
胃カメラ検査(上部内視鏡検査)は、胃がんや胃潰瘍をはじめとした、消化器の病気の早期発見に有効な検査です。
しかし、「本当に受けるべきか」「苦しいのではないか」「症状がないのに必要なのか」と迷う人も少なくありません。
胃カメラ検査を受けたほうがいい人や、その条件などを知っていれば、検査を受けるかどうかを適切に判断しやすくなるでしょう。
この記事では、胃カメラ検査を受けるかどうか判断に迷ったときのポイントや、検査のメリット・デメリットなどについて詳しく紹介します。
胃カメラ検査をやるべきかどうか考えている人、苦しさなどの負担が気になる人は、ぜひ参考にしてください。
胃カメラは受けるべき?やらなくていいか迷ったら

胃カメラ検査は、自分に本当に必要かどうか判断に迷う人が多い検査です。
症状の有無や不安、年齢や家族歴など、判断基準を考えながら受診の有無を検討するとよいでしょう。
ここでは、胃カメラを受けるべきか迷った時に考えるべきポイントと、具体的な判断要素などについて紹介します。
胃カメラ検査に対する不安や誤解
胃カメラ検査に対して「苦しい」「痛い」「怖い」という印象を持つ人は意外に多く、その印象が胃カメラ検査を遠ざけてしまうことが多いようです。
しかし、実際には技術や設備の進歩により、胃カメラ検査時の苦痛は軽減されてきています。
鎮静剤の使用や胃カメラの性能向上、鼻からカメラを入れる「経鼻内視鏡」の進化などで、従来よりも負担を軽減しながら検査が受けられるようになりました。
誤解や不安を感じたまま検査を先送りにするのではなく、不安があればどんなことでも医師に相談しましょう。
「何が苦手か、何が心配か」などを先に伝えておくことにより、医師が適切な対処を考え、患者さんにとって負担の少ない胃カメラ検査を提供しやすくなります。
症状がある場合は胃カメラを受けるべきか
消化器関連の病気は初期症状が分かりにくいものも多く、気付いた時には進行していることも少なくありません。
「胃のあたりで不調が続いている」「何かおかしい」と感じたら、早めの胃カメラ検査をおすすめします。
次のような症状がある方は、胃カメラ検査の受診を検討するべきでしょう。
- 胃の痛み
- 胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振
- 体重の減少 など
思い当たる理由がないのにもかかわらず、このような症状が見られる場合、重大な疾患が隠れている可能性があります。
特に、胃がんの罹患率が増加する40歳以上の人や家族歴がある人、過去にピロリ菌感染の経験がある人などは注意が必要です。
早期に異常が発見できれば治療開始も早くなり、身体への負担も抑えられます。
症状が軽い場合でも放置せず、「何だかおかしい」「この症状が続いているな」と思ったら、病院を受診して、必要に応じて胃カメラ検査を受けましょう。
症状がない場合でもやったほうがいいケース
症状がない場合でも、胃カメラ検査を受けるメリットはあります。
例えば、胃がんやピロリ菌感染などは初期段階で自覚症状が現れにくいため、症状がなくても予防的に受け、早期発見につなげることが可能です。
特に、以下のような人は定期的な胃カメラ検査をおすすめします。
- 過去に胃潰瘍や胃ポリープの既往歴がある人
- ピロリ菌除菌後の経過観察が必要な人
- 40歳以上の人
このほか、健康診断や人間ドックで異常を指摘された場合も、積極的に検査を検討してください。
「何も症状がないから検査をしなくてもいい」と思うかもしれませんが、症状がない=病気がないわけではありません。
胃カメラ検査は予防的措置として有効な方法です。
無症状のうちに早期発見を目指すことが、将来の重大な病気予防や早期治療に役立ちます。
年齢や家族歴なども考慮
胃カメラ検査を検討する際には、自身の年齢や家族歴も考慮しましょう。
胃がんは中高年で発症リスクが跳ね上がる病気で、40歳以上になると罹患率が高くなります。
これまで一度も胃カメラ検査を受けたことがなかった人も、40歳を節目に胃カメラ検査を定期的に受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
また、家族に胃がんの既往がある人は遺伝的なリスクが高まるため、さらに注意が必要です。
そのほか、ピロリ菌感染歴や喫煙歴もリスクを高める原因になります。
自分のリスクを正しく把握し、必要に応じて胃カメラ検査を取り入れましょう。
胃カメラ検査のメリット

胃カメラ検査には、早期発見や治療、バリウム検査にはない詳細な観察や組織採取・検査など多くの利点があります。
ここでは、胃カメラ検査を受けることの主なメリットについて具体的に紹介します。
早期発見・早期治療につながる
胃カメラ検査には、胃がんや胃潰瘍、ポリープなどの消化管疾患を早期発見しやすいメリットがあります。
症状が出る前の初期段階でも、粘膜のわずかな異常を直接確認できます。
早期に異常を発見すれば治療も早くスタートでき、治療方法の選択肢が増えたり、心身の負担を抑えやすくなったりします。
定期的に胃カメラ検査を受けていれば、リスクの高い人や不安のある人も、適切な健康管理ができるでしょう。
また、胃カメラ検査で異常がないと知るたびに安心感が得られます。
早期発見は健康を守る行動として重要であり、胃カメラ検査は頼もしいサポート役になります。
バリウム検査より詳細な観察ができる
バリウム検査も胃の異変を発見できる検査ですが、胃カメラ検査はより幅広い範囲を詳細に観察できるメリットがあります。
バリウム検査ではX線画像(レントゲン画像)を通じて間接的に異常を発見しますが、胃カメラ検査は粘膜の色や凹凸、出血の有無まで細かく観察できます。
バリウム検査に比べてわずかな病変や小さな潰瘍、炎症、ポリープなども見逃しにくい点は、胃カメラのメリットです。
より精密な診断が必要な時や、症状があっても原因が分からない時にも胃カメラ検査は役立ちます。
バリウム検査で「要精密検査」となった場合も、胃カメラ検査を受けることになります。
どちらを受けるかは患者さんの状態や希望にもよりますが、より精密で正確性の高い検査を希望するのであれば、胃カメラ検査がおすすめです。
ポリープや病変の組織採取・処置ができる
胃カメラ検査では、検査中に病変をその場で組織採取することができます。
採取した組織を顕微鏡検査で調べ、良性か悪性か判断します。
バリウム検査では発見に留まりますが、胃カメラ検査は発見から診断まで対応できる点がメリットです。
定期的な検査を受けている人や、異常が気になっている人にとっては、「何かあればその場で手を打てる」という安心感につながるでしょう。
検査後すぐに医師から説明が受けられる
胃カメラ検査は検査終了後すぐに医師から画像を用いた説明が受けられます。
自分の胃の状態や発見された異常について、画像を確認しながら分かりやすく説明してもらえるため、不安の軽減や納得感を得られるでしょう。
必要な治療や今後の方針についても、当日に話し合うことができます。
気になる点があればその場で質問もできるため、今後の健康管理や治療を取り入れた生活に備えやすくなります。
また、経鼻内視鏡検査では会話ができるため、検査中にリアルタイムで医師に質問したり、説明を受けたりすることも可能です。
胃カメラ検査のデメリット

胃カメラ検査には多くのメリットがある一方で、喉や胃の違和感、合併症のリスクなどのデメリットもあります。
ここでは、検査前に知っておきたいデメリットについて紹介します。
喉や胃への違和感・苦痛がある
胃カメラ検査を受ける際、喉や胃に違和感や苦痛を感じる人が多いです。
特に、口からカメラを入れる経口内視鏡検査の場合、吐き気を経験することがあります。
このような反応は鎮静剤を使用することで苦痛を軽減できますが、完全に負担がなくなるわけではありません。
鼻から胃カメラを入れる経鼻内視鏡検査は経口よりも吐き気が少ない傾向がありますが、個人差があるため、自分に合った方法を医師と相談して選択してください。
当院、広尾クリニック内科・消化器では、患者さん一人ひとりに合わせた方法を考えながら負担の少ない検査を心がけています。不安を感じる方はお気軽にご相談ください。
出血や穿孔などの合併症リスク
胃カメラ検査は安全性が高い検査ですが、ごくまれに出血や穿孔のような合併症が起こる可能性があります。
このようなリスクは確率としては低いものの、発生した場合には速やかな治療が必要です。
検査を受ける際は、万が一のリスクについても事前に理解し、医師からの説明を十分に受けてください。
もちろん、万が一の際には医師が素早く適切な処置をし、責任を持って対処します。
鎮静剤使用時の副作用や注意点
鎮静剤を使って胃カメラ検査を受ける場合、鎮静剤の影響で、検査後に強い眠気やふらつきを感じることがあります。
検査当日は車の運転や危険な作業を控え、来院や帰宅の際は公共交通機関やタクシー、ご家族が運転する車などを利用してください。
また、検査後は休憩が必要になるため、時間に余裕を持ったスケジュールを組むよう心がけてください。
費用や時間など経済的・生活的負担がある
胃カメラ検査の費用は、保険が適用される場合と、保険適用外になる場合があります。
病気の診断や治療が目的の場合や、医師の判断によって行われる場合は、保険が適用されます。
一方、健診や人間ドックでオプションとして受ける場合は自由診療となるため、費用が気になる方は前もって確認しておきましょう。
また、検査前の食事制限や、鎮静剤使用時の当日の安静など、日常生活への調整も求められます。
仕事や家事の都合を考え、スケジュールを事前に調整し、検査後に十分な休息が取れるかも検討しておきましょう。
胃カメラ検査に関して気になる疑問

胃カメラ検査を検討する際、検査方法やほかの検査との兼ね合いが気になる人もいます。
ここでは、胃カメラの検査方法や、大腸カメラとの同時受診は可能なのかどうかなどについて紹介します。
経口と経鼻はどちらがおすすめ?
胃カメラ検査には経口と経鼻のふたつの方法があり、それぞれ特徴が異なります。
どちらの方法が向いているかは、個人の体質や不安、過去の経験、医師の判断によって変わると考えておきましょう。
口から入れる経口内視鏡検査は従来から広く行われており、内視鏡の操作性が高く、画像の質が高いため、医師がより詳細な観察をしやすい傾向があります。
ただし、内視鏡が舌根や咽頭に触れ強い吐き気を感じやすい人も多いです。
経鼻内視鏡は鼻から細いスコープを挿入するため、咽頭反射が起こりにくく、吐き気や苦痛が軽減されやすくなっています。
しかし、鼻の構造によっては挿入が難しかったり、鼻血が出る場合もあるため、患者さんによっては受けられない可能性もあります。
大腸カメラ検査と一緒にできる?
胃カメラと大腸カメラの同日検査は多くの医療機関で実施が可能になっており、時間がない人や、複数の検査を一日で完了させたい人におすすめの方法です。
ただし、事前の食事制限や下剤の服用、当日のスケジュール調整が必要になります。
また、健康状態や持病によっては個別に受けるよう勧められる場合もあるため、受診を希望する人は、あらかじめ医療機関の方針やスケジュール調整について考えておきましょう。
まとめ
胃カメラ検査は、胃がんや潰瘍などの消化管疾患を早期に発見できる有効な手段です。健康管理や病気の早期発見・早期治療に役立つため、ぜひ多くの人に受けていただきたい検査です。
近年は鎮静剤を使って患者さんの負担を軽減しながら検査をする方法が主流になっており、吐き気やつらさが心配な人も受けやすくなっています。
症状や家族歴、年齢、過去の既往歴などを考慮し、自分に合った検査方法やタイミングを選んでください。
また、無症状でも予防や健康管理の意味で受けることをおすすめします。
広尾クリニック内科・消化器では、多くの患者さんが苦痛を抑えて受けられる胃カメラ検査を心がけています。
「検査時の吐き気が不安だけど何とかならない?」「症状がないのに受けるべき?」など、ご要望や疑問などがあれば丁寧にご説明します。お気軽にご連絡ください。