大腸カメラ検査を受けるにあたり、痛みや不快感への不安を抱える方も少なくありません。そんな不安を軽減するために、多くの医療機関では「鎮静剤(麻酔)」を活用しています。
鎮静剤は検査中の緊張を和らげてリラックス効果をもたらし、患者さんの負担を軽減する効果が期待できます。
しかし、「睡眠薬と違うの?」「効かない場合もあるのでは?」など、気になる点も多いのではないでしょうか。
この記事では、大腸カメラ検査で鎮静剤を使う効果やメリット・デメリット、効かない場合の原因や注意点などについて詳しく紹介します。
大腸カメラ検査への不安を軽減し、前向きに検査を受けるための参考になさってください。
大腸カメラ検査で使われる鎮静剤とは?
大腸カメラ検査の不快感や痛みが気になる方には鎮静剤の使用をおすすめしています。
ここでは、大腸カメラ検査で鎮静剤を使う効果や使い方、使いたくない場合の対応などについて紹介します。
鎮静剤の効果とは?
鎮静剤は、大腸カメラ検査中の緊張や不安、痛みなどを軽減し、患者さんがリラックスした状態で検査を受けられるようにするための薬剤です。
スコープの挿入時や、検査中のスコープの動きに対する痛みに効果を発揮し、不快感を感じにくくします。
また、身体がリラックスすることで腸の動きも落ち着くようになるため、検査をする医師がより正確に腸内の状態を確認できる利点もあります。
鎮静剤の効果は、患者さんの体調や投与量によって異なりますが、一般的には検査中は意識がぼんやりした状態になることが多いです。
検査中は完全に意識がなくなるわけではなく、ほとんどの場合、検査中の声掛けに反応できる程度の軽い鎮静状態が保たれます。
検査終了後は比較的速やかに回復する特徴があるため、「長い時間、ぼんやりしてしまうのではないだろうか」と心配する必要はありません。
鎮静剤の使い方や使いたくない場合について
鎮静剤を使う際には、患者さんの体質や健康状態に合わせて医師が適切な種類と量を判断し、点滴や注射で投与します。
投与後に患者さんがリラックスした状態になったこと(効果が現れたこと)を確認してから検査をスタートします。
鎮静剤と聞くと「何だか不安かも」と思うかもしれませんが、医師がしっかりと管理した上で投与するため、過剰に心配する必要はありません。
どうしても心配な場合には、事前の診察で詳細な説明を受けたり、疑問があれば質問したりしてから使用を決めましょう。
「使いたくない」という患者さんに対して、医師が無理やり鎮静剤を投与することはありません。大腸カメラ検査は鎮静剤がなくてもできるため、使いたくない方も問題なく検査を進められます。
大腸カメラ検査で鎮静剤を使うメリット
大腸カメラ検査で鎮静剤を使うメリットは、不快感や痛みを軽減し、患者さんが安心して検査を受けやすくなることです。
それに伴い、検査の精度の向上や、定期的な検査への抵抗感が薄くなることも期待できます。
ここでは、大腸カメラ検査で鎮静剤を使うメリットについて詳しく紹介します。
痛みや恥ずかしさを軽減できる
鎮静剤を使用することで、意識がぼんやりとし、痛みや違和感を感じにくくなるため、検査中の恥ずかしさを軽減できます。
医師をはじめ病院のスタッフは、患者さんが検査で恥ずかしさを感じる瞬間を少しでも減らせるよう、可能な限り配慮した体制を取っていますが、どうしても気になる患者さんがいることも理解しています。
また、初めての検査を受ける患者さんにとって、恥ずかしいという気持ちは検査への抵抗感を強める要素になってしまうことも多いでしょう。
そのような要素を取り除き、心理的な安心感が得やすいことは、鎮静剤を使用するメリットのひとつです。
検査の精度を上げられる
鎮静剤の使用で患者さんがリラックスできると、医師が腸の全体を隅々まで観察しやすくなり、検査精度の向上が期待できる点もメリットです。
鎮静剤によって腸の緊張が和らぎスコープが腸内をスムーズに進みやすくなると、少しの変化も見逃しにくくなり、ポリープや異常を発見する精度が高まります。
定期的な検査に前向きになりやすい
大腸カメラ検査は定期的に受けることが推奨されますが、身体の負担や準備の大変さなどが理由であまり受けたがらない方も少なくありません。
しかし、鎮静剤を使用して負担が軽減できることを知っていれば、検査への抵抗感が減り、定期検診に対して前向きな気持ちを持ちやすいでしょう。
特に、以下のような方は定期的な検査が望ましいです。
- 家族や近い親戚に大腸がんの既往歴がある方
- ポリープの経過観察で定期的な検査が推奨される方
- 大腸がんの発生率が上がる40代以降の方 など
このような条件にあてはまる方は、定期的な大腸カメラ検査をおすすめします。鎮静剤の使用で負担を減らしながら、検査を健康維持に役立てましょう。
大腸カメラ検査で鎮静剤を使うデメリット
鎮静剤は大腸カメラ検査の負担を軽減する一方で、副作用や行動制限などのデメリットもあります。
ここでは、大腸カメラ検査で鎮静剤を使う際のデメリットについて紹介します。
副作用のリスクがある
鎮静剤を使用することで考えられる一般的な副作用として、眠気やふらつき、深く眠りすぎてしまうことが挙げられます。
眠気やふらつきの症状は、検査後数時間で解消することが多いですが、検査当日は集中力や判断力が低下する可能性があるため、運転や機械の操作は控えていただく医療機関がほとんどです。
広尾クリニック内科・消化器でも安全のため、検査当日の運転は控えていただいています。
また、ごく稀に深く眠りすぎてしまう『過鎮静』が起きる可能性にも注意が必要です。
過鎮静になると舌が喉に落ち、呼吸困難になったり血圧が低下したりするなどのリスクがあります。
このような副作用を予防するため、医師や医療スタッフは検査中の患者さんの状態を観察し、万が一に備えています。
検査当日の行動が制限される
鎮静剤を使用した場合、検査当日は通常の行動が制限されることがあります。特に、前述した運転や重い機械の操作、重要な決断を伴う作業は控えましょう。
また、検査後に職場へ行って動き回るような仕事をしたり、激しい運動を行ったりすることもおすすめできません。
仕事や趣味などの予定が詰まっているかもしれませんが、患者さんご自身の安全のため、検査後は帰宅して安静に過ごせるよう、スケジュールを調整してみてください。
検査後は休憩が必要になる
鎮静剤を使用した後は、体調が完全に回復するまで一定の休憩が必要です。検査が終了すると、鎮静剤の効果が薄れ始めますが、普段通りの状態になるまでには時間がかかります。
このため、検査後は施設内でしばらく休息を取り、医師や医療スタッフが状態を確認して問題がないことを確認してから検査結果の説明を受け、帰宅する流れが一般的です。
患者さんのスケジュールによっては「時間がない」「検査が終わったらすぐ帰りたい」と思うかもしれませんが、鎮静剤を使用すると、前述通りぼんやりした状態になります。
そのままでは帰宅時の安全面や、結果説明時の理解力などに影響が出る可能性があるため、鎮静剤の影響が抜けるまでは必ず休憩を取りましょう。
鎮静剤の使用が向いている方
鎮静剤は、検査中の痛みや検査に対する不安が強い方への使用をおすすめしています。特に、以下のような方は使用を検討してみてください。
- 大腸カメラ検査が不安
- 初めて大腸カメラ検査を受ける
- 過去の大腸カメラ検査で大きな苦痛を感じた
- 大腸が長めである
- 大腸に癒着がある
- 検査精度を高めたい
負担や不安を軽減しながら受けたり、より精密な検査結果を求めたりする方は、鎮静剤の使用が向いています。
検査で痛みが出やすい方の特徴
大腸カメラ検査の際、ほかの患者さんよりも痛みが出やすい方もいます。特に以下のような方は痛みが出やすくなる可能性があるため、注意が必要です。
- 検査への不安が強い
- 女性
- 痩せ型
- 婦人科の病気で手術を受けたことがある
検査への不安が強い場合、痛みを敏感に感じやすくなることがあります。
女性や痩せ型の方は骨盤が狭く、大腸カメラがスムーズに動かないことがあるため、その際は痛みを感じやすくなるでしょう。
また、子宮や卵巣などの手術を受けた経験がある方は、内臓の癒着が起きていることがあります。癒着も大腸カメラ検査の痛みの原因です。
実際に検査を受けてみなければ、痛みが出るかどうかは分かりません。
しかし、もしもこのような条件にあてはまり、できれば痛みが少ない検査のほうがよいと考えるなら、鎮静剤の使用を検討してみてください。
鎮静剤の使用が向いていない方
大腸カメラ検査で使用される鎮静剤は安全性が高く、多くの方が使いやすいものですが、その日の状況やアレルギーの有無、病気などによっては使用できないことがあります。
以下のような方は鎮静剤の使用を控えたほうがよいでしょう。
- 授乳中で断乳が難しい
- 検査当日に車の運転をしたい(バイク、自転車も含む)
- 鎮静剤に対してアレルギーがある
- 鎮静剤と併用できない薬を服用している
このような場合は鎮静剤が使用できないため、必ず事前に医師へ申告しましょう。
鎮静剤が効かない原因と対処法
鎮静剤は多くの方が使えますが、まれに効きにくい方もいます。個人差や服用中の薬剤の影響などが原因として考えられます。
ここでは、鎮静剤が効かない理由と、その際にできる対策について紹介します。
鎮静剤が効かない原因
鎮静剤が効かない理由として考えられるのは、常用している薬・鎮静剤の量・体質の3つです。以下を参考にしてみてください。
効かない理由 | 原因 |
---|---|
常用している薬 | ・普段から睡眠薬や向精神薬(抗不安薬)を常用している ※鎮静剤に耐性ができている |
鎮静剤の量 | ・体格に対して鎮静剤の投与量が少なすぎた |
体質 | ・体質的に鎮静剤が効きにくい方もいる |
このような理由がある場合、鎮静剤が思ったような効果を発揮しないこともあります。
効かない場合にできること
鎮静剤が効かない場合があっても、使用できない・効果がまったくないというわけではありません。
常用している薬・鎮静剤の量・体質のいずれが原因でも対応できるため、心配しすぎずに検査を受けてみてください。それぞれの対応方法は以下になります。
効かない理由 | 対処法 |
---|---|
常用している薬 | ・鎮静剤の種類や量を調整する |
鎮静剤の量 | ・体格に合わせた鎮静剤を追加投与する(0.1mg単位での追加が可能) |
体質 | ・違う種類の鎮静剤を使用する ・量をコントロールする |
鎮静剤の種類は複数あり、使用する薬剤は医師が決定します。場合によっては数種類の鎮静剤を組み合わせて投与する医療機関もあります。
また、鎮静剤の追加は0.1mg単位で行えるため、過剰投与の恐れはほとんどありません。投与する際には医師をはじめ、資格を持った医療従事者が細心の注意を払いながら行います。
このように、鎮静剤が効きにくい患者さんでも対処法があるため、鎮静剤の使用を諦める必要はありません。検査の負担を軽減するためにも、ぜひ活用してみてください。
まとめ
大腸カメラ検査は緊張や恥ずかしさ、痛みへの不安などを心配する患者さんが多いため、鎮静剤の使用をおすすめすることがあります。
鎮静剤を使用するとリラックスできるため、心理的・身体的な負担を軽減しながら検査を受けられるでしょう。
また、リラックスした状態で検査をする場合、腸の状態が見やすくなる効果もあり、医師がより精密に検査できるという点もメリットです。
常用している薬や投与する鎮静剤の量、体質などによって効果が出にくいケースもありますが、いずれも対処が可能です。心配しすぎずに検査を検討してみてください。
広尾クリニック内科・消化器でも、鎮静剤を使用した大腸カメラ検査が可能です。検査や痛みへの不安がある患者さんは、ご遠慮なくご相談ください。