時には注意が必要です。
アルコールも胃粘膜を刺激する要因です。特に多量の飲酒は胃粘膜の防御機能を低下させ、炎症やびらんを生じさせることがあります。また、重い感染症や大きな手術、重度の外傷など、身体に大きな負担がかかった際には、胃粘膜への血流低下などによって急性ストレス性胃炎が起こる場合があります。このほか、感染症や胃粘膜への直接的な刺激などが原因となるケースもあります。
急性胃炎の症状
急性胃炎で見られる症状には、みぞおち付近の痛みや不快感、胃もたれ、吐き気、嘔吐、食欲低下などが挙げられます。症状は突然現れることがあり、食事のあとに胃の重さや痛みを強く感じる方もいます。一方で、胃粘膜に炎症があってもほとんど自覚症状がない場合もあるため、症状の強さだけから胃粘膜の状態を判断することはできません。
胃粘膜の損傷が進んで出血すると、吐血や黒色便が現れることがあります。こうした症状は消化管出血を示している可能性があるため、速やかな医療機関の受診が必要です。また、強い腹痛が続く、何度も嘔吐して水分がとれない、ふらつきや冷や汗があるといった場合も、単なる胃の不調と自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
急性胃炎の検査方法
急性胃炎が疑われる場合は、症状が始まった時期や痛みの場所、直近の食事や飲酒状況、服用している薬などを確認します。症状や全身状態に応じて、炎症や貧血、脱水などを確認するための血液検査が行われることもあります。
胃粘膜の状態を詳しく調べる際に用いられるのが、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)です。口または鼻から内視鏡を挿入し、食道や胃、十二指腸を直接観察します。必要に応じて組織を採取する生検を行うこともあります。
急性胃炎の治療
急性胃炎の治療は、胃粘膜に炎症を起こしている原因を確認し、それに応じた対応を行うことが基本です。薬剤が原因と考えられる場合は、医師と相談しながら薬の中止や変更、用量の調整などを検討します。アルコールが関係している場合には飲酒を控え、胃粘膜への刺激を避けることが重要です。
症状を和らげ、胃粘膜の回復を促すために、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬など、胃酸の分泌を抑える薬が使用されることがあります。また、ピロリ菌感染が確認された場合には、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌治療が検討されます。胃からの出血が強い場合には、上部消化管内視鏡を用いた止血処置が必要になることもあります。
急性胃炎に似た病気
みぞおちの痛みや胃もたれ、吐き気などの症状は、急性胃炎以外の病気でもみられます。代表的なものとして、胃潰瘍や十二指腸潰瘍があります。消化性潰瘍では胃や十二指腸の粘膜が深く傷つき、みぞおちの痛みなどが現れるほか、出血すると吐血や黒色便を伴うことがあります。
また、内視鏡検査などで症状の原因となる明らかな異常が確認されないにもかかわらず、胃もたれや早期満腹感、みぞおちの痛みなどが続く場合には、機能性ディスペプシアと診断されることがあります。胃がんでも胃の不快感や食欲低下などの症状がみられる場合がありますが、初期には症状がほとんどないこともあります。そのほか、感染性胃腸炎や胆石症、胆のう炎、膵炎などでも上腹部の痛みや吐き気が現れるため、症状だけで病気を判断することは困難です。
急性胃炎の予防
急性胃炎を予防するには、普段から胃粘膜への負担を減らすことが重要です。鎮痛薬を頻繁に服用している場合は、用量や服用方法を守り、長期間の自己判断による服用を避けます。胃の症状が少しでも気になったら、早めに医師へ相談することが大切です。
また、飲食や飲酒にも注意が必要です。特に空腹時の多量飲酒など、胃に強い刺激が加わる習慣は控えることが望まれます。また、胃痛や吐き気がある状態で無理に飲食を続けたり、市販薬だけで対応したりすると、別の病気を見逃す可能性があります。
急性胃炎は原因への対応によって改善が期待できる一方、症状だけでは他の消化器疾患との区別が難しいため、胃の症状が強い場合や繰り返す場合は、早めに消化器内科を受診して適切な検査を受けることが大切です。