
胃カメラ検査(上部内視鏡検査)は、胃や食道など消化器の異常の早期発見につながる大切な検査です。しかし、「口から入れるのは苦しい」「嘔吐感が強そう」というような不安を感じる人は少なくありません。
特に、えずくような嘔吐反射や心理的な緊張などから苦痛を感じやすい人も多いようです。
そのような負担は鎮静剤の使用や医師の工夫、セルフケアなどによって解消できる可能性が高いため、知っておくと胃カメラ検査への苦手意識を軽減しやすくなるでしょう。
この記事では、胃カメラ検査への苦手意識を解消するポイントや注意点などについて紹介します。
胃カメラ検査の受診を迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
口からの胃カメラが苦しいと感じる理由

口からの胃カメラ検査(上部内視鏡検査)は「おえっ」とえずくような「嘔吐反射」や不快感などのイメージから、「苦しい」と感じやすい背景があります。
ここでは、 口からの胃カメラが苦しいと感じやすい理由について説明します。
嘔吐反射が起こる仕組み
口から胃カメラを挿入する時、舌の付け根や咽頭に内視鏡が触れると、身体が異物の侵入を防ごうとする生理的反応として「嘔吐反射」が起こります。
咽頭反射は気道を守る防御反応のため、意識的に止めることは困難で、胃カメラを飲み込む時に「おえっ」とえずいてしまう原因になりやすいです。
この反射が強い人ほど検査時の苦痛が増しやすく、「胃カメラは苦しい」という印象につながりやすくなっています。
しかし、嘔吐反射を防ぐ対策として、胃カメラを挿入する喉に麻酔をほどこす咽頭麻酔や、ウトウトとした状態で検査を受けられる鎮静剤を使用する方法などがあります。
咽頭麻酔や鎮静剤はえずく苦痛を軽減する効果があるため、「えずくのが苦しいから胃カメラ検査は嫌だ」という人にもおすすめです。
えずくのは個人差も関わる
胃カメラ検査で強い嘔吐感を覚えるかどうかには個人差もあります。
咽頭や舌の感受性、普段から喉に異物が触れることに対する慣れなどが関係しています。
もともと嘔吐反射が強い人や、普段から歯科治療や歯磨きなどでえずきやすい人は、胃カメラでも嘔吐反射や苦しさを感じやすいです。
また、緊張感や不安が高まっていると自律神経のバランスが崩れ、えずきやすくなります。
このほか、検査当日の体調や睡眠不足、飲酒や喫煙の習慣も影響することが少なくないため、検査の数日前から当日まで、生活習慣を見直して過ごすことも、嘔吐反射の対策になるでしょう。
検査機器の太さ・形状など
胃カメラ検査に使われる内視鏡の太さや形状も、検査中の苦しさや違和感に影響します。
一般的に口から挿入する内視鏡は、先端の直径が細いほど咽頭部や食道への刺激が軽減され、苦痛も少なくなる仕組みです。
最近は細径の経口内視鏡も普及しており、従来よりも負担を軽減して受けやすくなっています。
しかし、細いものよりも太めのほうがより精度の高い検査が可能なため、医師の方針や患者さんの病状などによっては太いほうが選ばれることも多いです。
どの機器を使用するかは、医療機関の設備や検査の目的によって異なります。できるだけ負担の少ない方法を選びたいことを医師に伝え、対策を求めましょう。
医師の技術や説明による心理的影響
医師の内視鏡操作の技術や、検査前後の説明の仕方によっても、患者さんが感じる負担が変わりやすいです。
経験豊富だったり技術が高かったりする医師は、患者さんの嘔吐反射や苦痛のサインを素早く察知し、挿入角度やスピード、声かけなどを調整し、負担を和らげるように配慮しています。
このような配慮やコミュニケーションが不十分な場合、患者さんの緊張が高まりやすく、結果として嘔吐反射や不快感が強まる可能性が上がります。
また、検査内容や進行について事前に詳細な説明を受けていないと、「次に何をするのだろう」「あと何分かかるのかな」など、先の見えない不安が増し、些細な刺激にも敏感になりやすいです。
信頼できる医師や丁寧な事前説明を求めることも、胃カメラ検査時の負担を軽減する効果が期待できるでしょう。
口からの胃カメラで痛みや辛さを軽減するための工夫

口からの胃カメラ検査で生じやすい痛みや辛さを和らげるため、医療現場ではさまざまな工夫が行われています。
ここでは、胃カメラ検査の負担を軽減する主な方法と注意点などを紹介します。
鎮静剤種類と作用
胃カメラ検査時の辛さを軽減するために、鎮静剤を用いる方法があります。
主に使われる鎮静剤は「セルシン(ジアゼパム)」と「ミダゾラム」で、どちらも医師の適切な管理の上で使用されます。
セルシン(ジアゼパム)とミダゾラムの代表的な違いは以下の通りです。
薬剤名 | 期待できる効果 |
---|---|
セルシン(ジアゼパム) | 不安や緊張を緩和する |
ミダゾラム | 不安を軽減し、眠気を誘う |
嘔吐反応が心配な人は、鎮静剤で苦痛や不安を軽減し、胃カメラ検査を受けるのもおすすめです。
当院、広尾クリニック内科・消化器でも鎮静剤を使用した胃カメラ検査が可能なため、必要な方はお気軽にご相談ください。
鎮静剤利用時のリスクと注意点
鎮静剤には、呼吸が浅くなる、血圧が低下するなどの副作用やリスクが生じることがあります。また、高齢の人や基礎疾患を持つ人も注意が必要です。
検査後は眠気やふらつきが残る場合があり、一定時間の安静や車の運転禁止など、日常生活への影響にも配慮する必要があります。
鎮静剤の効果が続いている間は判断力が低下するため、帰宅後もできるだけ静かに過ごしましょう。
鎮静剤の利用にはメリットとリスクがあり、患者さん自身の体質や希望に合わせた選択が必要です。事前に医師へ相談し、納得した上で使用を決定しましょう。
経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ)の使用
口からの胃カメラ検査で負担を軽減する方法として、経鼻内視鏡(鼻からの胃カメラ)の選択もあります。
経鼻内視鏡は口ではなく鼻から挿入するため、舌根や咽頭に触れにくく、嘔吐反射が起こりにくい点が特徴です。
カメラの径も細く設計されているため、鼻腔や食道への刺激が少なくなります。
検査中も会話がしやすく、医師とすぐに意思疎通ができるため、検査中の疑問や不安を解消しやすい点もメリットでしょう。
一方、鼻腔が狭い場合やアレルギー性鼻炎などがある場合は、鼻からの挿入が難しい場合もあります。
また、口からの胃カメラのほうが画像の鮮明度が高いことも多いため、医師の方針や病状によっては、選択するべき検査方法が異なるでしょう。
ただし、最近は鼻からの胃カメラも画像の質が改善されています。医師と相談し、適切な検査方法を選びましょう。
呼吸法・リラックス法などのセルフケア
胃カメラ検査時の辛さを軽減するために、呼吸法やリラックス法などのセルフケアを取り入れるのもおすすめです。
例えば、ゆっくりとした深呼吸を意識すると、自律神経が整い、喉や体全体の緊張が和らぎます。
肩や首の力を抜き、できるだけ体をリラックスさせることにより、嘔吐反射や不快感の軽減が期待できるでしょう。
検査中は医師や看護師からの声かけや指示をよく聞き、不安を溜め込まないようにしましょう。
また、検査前に十分な説明を受けておくと、検査の流れや時間の経過が予測しやすく、恐怖心が和らぎやすいです。
体調や気分も検査の受けやすさに影響するため、睡眠不足や過度な緊張は避け、リラックスした状態で臨みましょう。
胃カメラ検査を受ける際に考慮したいポイント

胃カメラ検査を受ける前には、持病や症状、体質などの確認や、受けるべきタイミングなどが重要です。
ここでは、胃カメラ検査に関して特に注目したい項目について紹介します。
持病や体質による注意点
胃カメラ検査を受ける際には、持病や体質によるリスクを十分に考慮しましょう。例えば、以下のような既往歴がある患者さんは、必ず医師の確認が必要です。
- 肝機能障害
- 腎機能障害
- 心疾患
- 循環器疾患 など
このような基礎疾患がある患者さんは、検査や鎮静剤の使用によって体調が変化する恐れもあります。
リスクを軽減した胃カメラ検査を実施するためにも、事前に医師へ自身の既往歴や現在治療中の病気、服用中の薬剤などについて詳細に伝えてください。
患者さん一人ひとりの体調やリスクを考慮し、医師が適切な対応をとりながら胃カメラ検査を進めます。
「この病気があるから胃カメラ検査はできないな」と最初から諦めず、まずは医師に相談してみましょう。
検査がすすめられる主な症状やきっかけ
胃カメラ検査は健康管理のために自主的に検査を受ける人も多いですが、特定の症状や状況で病気の可能性が疑われる場合には、できるだけ早い段階で検査を受けましょう。
例えば、以下のような症状が続く時には、胃カメラ検査を強くおすすめします。
- 胃痛
- 胃もたれ
- 吐き気
- 食欲不振
- ダイエットをしていないのに体重が減る
- 黒色便
- 喉の違和感 など
こういった症状が解消されず、長く続く場合、消化器の病気が隠れている可能性があります。
このほか、以下のような人も、健康リスクを軽減するために胃カメラ検査が推奨されています。
- 健康診断で異常を指摘された
- 家族に胃がんなど消化器疾患の患者さんがいる
- 40歳以上である
- 飲酒、喫煙の習慣がある
このような人は消化器関連の病気にかかるリスクが高いため、予防的な意味でも定期的な胃カメラ検査がおすすめです。
胃カメラで分かる代表的な病気
胃カメラ検査は消化器領域の幅広い部位を直接観察できるため、発見できる病気も多岐にわたります。
例えば、適切な胃カメラ検査によって以下のような病気の発見も可能です。
- 十二指腸潰瘍
- 胃潰瘍
- 逆流性食道炎
- 胃ポリープ
- 慢性胃炎(萎縮性胃炎)
- 胃がん
- 食道がん
- 十二指腸がん
- ピロリ菌感染症、など
特に胃がんは初期段階の自覚症状がほとんどなく、異常を感じた時には病状が進行しているということも少なくありません。
症状が現れる初期段階で発見するためには、胃カメラ検査が有効です。
バリウム検査などの画像診断だけでは発見が難しい小さな病変や早期がんも、内視鏡を使う胃カメラ検査なら細部まで確認できます。
検査中に異変が見つかれば、その場で組織の一部を採取し、詳しい検査(生検)も可能です。
このような精密な観察や処置により、適切な治療や経過観察につなげやすくなります。
定期的な胃カメラ検査の意義とメリット
胃カメラ検査は定期的な受診がおすすめです。消化器疾患の早期発見と重症化予防につながります。
特に胃がんのように、初期段階で自覚症状が乏しく、進行してから発見されるケースがある病気は、定期的な胃カメラ検査で早期発見できることが珍しくありません。
まだ病変が小さい段階で早期発見・早期治療ができれば、治療効果の向上や生存率の改善が期待できます。
また、ピロリ菌感染や慢性胃炎、ポリープの経過観察も容易になり、適切なタイミングで治療方針の見直しが可能です。
消化器に不安がある人や過去に異常を指摘された人、生活習慣にリスク要因がある人は、ぜひ定期的な胃カメラ検査を検討してください。
胃カメラ検査は重大な病気の予防と早期発見に役立つ、有効な健康管理方法です。
まとめ
胃カメラ検査は消化器の病気を早期発見するために有効な検査方法です。
口からの検査には嘔吐反射をはじめとした負担が生じやすいという課題もありますが、鎮静剤の使用や鼻から入れる経鼻内視鏡、セルフケアなどで負担を軽減しやすくなります。
持病や体質による注意点などを事前に医師と確認し、不安な点は相談した上で検査を受けましょう。
また、定期的な胃カメラ検査を受けることで、病気の早期発見や重症化予防につながります。40代以上の人やハイリスクの人は、ぜひ定期的に胃カメラ検査を受けてください。
広尾クリニック内科・消化器では、患者さんの苦痛が少ない胃カメラ検査を心がけています。
丁寧なカウンセリングや経験豊富な専門医・指導医による検査、鎮静剤の使用など、患者さんの不安や心配を解消できる環境で胃カメラ検査を受けていただけます。
「胃カメラ検査は怖い、苦しい」と思って検査から遠ざかっている方は、健康管理や病気の予防・早期発見のためにも、ぜひ一度、当院の胃カメラ検査をご検討ください。