
内視鏡検査は、消化管の病変を早期に見つける効果的な手段です。検査を受ける患者さんにとって、苦痛の少ない検査を受けるためには、信頼できる医師の存在は欠かせません。
そこで注目したいのが「専門医」です。内視鏡専門医は学会の定めた研修と実績要件を満たし、認定を受けた医師を指します。
専門医とそのほかの医師との違いを知れば、内視鏡検査を受ける病院を探す参考になるでしょう。
この記事では、専門医制度の仕組みや内視鏡専門医の強みなどについて紹介します。専門医による内視鏡専門医に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
専門医とは?各診療分野でのプロフェッショナル

専門医は特定分野における高度な知識と経験を持った医師を対象にした資格です。
ここでは、専門医とはどのような資格なのか、認定医や指導医との違い、専門医が検査を担当することの安心感などについて紹介します。
専門医とはどのような資格か
専門医とは、特定の診療分野で専門的な研修と経験を積み、所定の審査を経て学会に認定された医師を指します。
日本専門医機構が定める制度では、初期臨床研修(2年)に続いて、3年以上の専門研修が必要とされており、少なくとも5年以上の臨床経験が求められます。
専門医の主な取得要件は以下の通りです。
- 日本専門医機構が認定した専門研修プログラムの修了
- 初期研修と合わせて5年以上の臨床経験
- 各学会が定めた一定数の症例を経験していること
- 筆記試験や提出書類の審査に合格している
- 学会参加や研修報告など継続的な活動が義務付けられている
- 5年ごとの資格更新手続きを行っている
このように、専門医資格は継続的な経験や学術的な取り組みを通じて一定水準を満たす医師が取得できます。
医師の専門性が気になる患者さんにとって、病院を選ぶ際の目安になる資格です。
認定医・指導医との違い
専門医制度には段階があり、医師の経験や役割に応じて資格が区分されています。
以下に段階ごとの資格と特徴をまとめました。
種類 | 特徴 |
---|---|
認定医 | 特定分野の基本的な知識と一定の経験を有する |
専門医 | 診療実績や専門研修の修了、審査合格などを経た認定医の上位資格 |
指導医 | 専門医の育成を担う立場で、教育・指導・学術活動など幅広い役割を担う |
認定医は基礎的な段階、専門医は認定医よりも実績や専門性を高めた医師、指導医は専門医を含めた後進を指導する教育的役割も担う医師にあたります。
専門医資格を持つ医師が担当する安心感
内視鏡検査は、病変の見逃しを防ぐ観察力や、患者さんの負担を軽減する操作技術が求められる検査です。
経験豊富で技術の高い専門医が担当することにより、検査の質や安全性に対する信頼性が高まり、以下のようなメリットが期待できます。
- 豊富な経験と知識を病変発見に活かせる
- 操作技術の高さが期待でき、検査中の苦痛や不安が軽減されやすい
- 安全管理に関する教育を受けており、万が一のトラブルにも備えている
このような条件を満たす専門医が検査を担当することにより、病変の早期発見につながる可能性があります。
また、内視鏡検査が「怖い」「苦しそう」と思っている患者さんも、より高度な技術やトラブル対応力が期待できる指導医なら、不安感を軽減しやすくなり、検査を受けやすくなるでしょう。
内視鏡専門医とは?

内視鏡専門医とは、日本消化器内視鏡学会が認定する制度で、消化管内視鏡検査の豊富な経験と知識を持つ専門医です。
内視鏡専門医の資格を取得するためには、日本専門医機構による基本的な内科専門医資格を有し、さらに消化器内視鏡に関する豊富な臨床経験や学術実績などが求められます。
受験には学会員としての活動歴や一定数の症例経験(例:胃カメラ1,000件、大腸カメラ300件)、筆記試験の合格が必要であり、他分野の専門医と同様、取得後も5年ごとの資格更新が必要です。
また、更新は無条件にできるものではなく、以下のような条件が求められます。
- 日本消化器内視鏡学会の会員である
- 消化器内視鏡診療に従事している
- 学会が求める必要な資格を有している
- 所定のセミナーや講演へ参加している
- 論文を発表している など
内視鏡専門医は技術的に優れているだけでなく、常に新しい情報を取り入れ、診療の質を保てるように制度が整えられているため、研鑽の機会も多いことが特徴です。
専門医の資格を持ち、かつ、更新を続けている内視鏡専門医は、内視鏡検査が必要な患者さんやそのご家族にとって、心強い味方になるでしょう。
当院、広尾クリニック内科・消化器では、内視鏡専門医・指導医による、苦痛に配慮した内視鏡検査を行っています。より専門性の高い医師をお探しの方はお気軽にご相談ください。
なぜ「内視鏡専門医のいる病院」がおすすめなのか

内視鏡専門医のいる病院では、検査の精度や技術対応、安全管理などについて一定の水準が保たれていることが期待できます。
ここでは、専門医が在籍する医療機関をおすすめする理由について紹介します。
病変の見逃しを防ぐ技術力
内視鏡専門医が在籍する病院では、専門的な研修や多くの症例経験を積んだ医師が内視鏡検査を担当します。
専門医制度は、前述の通り診断や検査技術について第三者機関による一定の基準が設けられ、専門性の高さを証明しやすくなっています。
検査の質を高める取り組みが制度に組み込まれており、知識や経験の維持、継続的な学習による医学知識のアップデートも期待できます。
患者さんが医師ごとの細かい実績データを調べることは難しいですが、専門医資格の有無は一般の人でも確認できる明確な目安です。
検査の正確さや信頼性を重視したい人には、専門医が在籍する医療機関の選択がおすすめです。
苦痛の少ない検査への工夫
内視鏡検査では、挿入時の痛みに不快感を持つことも多く、患者さんにとって負担になりやすい一面があります。
内視鏡専門医はそのような苦痛を軽減する技術にも精通しているため、「負担があるから検査を受けたくない」と考えている患者さんも受けやすい環境が整えられています。
例えば、挿入するスコープの操作方法や挿入角度を工夫することで、違和感や痛みの軽減が可能です。
鎮静剤を使用する場合にも、安全性を考慮しながら、患者さんに必要な説明や準備を欠かしません。
こうした配慮によって、検査への不安や抵抗感を軽減し、必要な場合の早期受診や定期検査の継続にもつなげやすくなります。
検査時の苦痛や不安をより減らしたい人は、内視鏡専門医が在籍する医療機関がおすすめです。
万が一のリスク管理にも対応できる体制や検査環境
内視鏡検査は決して危険な検査ではありませんが、出血や穿孔といったリスクが完全にゼロとはいえません。
このような万一の事態に対して適切な対応がとれるかどうかも、実際の検査前に把握しておきたい項目です。
内視鏡専門医はリスクや検査環境に関する専門知識を持っており、トラブルが起きた場合も速やかな判断と処置を行います。
検査室の設備面においても、安全管理を重視した導線設計や機器の整備が行われています。
当院、広尾クリニック内科・消化器でもトラブル対応や検査室の環境、検査機器の整備などに力を入れており、清潔で過ごしやすい空間での検査が可能です。
環境や検査機器にご不安のある方は、医師やスタッフまでお気軽にご質問ください。
継続的な技術研鑽と学会認定の安心感
内視鏡専門医は、一度資格を取得すれば終わりではありません。
専門医を続けるためには、認定後も研修や講習、症例報告などの学会が定める要件を定期的に満たす必要があり、常に医療知識と技術をアップデートしています。
また、医療技術の進歩にともない、検査法や機器も日々進化しています。
そのような変化に柔軟に対応するためには、普段の診療だけではなく継続的な学術活動への参加や技術の研鑽が不可欠です。
専門医であることは、その分野に責任を持ち続けている証明でもあります。
専門医による内視鏡検査をおすすめしたい人とは

内視鏡検査が必要か迷っている人や、検査結果に不安を感じる人、またリスクや症状などが気になる人には、専門医による検査がおすすめです。
ここでは、内視鏡検査を特におすすめしたい具体的な例を紹介します。
40歳以上の人
40歳を過ぎると、大腸がんや胃がんの発症リスクが高まることが知られています。
そのため、健康診断やがん検診でも、以下のような理由で40歳を区切りに内視鏡検査が推奨される機会が増加します。
- 大腸がんや胃がんのリスク増加
- 消化管の粘膜変化や腫瘍発生率が上昇
- 初期段階では症状が出ないことが多い
たとえば、がんではないポリープが見つかることもありますが、ポリープの中には将来的にがんへと変化する可能性のあるものも含まれます。
早いうちに発見し、適切な治療をしておけば、がんの罹患率低下につなげられます。
40歳を迎えた人は、体調の変化がなくても一度専門医による検査を考えてみてください。
ポリープ・がん家系など不安がある人
家族や親族に大腸がんや胃がん、ポリープの既往歴(家族歴といいます)がある場合は、家族歴がない人よりも発症リスクが高まります。
家族歴があれば、無症状でも定期的な内視鏡検査を検討し、見逃しのない診断を検討してください。
専門医はわずかな変化でも丁寧に観察し、不安や疑問にも具体的に対応します。納得できる説明や適切なアドバイスを受けることで、将来へ備えや予防をしやすくなるでしょう。
慢性症状が続いているのに異常が見つからない人
気になる症状が長期間続いているにもかかわらず、一般的な検査で異常が見つからないこともあります。
このようなケースでは、わずかな病変や炎症、早期がんなどが隠れている場合もあり、慢性的な症状を自己判断で放置するのは危険です。
特に、以下のような状態に心当たりがある人は、一度内視鏡検査を受けてみることを強くおすすめします。胃と腸の症状に分類したため、参考にしてください。
推奨する検査 | 検査を推奨する症状 |
---|---|
上部内視鏡検査(胃カメラ検査) | ・胸やけ ・胸のつかえや痛み ・のどの違和感や痛み ・慢性的な咳 ・胃もたれ、食欲不振、上腹部やみぞおちの痛み ・黄色い液体を吐いた ・口の中が酸っぱい、または苦い ・貧血がある ・黒い便が出た ・胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌の罹患歴がある など |
下部内視鏡検査(大腸カメラ検査) | ・血便 ・腹痛を伴う腹部の張り ・下痢や便秘がひどい ・健康診断などで便潜血反応が陽性だった ・過去に大腸ポリープが見つかった など |
このほか、「こんな症状は?」と感じるようなことがあれば、専門医に相談してください。診察・診断の後、必要に応じて検査をおすすめする場合があります。
初めて検査を受ける人・不安が強い人
内視鏡検査が初めての人や、過去の検査で不快な経験があった人、不安が強い人は、専門医による対応がおすすめです。
専門医は事前説明や苦痛軽減への工夫を徹底し、不安や疑問にも丁寧に向き合います。
豊富な検査経験やアップデートされ続ける知識をもとに、患者さんの体調や希望に合わせた細やかな対応が可能です。
内視鏡検査が初めての場合でも、専門医による検査を選択することで、緊張や抵抗感を和らげられるでしょう。
まとめ
内視鏡検査は、症状がない人から慢性症状が続く人、家族歴や健康診断で再検査を指示された人まで、幅広い状況で専門医による検査がおすすめです。
専門医は豊富な知識と経験をもとに、わずかな病変でも見逃さないような観察や的確な診断、丁寧な説明を行います。
初めての検査や不安がある場合でも、細やかな配慮や豊富な経験などで、ストレスを軽減しながらの検査が可能になるでしょう。
自身の健康管理や将来のリスク低減のため、専門医による内視鏡検査を積極的に検討してください。
広尾クリニック内科・消化器では、専門医・指導医として経験を積んでいる院長をはじめ、すべてのスタッフが患者さんの負担を軽減した内視鏡検査を目指しています。
「内視鏡検査が怖い」「健康診断の再検査になってしまった」「病気予防に……」など、さまざまなご不安やお悩みに対応し、病気の早期発見・早期治療や健康管理のサポートが可能です。どうぞお気軽にご相談ください。