インフルエンザは毎年のように流行します。高熱や倦怠感などの症状が急速に現れるため、日常生活に支障をきたすだけでなく、感染力の高さから周囲への影響も心配される感染症です。
風邪の症状が酷くなった状態と似ていることもあるため、インフルエンザと判断しにくい場合もあり、早期治療を逃してしまう恐れもあるでしょう。
適切な判断をするためには、インフルエンザの主な症状や風邪との違い、発症期間、症状が落ち着いた後の注意点などについて知っておくと役立ちます。
この記事では、インフルエンザの症状、咳や発熱の発症期間、感染力が残るとされる8日目のリスクや予防策などについて詳しく紹介します。
インフルエンザかも?と疑っている方や、インフルエンザの症状について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
インフルエンザの症状と特徴
インフルエンザは風邪と似ている部分もありますが、実際は異なっており、強い症状を伴う感染症です。
ここでは、インフルエンザの代表的な症状や、風邪とインフルエンザを見分けるポイントを紹介します。
インフルエンザの代表的な症状
インフルエンザの症状は、一般的な風邪と比較すると急激に進行することが特徴です。代表的な症状として以下のものがあげられます。
- 高熱(38度以上)
- 関節痛
- 筋肉痛
- 頭痛 など
また、一般的な風邪よりも倦怠感が強く、動けなくなるほどの体力低下が見られることも少なくありません。
このほか、食欲の低下や睡眠不足などが起こるケースもあるため、健康悪化の心配も増大します。
「インフルエンザかも?」と思ったら、医療機関の早期受診を強くおすすめします。
風邪とどう違う?インフルエンザ特有のサイン
風邪とインフルエンザはよく似ていますが、その違いは『症状の重さ』と『進行の速さ』にあります。以下の表で違いを確認してみてください。
病名 | 代表的な症状 | 発症の仕方 |
---|---|---|
風邪 | ・喉の痛みや鼻水、微熱 | 徐々に症状が現れる |
インフルエンザ | ・高熱・全身症状(関節痛、筋肉痛、頭痛) | 急激な発症が見られる |
風邪は喉の痛みや鼻水などが徐々に現れ、体温も微熱程度に留まることが多いですが、インフルエンザは急激に発熱し、38度以上の高熱が数日続きます。
また、インフルエンザでは筋肉痛や関節痛が強く現れ、全身に大きな負担がかかる点も違いのひとつになります。
インフルエンザ特有の倦怠感によって仕事や学業への影響も大きくなるため、早期の治療が必要です。
インフルエンザがもたらす身体への負担と注意点
インフルエンザは身体全体に大きな負担をかける感染症です。高熱により体温調節が乱れ、筋肉痛や関節痛が引き起こされるため、長時間の休息が必要になります。
また、免疫力や体力の低下により、ほかの感染症や合併症にかかるリスクも高まります。特に以下の感染症には注意が必要です。
- 気管支炎
- インフルエンザ肺炎
- 細菌性脳炎
- 脳症
さらに、症状が治まったとしても、完全に体力が回復するまでには数日以上かかることが多く、無理をすると回復が遅れる恐れがあります。
インフルエンザに感染した際は、無理をせずに十分な休息を取り、しっかりと栄養をとって回復を待ちましょう。
インフルエンザの発症からピークまで
インフルエンザは感染後に短い潜伏期間を経て急激に発症し、ピークを迎えます。
ここでは、感染から症状が現れるまでの流れとピーク時期、その後の体調管理について紹介します。
潜伏期間はどれくらい?感染から発症までの流れ
インフルエンザに感染してから発症するまでの潜伏期間は一般的に1〜5日です。
症状が現れるまでの期間は短く、感染力も強いため、感染が広がりやすいことが特徴です。
潜伏期間を経て発症すると、喉の痛みや寒気などの初期症状が現れ、高熱や筋肉痛、関節痛といった症状が急速に進行します。
また、インフルエンザは潜伏期間中でも感染力があるため、発症前に接触した人も注意が必要です。
発症後、職場や学校に欠勤・欠席などの連絡をする際には、自分がインフルエンザだと診断されたことを伝えておくとよいでしょう。
発症後のピークは3日!急激な症状悪化に注意
インフルエンザは発症後すぐに症状が悪化し、特に高熱が続く3日目までがピークです。
この時期には38度以上の高熱が続き、強い倦怠感や筋肉痛が全身に現れます。
急激な症状の悪化により、食欲が落ち、十分な水分補給も困難になることがあるため、無理をせず安静に過ごすことが大切です。
また、体力の消耗が激しくなるのもこの時期です。
無理をすると回復が遅れ、日常生活に戻りにくくなることがあるため、できるだけ身体に負担をかけないよう、こまめに水分補給を行い、十分な休息を取るように心がけましょう。
休息中は身の回りのことが難しくなる場合も考えられます。看病をする人は感染に注意しながら、水分補給や服薬のタイミングに声掛けをしてあげてみてください。
ピーク後の症状の変化と体調管理のポイント
インフルエンザのピークを過ぎると、高熱や筋肉痛などの強い症状は徐々に落ち着きますが、1~2週間ほど咳が残ることがあります。
回復の途中でも油断は禁物で、再度体調を崩さないように慎重な体調管理を行いましょう。
体力が完全に戻るまでに数日を要することがあるため、栄養のある食事や十分な睡眠を確保し、少しずつ日常生活への復帰を目指す意識が大切です。
仕事や学業が気になるかもしれませんが、まずは健康を取り戻すことを重視し、体調が整ってから職場や学校へ復帰しましょう。
インフルエンザ8日目の感染力について
学校保健安全法ではインフルエンザの感染後の登校について、『発症後5日、解熱後2日』と定めています。
つまり『発症から考えると約8日目』であることも多いのですが、この時期、感染力はどの程度になっているのでしょうか。
ここでは、インフルエンザ8日目の感染力について紹介します。
8日目でも感染力はある?インフルエンザの感染リスク
インフルエンザは、発症後5〜7日で感染力が弱まるとされていますが、8日目でも感染力が残っている場合があります。
特に、免疫力が低下している子どもや高齢者、基礎疾患を持つ人は感染リスクが高くなるため、近くにそのような人がいる場合には、8日目でも適切な距離を保ち、感染に注意したほうがよいでしょう。
また、感染力が低下するとはいえ、完全にリスクがなくなるわけではありません。外出や人との接触には慎重になり、感染防止の対策を続けていきましょう。
症状が落ち着いた後も注意が必要?周囲への感染リスク
自分の体調がよくなっても体内にはまだインフルエンザウイルスが潜んでいる可能性があるため、ほかの人への感染を防ぐために慎重な行動が求められます。
8日目には職場や学校へ復帰している人が少なくありません。しかし、インフルエンザの症状が治まり、体調が回復したように感じても、前述の通り周囲への感染リスクがゼロになるわけではないことも事実です。
家庭や職場、学校などでは以下のような感染対策をとり、感染予防に努めることをおすすめします。
- マスク着用
- 手洗い・うがいの徹底
マスク着用や手洗い・うがいの徹底は、他人へ感染させにくくするだけではなく、自分が感染しにくくなるというメリットもあります。
インフルエンザの感染を避けて健康に暮らすためにも、ぜひ取り入れてみてください。
復帰タイミングはいつ?大人と子どもの判断基準
インフルエンザの発症後、仕事や学校への復帰のタイミングは慎重な見極めが大切です。
子どもの復帰は学校保健安全法を目安にできるため分かりやすいのですが、大人の場合は会社の規定や本人の判断に任せられるケースが多くなっています。
大人の場合、基本的には子どもの判断基準になる学校保健安全法の『発症後5日、解熱後2日』と大きな違いはありません。
一般的には、解熱してから少なくとも2日間は休養し、体調が整ってからの復帰が推奨されます。自分での判断が難しい場合には、医療機関で相談してみるとよいでしょう。
会社によっては具体的な日数を定めていることもあるため、専門部署へ質問したり、規定を確認したりすると分かりやすくなります。
職場復帰時には診断書や治癒証明書が必要?
社会人の場合、「復帰の際には診断書や治癒証明書が必要なのでは」と思うかもしれませんが、どちらも法的根拠はありません。
厚生労働省『令和5年度インフルエンザQ&A』によると、診断書や治癒証明書の提出は『望ましくない』と回答しています。理由は以下が該当します。
- インフルエンザの陰性証明が困難であること
- 医療機関に過剰な負担をかける可能性があること
このような基準があるため、もしも社員がインフルエンザで病欠になった場合にも、復帰時に診断書や治癒証明書を求める必要はありません。
子どもの復帰時には証明書類が必要?
回復した子どもの登園・登校についても、社会人と同じく、回復を証明するための検査や証明所の提出を行う必要はありません。
保育所の場合、以前は『医師の意見書』『保護者による登園届』などが求められることがありましたが、厚生労働省『令和4年度インフルエンザQ&A』で不要であると正式に明記されました。
さらに、令和5年度版、令和6年度版では『医師の意見書』『保護者による登園届』などについて一切言及されていません。このことから、子どもの再登園に特別な書類を用意する必要はなくなったことが分かります。
ただし、保育所によってはそれぞれの規定を設けている可能性があります。子どもが再登園する前に確認しておきましょう。
インフルエンザの予防と対策
インフルエンザは感染・発症後の対応と同様に、予防もまた重要です。
ここでは、感染を防ぐための予防接種や日常生活での予防策、万が一発症した場合の対応方法について紹介します。
予防接種の効果と受けるべきタイミング
インフルエンザ予防接種は、接種後に抗体が作られるまでに2週間程度かかるため、インフルエンザが流行し始める前の11月中旬までに受けることが推奨されます。
予防接種を受けるかどうかは任意ですが、インフルエンザは罹患すると数日間寝込んだり、症状が軽快してもしばらく咳などが残ったりなど、生活の質を落としてしまう病気です。
できる限り予防に努め、その一環として予防接種を受けることをぜひ検討してみてください。
実は、予防接種を受けたからといって、絶対にインフルエンザに罹患しないというわけではありません。
しかし、以下のような効果が期待できるため、万が一に備えての対策として取り入れることは、決して無駄ではないでしょう。
- 感染しても発症を抑えやすい
- 発症しても重症化を防ぎやすい
『仕事や日常生活に支障を出さず健康に過ごしやすくなる』、『受験を控えた学生さんやご家族の感染の心配を軽減できる』なども、予防接種で得られるメリットです。
また、高齢者や基礎疾患を持つ人、医療従事者は感染リスクが高いため、特に接種が推奨されています。
なお、以下の人は重症化リスクが高いとされており、予防接種法による定期接種として受けられます。
- 65歳以上の人
- 60~64歳で、心臓、腎臓・呼吸器のいずれかに障害があり、生活を極度に制限される人
- 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害があり、日常生活が難しい人
2、3はおおむね身体障害者障害程度等級1級に相当する人です。
予防接種法による定期接種は公費での助成があるため、金銭面の負担が少ないメリットがあります。該当する人は接種を検討してみてください。
日常生活でできる感染予防
日常生活での感染予防として取り入れやすいものは、手洗い・うがいとマスクの着用です。
手洗いは、手に付着したウイルスの体内侵入を防ぐ基本的な方法であり、外出先から戻った後や食事前に徹底すると効果的です。
うがいも、喉や口腔内のウイルスを洗い流すために効果を発揮するでしょう。
また、マスクの着用は自身への飛沫感染を防ぐだけでなく、周囲への感染リスクを減らすための基本的な対策となります。
このような基本的な予防策を日常的に実践していけば、インフルエンザやほかの感染症の感染リスクを軽減しやすくなるでしょう。
発症後の対策と早期受診の重要性
インフルエンザの症状が現れたら医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。受診タイミングはより精密な検査結果が出やすい発症後12~48時間以内が適しています。
高熱や倦怠感などが強く現れた場合、早期の診断と治療を受けることで、重症化を防ぎやすくなります。
また、周囲への感染リスクを減らすためにも、発症後はなるべく外出を控え、家族に感染しないようマスクを着用し、こまめに手洗いを行うなどの対策が大切です。
ほかにも以下のような対策がおすすめです。
- 同じ食器やタオルを共有しない
- 加湿や換気をこまめに行う
- 共有部分(トイレ、お風呂など)はアルコール消毒をする
同居家族が感染した場合は、生活スペースを分けることも感染予防として有効です。分ける日数は学校保健安全法の『発症後5日、解熱後2日』を目安にしてみてください。
まとめ
インフルエンザは急激に症状が進み、高熱や倦怠感などに悩まされる感染症です。
もしも発症してしまったら発症してから12~48時間以内の受診を心がけ、発症後のピークや落ち着いた後の感染力などに注意しながらゆっくりと休息を取り、回復を目指しましょう。
職場や学校への復帰について法的な規則はありませんが、回復してもしばらくは体内にインフルエンザウイルスが残っている可能性があるため、手洗いやうがい、マスクの着用などが推奨されます。
インフルエンザの予防接種や感染対策を意識して、流行中も罹患しないように注意しながら過ごしましょう。
広尾クリニック 内科・消化器ではインフルエンザをはじめ、各種予防接種を受けていただけます。必要な方はぜひ当院での接種をご検討ください。