インフルエンザは毎年多くの人に感染を広げ、特に冬の時期に流行しやすい感染症です。
発熱や咳、全身の倦怠感などの症状が見られるほか、潜伏期間や感染期間は無症状でも感染リスクがある時期であるため、注意が必要です。
自分や周囲の人を守るために、インフルエンザの潜伏期間や感染期間を理解し、予防や早期対応に役立てましょう。
この記事では、インフルエンザの潜伏期間や感染期間、症状が現れるタイミング、感染拡大を防ぐための対策などについて紹介します。
インフルエンザに感染した人と接触したかも?という人や、潜伏期間や感染期間などに疑問がある人は、ぜひ参考になさってください。
インフルエンザの潜伏期間とは?
インフルエンザの潜伏期間は、感染してから症状が現れるまでの期間を指し、通常1〜5日程度です。
ただし、この期間の長さには個人差があるため、個人の状態をよく観察することも大切です。
ここでは、潜伏期間の長さや個人差、潜伏期間中に見られる症状、感染リスクなどについて紹介します。
インフルエンザの潜伏期間の長さと個人差
インフルエンザの潜伏期間は通常1〜5日とされていますが、以下の理由によって個人差が生じる場合があります。
- 感染した人の年齢
- 体力の有無
- 免疫力の状態
- 感染したウイルス株の種類 など
例えば免疫系が健康的な若い世代は、免疫システムがインフルエンザウイルスに素早く反応し、症状が早めに現れます。
一方、加齢によって免疫系が衰えている高齢の人や、まだ未発達の幼児の場合、若い世代に比べると免疫系の反応が遅くなり、潜伏期間が長くなる傾向です。
体力が低下している人も同様で、免疫系の反応が鈍り、潜伏期間が長くなることが少なくありません。
また、感染したウイルス株の種類も潜伏期間に関係します。
インフルエンザのウイルス株には複数の種類があり、その中には潜伏期間が長いウイルス株がある可能性もあります。
感染したウイルス株がどのようなタイプかは検査するまで分かりませんが、いずれのタイプであるにせよ、インフルエンザが流行するシーズンには、感染を予測した行動を取ったほうがよいでしょう。
潜伏期間に見られる症状
インフルエンザの潜伏期間中は、通常は症状が現れず、感染を自覚しにくいことが特徴です。
高熱や激しい咳といった、インフルエンザの顕著な症状は発症後に出ることが一般的であり、感染した段階ではほとんど気付きません。
しかし、ウイルスは体内に存在し、感染力を持っているため、行動によっては潜伏期間中でも無症状のまま他人に感染させるリスクが存在します。
インフルエンザが流行する季節には、自覚症状の有無にかかわらず、感染予防を意識したほうがよいでしょう。
潜伏期間中の感染リスクや対策
前述の通り、潜伏期間中もインフルエンザの感染リスクは存在します。
症状が現れていない段階でもウイルスが体内で増殖している可能性があるため、家庭内や職場、学校などでの接触で感染が拡大しやすくなります。
特に、日常的に近い距離で長時間過ごす家族や同僚、同級生などとの間では感染リスクが高いです。
お互いの感染リスクを減らすため、インフルエンザの流行時期には、以下のような方法を取り入れて予防に努めましょう。
- 手洗い
- うがい
- マスク着用
- インフルエンザワクチンの接種 など
このような基本的な予防方法を徹底することにより、万が一感染していても感染拡大を防ぎやすくなります。
なお、手洗い・うがい・マスク着用は、インフルエンザだけではなく一般的な風邪の予防にも効果が期待できるため、ぜひ取り入れてみてください。
インフルエンザの感染期間について
インフルエンザの感染期間は、発症から他人に感染させるリスクが最も高まる期間を指します。この期間中は体調の管理だけでなく、感染予防の徹底が重要です。
ここでは、インフルエンザの感染期間について紹介します。
感染期間の目安と潜伏期間との関係
感染期間は発症前の1日前から発症後5〜7日程度、合計で8日程度とされています。潜伏期間とは異なり、症状が現れた後も感染力が続くことが特徴です。
発症後2〜3日が感染期間のピークとされ、特にウイルスが活発になる時期にあたり、周囲にウイルスを拡散しやすくなります。
潜伏期間は感染後にウイルスが体内で増殖し始める段階ですが、感染期間は症状が現れ、他人に感染させるリスクがさらに高まる段階です。
発症してから数日間は周囲への感染を避けるため、接触を控え、自宅での静養を心がけましょう。
無症状感染者がもたらすリスクと注意点
インフルエンザは無症状の感染者(不顕性感染者)もいる病気であり、潜伏期間とされる1〜5日が経過しても発症せず、感染期間とされる日数になっても、そのままウイルスが排出され続けるケースがあります。
無症状の場合、体外に排出されるウイルス量が少ないため、感染性は低いという見方もありますが、まったくのゼロというわけではありません。
しかし、無症状の場合は自覚したくてもできない状況であり、対策が難しいことも確かです。
個人が感染に備え、予防習慣を取り入れることが建設的な対策になるでしょう。
インフルエンザの発症と経過
潜伏期間を終えたインフルエンザが発症すると、急激な症状が現れ始めます。この時期は、特に発症後のピークを迎えるまでの間に注意が必要です。
ここでは、インフルエンザが発症した後の症状やピークなどについて紹介します。
インフルエンザ発症後の様子
インフルエンザは発症するとすぐに激しい症状が現れることが特徴です。
初日に強い症状が出始め、数日間は身体的につらい状態が続きます。主に以下のような症状に悩まされるでしょう。
- 38度以上の高熱
- 強い倦怠感や悪寒
- 筋肉痛・関節痛
- 激しい頭痛
このような症状が出た場合には、インフルエンザに感染している可能性が高いです。休養を取り、回復を心がけましょう。
休養中は仕事や学業が心配かもしれませんが、この時期に無理に動いてしまうと、さらに体力を消耗させたり感染を拡大させたりする恐れがあります。
体調が回復するまで安静にし、身体を休めることが大切です。安静にできる環境でゆっくりと休み、適切な水分補給を行いながら回復を目指しましょう。
インフルエンザ発症後に病院へ行くタイミングは?
インフルエンザが疑われる際は、初期症状が現れてから12時間~48時間以内の受診がおすすめです。
「発症後すぐではダメなの?」と思うかもしれませんが、12時間~48時間をおすすめする理由には以下のふたつがあります。
- 検査の精度を上げるため
- 抗インフルエンザ薬の効果を高めるため
インフルエンザの検査では、一般的に『迅速抗原検出キット』が使われますが、体内のウイルス量が少ない場合、正確に検出しにくいことがあります。
しかし、症状が出てから12時間以上経過していれば、ウイルスが一定量増えているため、より高い精度の検査結果が出やすくなるのです。
また、処方される抗インフルエンザ薬の効果とも関係があります。
抗インフルエンザ薬として処方される『タミフル』『リレンザ』などの薬は、ウイルスの増殖を抑え、発熱や関節痛などの症状を軽減しますが、発症から48時間以内に使用することで効果が高まるとされています。
そのため、最も効果的なタイミングで治療を受けるためには、発症後12時間から48時間の間に病院を訪れることが理想的です。
ただし、症状が重い場合はこの限りではありません。もしも「つらすぎてその時間まで待てない」と感じたら、早急に医師の診察を受けるようにしてみてください。
判断が難しい場合には、かかりつけの内科や耳鼻科、小児科などへの連絡・相談をおすすめします。
症状のピークは何日目?感染リスクの高さにも注意
一般的に、インフルエンザの激しい症状は発症後2〜3日がピークです。身体がつらい時期であるとともに、感染力が高まる時期でもあるため、周囲への感染リスクには注意が必要です。
発症から数日間はできる限り外出を避け、他人との接触を控えましょう。
家庭内でも感染を広げないために、以下のことを意識してみてください。
- 手洗い
- うがい
- マスクの着用
- こまめな消毒
- タオルや食器などの共有を避ける
- 感染者と非感染者の生活スペースを分ける
体調が悪い時に、このようなことをすべて行うのは大変かもしれませんが、できる範囲で取り入れて、感染拡大を防ぎましょう。
ピーク後の症状の変化と体調管理の注意点
ピークを過ぎると徐々に体温が下がり、倦怠感や筋肉痛も和らぎますが、油断は禁物です。
回復期には咳や鼻水といった軽い症状がしばらく残ることがあり、これらの症状が長引くことも少なくありません。
軽い症状でも生活のしづらさを感じたり、体力の回復を遅らせたりすることがあるため、引き続きゆっくりと休養を取りましょう。
回復を早めるためには、十分な休養と栄養を取り入れることが大切です。睡眠時間を確保し、消化・吸収のよい食事(うどん・おかゆ・スープなど)を取り入れてみてください。
感染したかも?と思ったらすぐに対策を
インフルエンザに感染した可能性がある場合、早めに適切な対策を取り入れることにより、症状の悪化や周囲への感染リスクを減らしやすくなります。
ここでは、潜伏期間中にできる具体的な予防策について説明します。
潜伏期間にできる予防方法
インフルエンザウイルスは、潜伏期間中でも感染力を持つ可能性があるため、周囲の人への感染を防ぐ対策が必要です。具体的には、マスクの着用やこまめな手洗いなどが効果を発揮します。
また、咳やくしゃみをする際には、飛沫を抑えるためにティッシュや腕で口を覆うよう心がけましょう。
周囲に触れることが多い場所(ドアノブ、リモコン、キーボードなど)は、定期的にアルコール消毒を行うことで、間接的な感染リスク軽減につながります。
さらに、十分な休養と栄養をとり、免疫力を維持することも発症を抑える効果を発揮するでしょう。
家庭内感染を防ぐためのポイント
家庭内での感染を防ぐためには、家族全員が予防対策を徹底することが大切です。まず、感染者と非感染者の接触をできる限り減らすようにしましょう。
前述しましたが、タオルや食器の共用は避け、個別管理がおすすめです。
感染者には可能な限り個室で安静に過ごしてもらうのも効果的でしょう。
また、以下の対策もおすすめです。
- こまめな換気
- 湿度を50%~60%に管理する
こまめな換気は室内の空気を循環させ、ウイルスを外へ排出します。
空気が乾燥するとウイルスが浮遊しやすくなるため、加湿器などを利用して室内を適度な湿度に保ちましょう。50%~60%が適切な湿度の目安です。
このような対策は潜伏期間中、感染期間中のどちらでも効果が期待できる方法です。感染拡大を防ぐためにも、ぜひ取り入れてみてください。
人が多い場所への外出を避ける
『感染者と接触した可能性が高い』という自覚があれば、感染者を増やさないためにも、人の多い場所への外出はしばらく控えましょう。
インフルエンザの感染に気付いていない状態・発症していない状態でも、潜伏期間の間にウイルスを拡散してしまう恐れが高まります。
通勤や通学などのやむを得ない事情がある場合は、マスクの着用や適切な距離の確保などを意識してみてください。
また、インフルエンザが流行するシーズンに人混みを避けるライフスタイルは、自分への感染リスクを軽減させることにもつながります。
まとめ
インフルエンザのウイルスは1~5日の潜伏期間と、発症前1日を含めた約8日の感染期間があります。
感染期間中はすでに症状が出ているため、感染拡大防止のための対策も行いやすいのですが、潜伏期間中は症状がなく、対策が難しい状態です。
しかし、もしも『インフルエンザの感染者と接触した』という自覚があり、不安に感じるのなら、早めに感染拡大防止のための対策を始めたり、病院で受診する準備を始めるのもよいでしょう。
病院の受診は発症してから12時間~48時間を目安にしましょう。検査で正確な結果が出やすいことや、抗インフルエンザ薬が効果を発揮しやすくなるためです。
広尾クリニック 内科・消化器ではインフルエンザワクチンの予防接種や、発症後の診察・検査・薬の処方など幅広く対応しています。
『インフルエンザかも』『ワクチンを打ちたい』などのお考えがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。