
胃の痛みや不快感を感じたとき、できるだけ早く検査を受けたいと考える方は多いものです。
特に胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、胃がんや胃潰瘍などの重大な病気を早期に発見するための有効な手段です。最近では、症状が急に現れた場合や不安を感じたときに、当日すぐに検査を受けられる医療機関も増えています。
また、健康診断で再検査になった時、仕事の都合で「今日すぐ検査したい」という時もあるでしょう。
そのような場合にそなえ、胃カメラ検査の即日検査について知っておくと選択の幅が広がります。
この記事では、胃カメラ検査を即日で受けられるケースや、当日受診を検討すべき症状、検査の流れや注意点について紹介します。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)とは?検査の目的や分かる病気

胃カメラは、胃の不調や消化器の異常を調べる際に用いられる内視鏡検査のひとつで、様々な病気の早期発見に役立ちます。
ここでは、検査の目的や仕組み、対象となる症状、見つかる代表的な病気などについて紹介します。
胃カメラ検査の概要と仕組み
胃カメラ上部消化管内視鏡とも呼ばれる検査で、口または鼻から細いカメラ付きのチューブを挿入し、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察します。
観察だけでなく、病変の組織を採取する生検や出血を止める処置も可能なため、診断と治療を同時に行える点が特徴です。
使用するスコープは細く柔軟な設計で、経鼻内視鏡を選ぶことで嘔吐反射が起こりにくく、検査に対する負担も軽減されています。
また、必要に応じて鎮静剤を用いた苦痛の少ない検査も可能です。
消化器内科や内視鏡専門のクリニックでは、こうした技術や設備を活用して、より安全で快適な検査を実現しています。
どのような症状に対して行うのか
胃カメラ検査は、胃の調子が悪い状態が長期間改善しない場合や、市販薬を使っても症状が再発するような場合に選択されることが多いです。
また、吐血や黒色便のような出血の兆候がある場合も早急な検査が必要とされます。
特に以下のような症状が見られる場合、胃カメラがすすめられるケースが少なくありません。
- みぞおちの痛み
- 胃の不快感
- 慢性的な胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振 など
このような状態が続くのであれば、胃カメラでの確認が推奨されます。
さらに、健康診断の結果で胃の異常を指摘された時や、家族に胃がんの既往歴がある人は、何らかの病気や胃がんの発症リスクが高い可能性があります。
症状が軽かったり、特に症状が感じられないとしても、予防を兼ねて積極的な定期検査の検討をおすすめします。
胃カメラで見つかる代表的な病気
胃カメラによって発見される代表的な病気には、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などがあります。
以下でそれぞれの症状を見てみましょう。
病名 | 主な特徴や症状 |
---|---|
逆流性食道炎 | 胃酸が食道に逆流することで起こり、胸やけ、喉の違和感、咳、声のかすれなどがみられる。 |
胃潰瘍 | 胃の粘膜がただれ、みぞおちの痛み、吐き気、空腹時の痛み、重症化すると出血や穿孔を伴う場合がある。 |
十二指腸潰瘍 | 空腹時の上腹部痛が特徴で、胃潰瘍と類似しており、夜間の腹痛や出血、便の色の変化などが見られることもある。 |
胃炎(急性・慢性) | 胃粘膜の炎症で、急性では突然の痛みや吐き気、慢性では持続的な胃の不快感、ピロリ菌との関連もある。 |
胃ポリープ | 多くは無症状で良性だが、種類や大きさによってはがん化の可能性もあり、出血や胃の違和感を伴うこともある。 |
胃がん | 初期は症状が乏しいが、進行すると食欲不振、体重減少、吐血、黒色便などが起こり、早期発見が重要。 |
機能性ディスペプシア | 明確な異常がないにもかかわらず、胃の痛みや膨満感、食後の不快感、胃もたれなどが慢性的に現れる。 |
このような病気は、胃カメラを使えば粘膜の変化や潰瘍の有無を直接確認でき、組織の検査によって良性・悪性の判定も可能となるため、早期の診断や治療が重要です。
バリウム検査との違いと精度の高さ
胃の検査にはバリウムを飲んでX線撮影を行う胃透視検査もありますが、胃カメラとは診断の精度と内容に違いがあります。
バリウム検査は胃の形や動きを観察するのに適している一方、胃カメラでは粘膜の状態を直接観察できるため、より詳細な診断が可能です。
また、疑わしい部位が見つかった際にはその場で生検を行い、病理検査によってがんの有無を確定させることができる点も胃カメラならではのメリットでしょう。
出血が発見された場合には、同時に止血などの処置が実施されることもあります。
検査の精度と情報量、治療への即応性という点では、バリウム検査よりも胃カメラの方が向いており、精密検査や粘膜の状態観察が求められる症状がある場合には特に推奨されます。
胃カメラが即日できるのはどんな時?

急な胃の不調や検診結果の指摘を受けた際、当日中に胃カメラ検査を受けたいと考える方も多いでしょう。
ここでは、即日対応が可能な病院の特徴や、実際に当日検査が可能となる条件、注意点などについて紹介します。
即日検査が可能な病院の特徴
胃カメラを即日で受けられる医療機関にはいくつかの共通点があります。
まず、消化器専門の外来や内視鏡センターを設けており、検査設備や人員が充実していることが挙げられます。
また、検査用のスケジュール枠に柔軟性を持たせており、予約なしでの受診や急患への対応が可能な体制が整っていることも特徴です。
当日の体調や症状を見て医師が内視鏡検査の必要性を判断し、即座に対応できるフローが確立されている施設では、午前中の診察後にそのまま検査に進めるケースもあります。
このような特徴を持つ病院は、急な不調や検査希望にもスムーズに対応できるため、即日検査を希望する人にとって心強い存在になるでしょう。
当日でも検査が可能になる条件とは
当日中に胃カメラ検査を受けられるかどうかは問い合わせるまで分からないことも多く、場合によっては受けられない可能性がある点にも注意が必要です。
例えば、以下のような状況によって検査の可否が左右されることが多いです。
- 検査枠の空き状況
- 当日の胃の状態
- 診療時間
人気のある医療機関では、事前予約が埋まっていることも多く、当日対応は限られた枠での調整となる場合があります。
また、胃カメラ検査には食事制限や薬剤調整などの事前準備が必要になるケースも多いため、来院時の状態によっては当日の実施が難しいケースもあります。
診療時間も重要で、午前中の受付であればそのまま検査に進める病院もありますが、午後の来院では検査に間に合わない可能性があるため、早めの受診が望ましいでしょう。
予約なしで検査可能なケースの一例
予約なしで胃カメラ検査が受けられるケースは、症状が明確であり、当日の診察時に医師が内視鏡検査の必要性を即判断した場合が代表的です。
例えば、「みぞおちの強い痛みや胃もたれが長引いている場合」「人間ドックや健診の結果で異常を指摘された直後に受診した」といったケースでは、そのまま当日の検査へ移りやすいです。
また、Web予約により即時受付が完了している場合でも、電話で事前確認のうえで「今から来院すれば検査可能」と案内されるケースもあります。
完全に予約なしでも検査を受けられるとは限りませんが、柔軟な対応をしている病院であれば、当日中の検査にも応じてもらえる可能性があるでしょう。
広尾クリニック内科・消化器は原則予約制ですが、キャンセルや当日の状況次第では即日検査が可能になるケースもあります。
また、当院では緊急外来体制を整えており、アニサキスの症状がみられる場合は、予約の有無に関わらず、即日胃カメラ検査や異物除去術を受けていただけます。
緊急時には迷わずぜひ当院までご相談ください。
事前に確認しておきたい注意点
胃カメラを当日受けたいと考える場合、事前に確認しておくとスムーズに検査を受けやすくなります。以下のような点の確認をおすすめします。
- 検査を希望する医療機関が即日対応に対応しているか
- 朝食を食べた場合でも対応可能か
- 付き添いは必要か
- 持病や服薬との関係は問題ないか など
検査を受けるには原則として絶食が必要なため、朝食をとってしまうと当日は検査できない可能性があります。
また、鎮静剤を使用した検査を希望する場合、付き添いの有無や検査後の休憩時間などの条件が設けられていることもあるでしょう。
また、慢性疾患で服薬中の人は、内服薬の調整が必要な可能性もあるため、事前の相談が推奨されます。
予約なしで受診する場合でも、身分証や健診結果の持参など、必要書類の準備も忘れないようにしましょう。
持病で服薬をしている人は、お薬手帳も持って行くとスムーズです。
胃カメラを受けるべき症状とは

胃の不調を感じても、自然に治まるだろうと放置してしまう人は少なくありません。
しかし、症状の中には重大な疾患の前兆が隠されているケースもあるため、異常を感じたら早期の胃カメラ検査を強くおすすめします。
ここでは、検査を急ぎたい具体的な症状や、注意するべき体質などについて紹介します。
受診を急いだほうがよい胃の症状例
胃カメラ検査が推奨される症状には、みぞおちの痛み、胃もたれ、食後の不快感、吐き気や嘔吐、食欲不振などが挙げられます。
特に、黒色便(タール便)や吐血が見られる場合は、消化管内の出血を示していることが多く、緊急性の高い兆候とされています。
こうした症状は一時的な体調不良と見過ごされることも多いですが、実際には胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、消化器系の病気が背景にある可能性も否定できません。
また、「何となく胃が重い、疲れやすい」といった漠然とした不調の中にも、進行した疾患が隠れていることがあります。
このような症状が続いたり、繰り返したりするようであれば、早めに専門の医師に相談し、必要に応じて胃カメラによる精密検査を受けてください。
胃がんを疑う症状
胃がんは初期段階では自覚症状がなく、気付きにくい病気です。
そのため、みぞおちの違和感や軽い食欲不振などのささいな症状を軽視していると、発見が遅れかねません。
胃がんが進行すると、体重減少や吐血、貧血などの重大な症状を引き起こしますが、その時点ではすでに治療の選択肢が限られる恐れがあります。
胃カメラは胃がんの早期発見にとても有効であり、内視鏡を用いて粘膜の微細な変化を直接確認できるため、ほかの検査では分かりにくい初期の病変をより高精度に捉えやすいです。
さらに、必要に応じてその場で組織検査(生検)を行える点も胃カメラ検査の強みです。
症状が軽い・重いにかかわらず、「何かおかしい」と感じた時点で検査を受け、命に関わる病気の見逃しを防ぎましょう。
40歳以上・生活習慣病がある人は要注意
40歳を過ぎると、加齢に伴う胃腸機能の変化や生活習慣などの影響によって、胃のトラブルが現れやすくなります。
特に、以下のような生活習慣や持病がある人は注意が必要です。
- 喫煙
- 飲酒
- 脂っこい食事が多い
- 生活習慣病
- ピロリ菌の感染歴 など
このような習慣や持病は、胃の粘膜に慢性的な負担がかかります。ピロリ菌の感染歴がある場合も、胃炎から胃がんへと進行するリスクが高いため、定期的な内視鏡検査が推奨されています。
このほか、ストレスや不規則な生活リズムも胃酸の分泌に影響を与え、胃の不調を引き起こす原因になります。
40歳以上の人は、症状の有無にかかわらず、一度は胃カメラ検査を受けておくことが望ましいでしょう。
即日検査を受けたほうがいいケース
即日での胃カメラ検査が勧められるケースには、明らかな自覚症状だけでなく、いくつかの要因が重なっている場合も含まれます。
例えば、胃がんの家族歴やピロリ菌の感染歴がある人が定期検診で胃の異常を指摘された場合などは、なるべく早めに検査を受けた方がよいでしょう。
特に、体重減少や吐血、黒色便などの明らかな異常がある場合には緊急性が高く、即日の内視鏡検査が必要とされることもあります。
こうしたリスクを抱えている人は、医師と相談のうえで速やかな検査を検討してください。
まとめ
胃の不調は日常的によくある症状ですが、中には重大な疾患が隠されていることがあります。みぞおちの痛みや黒色便、食欲不振などが続く場合は、早めの胃カメラ検査を検討してください。
特に胃がんは初期症状が分かりにくいため、少しの違和感しかない段階でも早めの検査を受けましょう。
40歳以上や生活習慣に偏りがある人、ピロリ菌感染歴のある人もリスクが高く、症状の有無にかかわらず定期的なチェックが望ましいです。
広尾クリニック内科・消化器では、緊急性の高い症状に対する胃カメラ検査のご相談や、家族歴・既往歴などからくるご心配などに対応しています。
胃をはじめ、消化器の不調や異変などがありましたら、些細な症状でもお早めにご相談ください。