
胃や大腸に不安を感じたとき、医師から内視鏡検査をすすめられることがあります。
しかし、胃カメラと大腸カメラを別々に受けるとなると、通院の手間や前処置の煩わしさから検査をためらってしまう人も少なくありません。
そこで注目されているのが「同日検査」です。両方の検査を一日で済ませることで、効率的な検査ができるだけではなく、心身の負担軽減にもつながりやすくなります。
この記事では、同日検査の具体的な流れ、得られるメリット、注意点などについて紹介します。
胃カメラと大腸カメラを受けるタイミングに悩んでいる人は、ぜひ参考になさってください。
胃カメラ・大腸カメラは同時に受けられる?

胃カメラと大腸カメラの検査は、本来それぞれに準備や時間が必要ですが、近年では一部の医療機関で同日に両方の検査を受けられるようになっています。
ここでは同日検査の対応状況や流れ、鎮静方法、費用の目安などについて紹介します。
同日検査は医療機関によって対応が異なる
胃カメラと大腸カメラを同日に実施する「同日検査」は可能ですが、すべての医療機関で提供されているわけではありません。
対応の有無は施設の設備体制や医師のスケジュールなどに左右されるため、事前の確認が不可欠です。
特に鎮静剤を使用する検査の場合、検査後のリカバリールームやスタッフ体制が整っているか、付き添いは必要かなども確認しておくとよいでしょう。
同日検査を希望する際には、予約時に同日検査を希望している旨を伝えてください。
また、事前に診察を受けた上で日程調整が行われるケースもあるため、この点も医療機関に確認しましょう。
検査の流れとスケジュールの一例
多くの施設では胃カメラを先に実施し、その後大腸カメラを行う流れです。
検査の準備は前日から始まります。まず大腸カメラに備えて前日から食事を検査食にし、翌日は検査の数時間前から下剤を使用して腸内をきれいにします。
検査の精度を上げるため、検査が終わるまでは飲食に気を配り、医師の指示を守りましょう。
来院後、問診や血圧測定などの事前チェックを受けてから検査をスタートします。検査は眠っている状態で行われるため、不快感を覚えることは少ないです。
全体の所要時間は、前処置も含めて半日程度を見込んでおきましょう。
検査時の麻酔・鎮静方法に応じた判断
胃カメラや大腸カメラを同日に受ける場合、検査中の不快感を減らす目的で鎮静剤を使用するケースが多く見られます。
特に大腸カメラは検査中の違和感や痛みを感じやすいため、眠ったような状態で受けられる鎮静剤を使用することも可能です。
胃カメラについても、鎮静剤を使用して実施することは少なくありません。
使用の有無や量については体調や年齢、既往歴などによって異なるため、検査前の診察時に医師と十分に相談してください。
なお、鎮静剤を使用すると当日はふらつきが残る可能性があります。自動車や自転車の運転は控え、公共交通機関や家族の送迎などで移動しましょう。
保険診療としての扱いと費用の目安
胃カメラと大腸カメラを同日に受ける場合、医師の判断で検査が必要とされたのであれば保険診療の対象です。
保険診療の自己負担額は1~3割負担で、自由診療の場合は10割になります。
詳しい金額は医療機関や検査内容によって異なるため、検査をする医療機関に確認しておきましょう。
また、以下のような場合には追加で費用が発生します。
- ポリープの切除
- 生検(病理組織検査)
- ピロリ菌検査
- 鎮静剤の使用 など
このほか、初診料、診察料などもかかるため、費用については事前によく確認しておいたほうがよいでしょう。
なぜ胃カメラと大腸カメラの同日検査が注目されているのか

内視鏡検査の必要性が広く認知される一方で、負担や手間の問題から受診をためらうケースは少なくありません。同日検査は、その課題を解決する方法として有効です。
ここでは、胃カメラと大腸カメラの同日検査が持つ背景や特徴について紹介します。
消化器疾患の早期発見ニーズが高まっている背景
胃カメラと大腸カメラを一度の来院で受けられる同日検査は、早期の段階で病気の兆候や異常を発見しやすい検査手段として期待されています。
胃がんや大腸がんをはじめとする消化器疾患は、早期のうちに発見できれば予後がよくなる確率が高いため、早期発見・早期治療は欠かせません。
近年では健康に対する関心の高まりや定期健診の普及により、早期発見を重視する人が増えつつあります。
一方で、自覚症状のない段階で検査を受けることの重要性がまだ十分には浸透しておらず、タイミングを逃して重症化してしまうケースもあります。
特に胃がんや大腸がんは初期症状が分かりにくいため、気付いた時には進行していることも少なくありません。
そうした中で、忙しい人でも受診しやすい同日検査は、早期発見や早期治療につながる有効な方法として注目されるようになりました。
検査控えを防ぐための工夫としての「同日検査」
胃と腸の両方を同じ日に一括で検査できるようにすることで、患者さんの負担を減らしつつ、検査受診率の向上を目指せるのも同日検査の特徴です。
内視鏡検査は苦しい、準備が大変という印象が強く、それが検査控えの要因になっていることは確かでしょう。
特に胃カメラと大腸カメラの両方が必要とされる場合、別日程でそれぞれを行うとなると、前処置や日程調整が複数回必要となり、心身やスケジュールの負担が大きくなります。
一方、同日検査は一度の準備で検査に臨めるため、負担を軽減しやすくなるでしょう。
健康診断後の精密検査として一括受診が増加
企業や自治体の健康診断で「要精密検査」とされた場合、改めて胃カメラや大腸カメラの予約を取らなければならない状況に直面します。
忙しい人ほど「また別の日に検査を受けるのは面倒」と感じてしまい、結局放置してしまうケースも多いでしょう。
このような背景から、近年では精密検査を同日にまとめて実施できる体制を整えているクリニックが増えてきました。
胃と大腸の両方の検査を一度に済ませられることで、再検査に対する心理的なハードルを下げ、精密検査の実施率を向上させやすくなっています。
胃カメラ・大腸カメラを同時に受けるメリット

胃カメラと大腸カメラの同日検査は、心身やスケジュールの負担、病気のリスクを軽減できるメリットがあります。
ここでは、同日に胃カメラと大腸カメラを受けることで得られる具体的なメリットについて紹介します。
鎮静剤の使用が一度で済む
胃カメラや大腸カメラの検査では、苦痛を軽減するために鎮静剤が使われることがあります。
同日検査では、一度の鎮静剤投与で両方の検査を連続して行えるため、患者さんへの負担を軽減可能です。
検査を別日に分けて行う場合、それぞれの検査ごとに鎮静剤を使用する必要があるため、身体への負担も増してしまうでしょう。
また、鎮静剤を使う場合、検査後に一定の休憩が必要ですが、その時間も1回で済む点もメリットです。
検査当日の運転制限や帰宅後の安静も1回で終わり、日常生活への影響を抑えやすくなります。体力的・時間的負担の両面で効率的な方法といえるでしょう。
仕事や家庭の予定を調整しやすい
働き盛りの人や育児中の人にとって、複数回の準備や通院は大きなハードルです。
検査を別日に行う場合、それぞれの日に仕事や家事の調整が必要になりますが、同日検査であれば1日で完了するため、予定の管理がしやすくなります。
事前準備としての食事制限や下剤の服用も1回で済み、身体的にも心理的にも負担が少ないでしょう。
また、検査当日は鎮静剤の影響で自動車の運転が制限されることがあるため、付き添いが必要になる場合もあります。
そうした際も、1回で済むことにより家族の協力を得やすく、家庭への影響も抑えられます。
検査ストレスの軽減につながる
内視鏡検査に対して「つらい」「怖い」といったイメージを持つ人は少なくありません。同日検査であれば、そのような精神的ストレスを1回で済ませられます。
検査にストレスを感じる患者さんにとって、検査が2回に分かれていると、そのたびに緊張や心配を抱えることになるでしょう。1回で済めばそのストレスが軽減されやすくなるはずです。
検査に対する不安が軽減されることにより、次回の受診にもつながりやすくなるでしょう。
特に胃カメラや大腸カメラは、40代以降の人や、既往症・家族歴の人に継続的に受けてほしい検査です。
同日検査でストレスを軽減できれば、定期的・継続的に検査を受けやすくなるでしょう。
病気の見落としリスクを下げやすい
同日検査であれば、胃と大腸の両方を一度に詳しく調べられるため、病気の早期発見につながりやすくなります。
胃と大腸はそれぞれ異なる臓器であり、現れる症状や部位が違うため、単独の検査では異常を見逃す可能性が否定できません。
例えば胃に不調を感じて胃カメラだけを受けた場合、大腸の病変が発見されずに経過してしまうリスクもあるでしょう。
実際、健康診断では異常がなかったにもかかわらず、精密検査で病変が見つかるケースもあります。
特にがんやポリープのように初期段階では症状が現れにくい疾患ほど、定期的な検査による全体的なチェックが重要です。
同日検査は、そうした見落としリスクを減らす有効な手段になるでしょう。
同日検査を希望する場合の注意点

胃カメラと大腸カメラを同日に受ける際には、通常の検査と同じく、事前準備や確認しておきたい点があります。
ここでは、検査前に知っておきたい注意点などについて紹介します。
前日の食事制限と下剤のタイミング
同日検査を受けるには、前日の過ごし方が重要になります。事前に医師や医療機関のスタッフから説明されるため、指示通りに過ごしましょう。
より精密な検査結果を出すためには胃腸内が空になっている必要があります。指示された通りの食事内容や下剤の服用タイミングを守りましょう。
検査前日の食事内容は、脂肪分や繊維質を避け、消化のよいものが適切です。医療機関によっては検査前の食事に適した既製品を提供することもあります。
準備が不十分な場合、検査が中止になる可能性もあるため、前日の指示は必ず守りましょう。
鎮静剤を使用する場合の当日の行動制限
同日検査では鎮静剤を使用するケースが多く、当日の行動にはいくつかの制限が生じます。
鎮静剤を使用すると眠気やふらつきが残るため、検査当日は自動車や自転車の運転はできません。
検査後はしばらく院内のリカバリールームで休憩し、体調の安定を確認してからの帰宅となりますが、念のため公共交通機関を利用するか、家族に送迎を依頼するようにしてください。
また、当日は重要な会議や力仕事などを避け、無理のないスケジュールで過ごしましょう。
事前予約・説明が必要な理由
胃カメラと大腸カメラの同日検査を希望する場合は、必ず事前予約が必要です。同日検査には検査機器や医師の手配、鎮静剤の準備など、通常より多くの調整が必要になるためです。
また、検査前には問診や既往歴の確認が行われ、鎮静剤の使用有無や検査の順番などが医師と相談のうえで決定されます。
検査のスムーズな実施のためには、事前説明と同意が求められます。当日の流れや注意点などもこの段階で詳しく説明されるため、不安や疑問を解消する機会としても重要です。
持病・服薬内容によっては分割検査が推奨されるケース
持病がある人や、特定の薬を服用している人の場合、医師の判断で胃カメラと大腸カメラを別日に受けるようすすめられることがあります。
特に抗血栓薬を服用している患者さんや、心疾患・糖尿病などを抱えている場合は、事前にしっかりと確認しておきましょう。
また、腎機能や肝機能に問題がある場合、前処置に使う下剤や鎮静剤の影響が大きくなる可能性もあるため、個別の調整が求められます。
予約の段階で持病や服薬状況を正確に申告し、医師とよく相談してください。
まとめ
胃カメラと大腸カメラを同日に受ける「同日検査」は、患者さんの通院回数や身体的負担を軽減できる効率的な方法です。
少ない回数でも胃腸内を精密に検査し、病気の早期発見・早期治療につなげられます。
前日の食事制限や下剤の服用、鎮静剤による行動制限など、いくつかの注意点を理解しておくと、当日はスムーズに検査が進むでしょう。
ただし、持病や服薬状況によっては医師の判断で分割検査がすすめられる場合もあるため、事前の診察でしっかり話し合ってください。
広尾クリニック内科・消化器では、胃カメラ・大腸カメラの検査を積極的に受けていただきたいと考えております。
特に胃腸の病気が増える40代以上の人や既往症・家族歴をお持ちの場合、胃カメラ・大腸カメラが予防や健康維持に効果的です。
同日検査も可能ですので、スケジュールや心身の負担が気になり、なかなか検査を受けるタイミングが作れないという人も、ぜひ一度ご相談ください。