胃カメラでわかること・できることは?発見できる病気や検査内容について解説

胃カメラ でわかること

胃カメラは、咽頭・食道・胃・十二指腸にわたって観察することで病変を発見し、早期治療につなげるために重要な検査方法です。

大掛かりな治療をせず、疾患の完治を目指すためには、症状がない状態から積極的に検査を受けることが大切です。

この記事では、胃カメラで何がわかるか・できるかを紹介します。

胃カメラの定期検査の重要性を理解し、疾患の早期発見・治療につなげましょう。

胃カメラでわかる病気や異変

胃カメラ でわかること

胃カメラでどこまで見るかというと、咽頭から食道・胃を通って十二指腸までで、そこから下の臓器を観察するためには大腸カメラや他の方法が選択されます。

胃カメラで見つかる病気や異変は以下の通りです。

咽頭がん

咽頭がんは、鼻の奥から食道までの領域にできるがんで、胃カメラでは、中咽頭がん・下咽頭がん・喉頭がんの発見が可能です。

中咽頭がんはウイルス、中・下咽頭がんは飲酒や喫煙が原因になりやすく、部位によって危険因子が異なります。

初期症状がほとんどなく、早期で発見するためには胃カメラが非常に有効です。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃液が逆流することで食道が炎症や潰瘍を起こしている状態で、基本的には胃カメラでの診断で発見します。

胃もたれ・胸やけ・お腹の張り・ゲップの頻発のほか、喉の違和感や咳などさまざまな症状が現れます。

食道が慢性的に炎症を引き起こしている状態では、食道腺がんのリスクが高まるとされているため、適切な治療と生活習慣の改善による予防が大切です。

大食いや早食い、脂質や糖質を多く含む食べ物を控え、食事後すぐに横になるのは避けるようにしましょう。

バレット食道

バレット食道は、逆流食道炎が原因で食道の上皮組織が胃の上皮組織に置き換わった状態です。

胃酸によりただれた食道の扁平上皮が治癒する際に、胃の円柱上皮に変わっていくことで引き起こされ、範囲が広いほどがんの発生率が上昇するとされています。

そのため、食道がんにならないか胃カメラで定期的に検査することが重要です。

好酸球性食道炎

好酸球性食道炎は、好酸球と呼ばれる白血球が食道に集まることで慢性的な炎症を引き起こす疾患です。

食道の正常な働きを妨げることで胸やけや胸痛を伴うほか、症状が進行すると食道が狭くなり食べ物が詰まる・飲み込みにくいなどの症状が現れます。

症状が自然治癒することはないため、胃カメラで発見の上、治療を受ける必要があります。

食道がん

食道がんは、生活習慣や他のさまざまな要因から発症するがんで、胃カメラで発見できます。

食道がんはリンパ節や他の臓器へ転移しやすいですが、早期発見・治療できれば完治の可能性が見込めるがんです。

外科手術での治療は高難易度で、身体にかかる負担も大きいため、定期検診での早期発見・治療が重要です。

胃憩室

胃憩室は、胃の筋層の薄い部分が外側に飛び出した状態で、胃カメラではくぼんだ状態で確認されます。

胃憩室を診断するために胃カメラを行うことはほとんどなく、検査中にたまたま発見されるケースが多いです。

良性のため治療の必要はなく、症状も特にありませんが、稀に出血を伴うケースがあります。

胃ポリープ

胃ポリープには胃底腺ポリープ・過形成性ポリープ・腫瘍性ポリープなどの種類があり、どれも胃カメラによって診断が可能です。

胃底腺ポリープは健康な胃にできやすい良性のポリープで、胃ポリープの多くがこれに該当します。

過形成性ポリープは胃の粘膜に炎症を引き起こすポリープで、治療にはピロリ菌の除去が効果的です。

過形成性ポリープや腫瘍性ポリープには、胃カメラによる経過観察や早期発見からの治療が有効です。

胃悪性リンパ腫

胃悪性リンパ腫は、人の身体に発生する悪性リンパ腫の約8%を占めていて、治療しても再発のリスクがある疾患です。

治療にはピロリ菌除菌のほか、化学療法・放射線療法・外科手術などが行われます。

他の臓器への転移がなく、進行が遅い状態ではピロリ菌除菌により長期生存率が高まるとされているため、胃カメラを用いてピロリ菌感染の診断や生検を行うことが重要です。

胃がん

胃がんは早期発見・治療できれば完治が可能ながんですが、進行すると肝臓・肺などの器官に転移したり、体重減少や衰弱、腹水がたまるなどの症状を引き起こします。

胃がんのなかでも進行が早く、腹膜への転移を起こしやすいスキルス胃がんは、手術から5年以内に約90%の患者さんが亡くなるとされています。

胃がんは進行してはじめて症状が出るケースが多いため、無症状でも早めに定期検診を行い、ピロリ菌の除菌治療を受けましょう。

胃炎(表層性・萎縮性・鳥肌性・びらん性)

胃カメラで発見できる胃炎には、表層性胃炎・萎縮性胃炎・鳥肌性胃炎・びらん性胃炎などがあり、いずれも検査による早めの発見と治療が理想です。

表層性胃炎はピロリ菌が陰性の方にもみられる胃炎で、胃酸の過多のほか、ストレスや暴飲暴食などの要因により引き起こされるとされています。

萎縮性胃炎では、慢性的な炎症が続くことで胃の粘膜が萎縮し、薄くなることで胃がんの発生リスクが上昇します。

鳥肌性胃炎は、ピロリ菌感染やスキルス胃がんとの関わりが指摘されている炎症で、がんに派生するリスクが高いため、定期的な胃カメラが重要です。

びらん性胃炎は胃の粘膜上皮が炎症し脱落を起こす胃炎で、無症状の場合が多いですが、急性の場合は胃の諸症状が現れ、胃潰瘍に発展するリスクがあります。

胃潰瘍

胃潰瘍は、胃の粘膜やその下の組織が傷によって失われている状態で、ピロリ菌感染のほか、解熱剤や鎮痛剤などの非ステロイド系抗炎症薬の服用が原因で引き起こされます。

ピロリ菌の除菌治療は胃がんのリスクを軽減させるほか、胃潰瘍の防止にも有効です。

胃潰瘍の状態では、症状を悪化させる薬の使用は避けるのが望ましいですが、休薬が難しい場合は胃酸の分泌を抑制する薬を併用することで対応します。

胃静脈瘤

胃静脈瘤は、肝炎や肝硬変によって肝臓へ血液が流れにくくなった結果、その血液が胃に流れ込むことで胃の静脈にできるこぶ状の膨らみです。

症状の悪化によって血液の流入量が増加し、静脈瘤が破裂すると生命を脅かす可能性があるため、胃カメラでの早期発見と治療が推奨されます。

破裂のリスクがある胃静脈瘤を発見した場合、胃カメラを用いて破裂を予防する治療が可能です。

胃粘膜下腫瘍

胃粘膜下腫瘍は、胃粘膜より下の深い層に発生する腫瘍で、胃の内側に向かって成長するため、胃カメラでは胃壁が隆起している状態で発見されます。

胃カメラでの切除が可能ですが、稀に転移のリスクがある悪性の腫瘍になるケースがあり、外科手術が必要になる場合もあるため注意が必要です。

腫瘍が小さく変化がない場合は、年に1〜2回ほどの頻度で経過を観察します。

胃アニサキス症

胃アニサキス症は、青魚やイカなどの魚介類を生食した際に、アニサキスと呼ばれる寄生虫を生きたまま飲み込むことで発症します。

アニサキスは、加熱や冷凍、損傷を与えるなどの行為で対策が可能ですが、感染すると胃に激しい痛みを伴います。

万が一アニサキスに感染した場合は、原因であるアニサキスを胃カメラで除去することで症状の改善が可能です。

ピロリ菌感染症

ピロリ菌感染によって胃・十二指腸潰瘍や萎縮性胃炎がみられる場合、粘膜を採取し、ピロリ菌の有無を調べられます。

ピロリ菌感染症は、胃カメラのほか、採血でも検査が可能で、患者さんに合わせた方法を医師が判断し、選択します。

ピロリ菌感染は胃がんの95%に関係しているとされているため、定期的な胃カメラによる早期発見と治療でリスク減少を目指しましょう。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、胃カメラなどの検査で異常がないにもかかわらず、胃の諸症状が現れる病気です。

胃の機能低下や胃酸過多のほか、ストレスが原因の一つであることから、ストレス性胃炎とも呼ばれます。

機能性ディスペプシアは放置されるケースが多い疾患ですが、治療することで快適な食生活を送れるようになるため、お腹の調子が悪くなりやすい人は一度医療機関を受診することをおすすめします。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍は、十二指腸の粘膜が損傷により潰瘍を引き起こす疾患で、大半がピロリ菌感染によるものだとされています。また、非ステロイド系消炎鎮痛薬の使用も原因の一つです。

十二指腸の壁は薄いため、潰瘍が進行しやすく、放置すると穿孔や大量出血の原因になるリスクがあります。

好発年齢は60歳以上の高齢者ですが、40代・50代の方や若者にも多く見られる疾患です。

特に、十二指腸潰瘍を繰り返している方にはピロリ菌の除菌治療が欠かせません。

十二指腸がん

十二指腸がんはそれほど発生頻度の高いがんではありませんが、良性の腫瘍からがん化するケースが多いとされています。

早期発見できれば胃カメラでの切除が可能ですが、十二指腸は壁が薄いため治療の難易度が高く、手術を要するケースが高くなります。

家族性大腸腺腫症の経歴がある場合、十二指腸ポリープや十二指腸がんを発症する確率が高いとされているため、胃カメラによる定期検査や生検により早めに診断することが重要です。

胃カメラでできること

胃カメラ でわかること

胃カメラには、以下の役割があります。

疾患の早期発見・治療

胃カメラを定期的に受けることで、咽頭から十二指腸までの器官に発生する疾患の早期発見と治療が可能です。

胃がんで発見できる疾患は、初期症状がないものが多く発見が遅れやすいため、無症状でも検査を受けて病名をはっきりさせ、早期発見することが重要です。

がん化のリスクがあるできものも、早い段階であれば外科手術をせずに胃カメラで切除が可能な場合があります。

胃カメラはスコープを用いて消化管内を直接観察できるため、他の検査では発見が困難な小さな病変や早期のがんなどを見つけられるのがメリットです。

病変の一部を採取する

胃カメラには、確定診断を行うために病変の一部を採取する(生検)役割があります。

これによって病変のがん化の有無や良性・悪性の判別、炎症や潰瘍の原因となっている菌の識別などが可能です。

検査結果によって疾患の治療方針が決定されますが、生検は病変を詳細に調べるため、結果が出るまで時間がかかります。

胃カメラを受けたほうがいい人の特徴

胃カメラ でわかること

以下の特徴がある人は、胃カメラが推奨されます。

ピロリ菌検査で陽性だった方

ピロリ菌検査を受けて陽性結果が出た方は、胃カメラを受けましょう。

胃がん検診や人間ドックで行われるピロリ菌検査は、ピロリ菌感染の有無を調べるために行うだけで、胃がんの有無を診断するには不十分です。

ピロリ菌の血液検査で陽性だった方は、胃カメラを受けて、胃がんや胃潰瘍がないか詳しく調べることが大切です。

ピロリ菌の除菌治療をした過去がある方

過去にピロリ菌の除菌治療をしたことがある方は、定期的に胃カメラを受けましょう。

ピロリ菌の除菌治療は胃がん予防に効果的ですが、治療後の胃がん発生率をゼロにするものではないため、胃カメラでの定期的な検査で発生がないことを確認する必要があります。

健康診断や人間ドックで胃の異常を指摘された方

健康診断や人間ドックで胃の異常を指摘された方も、胃カメラ検査で詳しい原因を調べる必要があります。

バリウム検査では粘膜の色や小さな病変まで診断するのが難しく、検出された時点で進行しているケースが多いです。

早期発見のためにも、胃カメラの定期的な受診をおすすめします。

胃の諸症状がある方

胃の痛みや不快感・違和感などにお悩みの方は、一度胃カメラを受けることが推奨されます。

またこれらの症状のほかに体重減少や貧血、黒い便がみられる場合は、胃がんが進行している可能性があるため、緊急で胃カメラを受ける必要があります。

機能性ディスペプシアのように、症状があっても胃に異変がないケースもありますが、異変がないことを確認するためにも胃カメラは重要です。

家族にピロリ菌陽性者や胃がんに罹った人がいる方

胃がんの家族歴がある方や同居の家族にピロリ菌陽性者がいる方は、一度胃カメラを受けましょう。

ピロリ菌感染症は遺伝性のある疾患ではありませんが、免疫力の低い幼児期に母親から子どもに感染するケースが多いとされています。

また、胃がんの家族歴がある人や、家族性大腸腺腫症がある人も要注意です。

家族に胃がん経験者がいると自身も将来がんになりやすく、人数が多いほどリスクが高くなるとされています。

さらに、家族性大腸腺腫症では家族に大腸がんを発症するリスクが高まるとされていますが、胃・十二指腸ポリープや十二指腸がんのリスク要因にもなるとされています。

そのため、これらに当てはまる方で一度も胃カメラを受けたことがない方は、なるべく早めに検査を受けましょう。

まとめ

胃カメラで分かることやできることについて紹介しました。

胃カメラで発見できる病気には初期症状がないものが多いため、異変がなくても一度検査を受けることをおすすめします。

広尾クリニック内科・消化器では、胃カメラを辛い・怖いと感じる患者さんが苦痛を感じずに受けられるように、一人ひとりにあった検査方法をご提案します。

胃カメラやその他消化器の疾患について気になる点がある方はぜひ一度ご相談ください。