
大腸カメラ検査は、がんやポリープなどの早期発見に役立つ一方で、「痛い」「苦しい」という不安を抱く人も多い検査です。
しかし、痛みの感じ方や苦しさの有無は個人差が大きく、腸の状態や体質、医師の技術、事前の準備などさまざまな原因が関係しています。
痛さや苦しさなど、負担を軽減した大腸カメラ検査を受けたいと考えるのなら、その原因や対策を知っておくと役立つでしょう。
この記事では、なぜ大腸カメラ検査で痛みや苦痛が生じるのか、その主な理由や医療スタッフの工夫、痛みを和らげるために知っておきたいポイントなどについて紹介します。
大腸カメラ検査のストレスを軽減したい方は、ぜひ参考にしてください。
大腸カメラ検査でなぜ痛みや苦しさを感じるのか

大腸カメラ検査で痛みや苦しさを感じる理由は、腸の形状や体質、カメラ操作時の刺激、検査中のガスや便の残り、不安や誤解などが関係しています。
ここでは、大腸カメラ検査で生じる痛みや苦しさの原因について紹介します。
カメラ挿入時の腸への刺激
大腸カメラ検査で痛みや違和感が生じる理由として、カメラ挿入時に腸のカーブや癒着部分を通過する際、腸壁が刺激されることが挙げられます。
特に、以下のような場所をカメラが通過する際には痛みを感じやすいです。
- S状結腸
- 脾彎曲(ひわんきょく)
- 肝彎曲(かんわんきょく)
このような部分で無理にカメラを進めると、痛みや違和感が増すことがあるため、医師は慎重に操作をしています。
多くの医師、特に検査経験が豊富で技術が高い内視鏡専門医は、そのような点にも注目したカメラ操作を心がけています。
痛みや違和感が心配な方は、経験豊富な医師や、内視鏡専門医のいる病院で検査を希望するのもおすすめです。
当院、広尾クリニック内科・消化器では内視鏡専門医・指導医として数多くの症例に対応してきた内視鏡専門医が在籍しています。専門性の高い検査をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
腸の形や体質の影響
腸の形や体質、腹部の手術歴などは、大腸カメラ検査の痛みや苦しさに関係しています。
例えば、以下のような場合は影響が出やすいです。
- 大腸が長い
- 曲がりが多い
- 曲がりの角度が鋭角
- 腹部手術歴による癒着
- 細身の方
腸の形状には個人差があり、曲がりが多い腸や長い腸はカメラの進行が難しく、刺激を受けやすくなります。
また、過去に腹部の手術歴がある場合は癒着により、カメラが通るときに痛みや違和感を感じることがあります。
細身の方はクッションとなる脂肪が少なく、カメラが動くときに痛みや苦しさなどを感じるケースもあります。
腸の構造や体質による影響を完全にゼロにすることは難しいですが、検査前に医師が既往歴や体質を確認し、できる限り痛みや苦しさを軽減できるように慎重に対応しています。
不安があれば事前の診察で相談し、どのような対策があるか確認しておきましょう。
お腹の張り・ガスや便の残り
大腸カメラ検査では、カメラの視野を確保するため腸に空気などを注入しますが、これによってお腹が膨らみ、膨満感や張りを強く感じやすいです。
特にガスが溜まりやすい人や腸の動きが活発な方は、検査中にお腹の不快感や痛みが目立つ傾向があります。
当院、広尾クリニック内科・消化器では、その対策として空気の代わりに炭酸ガスを使用し、腸を膨らませて検査を行います。
炭酸ガスは速やかに腸に吸収されるため、検査後にお腹が張り続けるような不快感がありません。
過去の大腸カメラ検査で「検査後のお腹の張りがつらかった」という人は、炭酸ガスを使用した検査がおすすめです。
痛みに関する思い込みや不安
「大腸カメラ検査はとても痛い、苦しい」という噂を耳にしたことがある方もいるかもしれません。
このような噂を聞き、過剰な不安や思い込みを持つことで、痛みや苦しさを実際よりも強く感じてしまうケースもあります。
痛みや苦痛のストレスが大きいという印象を持たれることが多い検査ですが、実際には全員が強い痛みを感じるわけではありません。
最近はどの医療機関でも苦痛を減らすための工夫がされており、細いカメラや炭酸ガスの使用、鎮静剤を利用した検査、ゆっくり丁寧なカメラ操作などで痛みや苦しさ、不安などの軽減に配慮しています。
実際の診察やカウンセリングを受け、医療現場の取り組みなどを知っておくと、検査のストレスを軽減しやすくなるでしょう。
医師やスタッフ・検査環境による大腸カメラの痛みや苦しさの違い

大腸カメラ検査で感じる痛みや苦しさは、医師やスタッフの対応や技術、使用する機器、検査時の環境などが関係します。
ここでは、検査時の痛みや苦しさなどのストレスが変わる可能性とその理由について紹介します。
医師の技術と経験
医師の技術や経験は、検査中のカメラ操作や患者さんの状態の観察に関わるため、痛みや苦しさの感じ方にも影響を与えます。
例えば、以下のような点が挙げられます。
- 医師の技術や経験
- 腸の形に合わせたカメラ操作
- 腸壁への無理な力を避ける慎重な対応
経験豊富な医師は腸の形や個人差を考慮しながらカメラを進め、痛みが生じやすい部分では、無理な力をかけず腸の状態に合わせて操作します。
腸の形状や状態は一人ひとり違うため、医師の技術や対応によって痛みや苦しさの感じ方に違いが出るケースは少なくありません。
どうしても不安な場合には、検査経験が豊富な医師が在籍する病院を選ぶとよいでしょう。
カメラの種類と操作方法
検査に使用するカメラの種類や操作方法によって、検査中に感じる負担や痛みは変わります。
現在は従来より細いスコープが導入されている医療機関もあり、太さや柔軟性が違うカメラを用いることで、腸内での刺激が抑えやすくなりました。
また、医師がカメラをどのように動かすかによっても体への刺激の程度が異なります。急な動きや無理な挿入は腸壁への負担になり、痛みや違和感の原因です。
どのようなカメラを使い、どう進めるかは、医師や医療機関が腸の状態や安全性を考慮して判断しますが、自分に合った検査方法について不安や希望がある場合は、事前に確認しておきましょう。
検査機器は専門性が高く、「説明されても分からないかも」と思うかもしれませんが、多くの医師は分かりやすく説明してくれるため、心配いりません。
疑問を残したまま検査を受けるのではなく、どんなことでも質問して、ストレスの軽減につなげましょう。
検査中の声かけや説明
検査中の医師やスタッフが声をかけたり、状況を説明するかどうかも、患者さんの痛みや苦しさの感じ方に影響しやすい要素です。
不安や緊張が強いと、検査中の痛みや苦しさを感じやすい傾向にあります。
個人差はありますが、丁寧な声かけによって患者さんがリラックスし、不安や痛みが軽減されることがあります。
また、検査方法や医師の方針によっては、説明しながら検査を進めるケースもあります。
このような検査環境は患者さんも状況を理解しやすく、何か不安が生まれてもすぐ医師に質問できるため、安心感や納得力が増し、痛みや苦しさを必要以上に感じにくくなる可能性があるでしょう。
検査環境に希望がある方は、検査前のカウンセリングなどで医師としっかり相談することが大切です。
大腸カメラ検査中の痛みや苦しさを減らす工夫

大腸カメラ検査で感じる痛みや苦しさについて、医療機関ごとに工夫や配慮が行われています。
ここでは、検査中の苦痛を和らげるための具体的な取り組みや、患者さん自身が意識できる対策などを紹介します。
鎮静剤の利用
大腸カメラ検査時の苦痛を和らげる方法として、鎮静剤を使う選択があります。
鎮静剤は意識をぼんやりとした状態にし、不安や緊張をやわらげるために使われます。
必ずしも鎮静剤を使う必要はなく、鎮静剤なしで検査を受ける患者さんもいますが、痛みや苦しさが心配な方は使用がおすすめです。
鎮静剤は患者さんの体調やこれまでの経過、検査への不安や希望をふまえ、医師の管理のもとで使用されます。
ただし、薬を使用した場合は検査後のふらつきや注意力の低下、当日の車の運転ができないといった制限が出るため、検査前の説明をしっかり受けておきましょう。
当院、広尾クリニック内科・消化器でも、鎮静剤を使った大腸カメラ検査後は運転をご遠慮いただいております。当日は公共交通機関やタクシー、ご家族の運転などでお越しください。
細いカメラを使用した検査
最近では、従来よりも細いカメラ(スコープ)が導入されている医療機関が増えているため、痛みや苦しさを軽減しやすくなりました。
カメラが細くなることで腸への圧迫や刺激が少なくなり、痛みや違和感が抑えやすくなります。
検査を受ける予定の医療機関ではどのようなカメラが使われているのか、痛みや違和感などはどの程度なのかなど、気になる点を医師に確認してみるのもおすすめです。
検査前後のサポートや患者さん自身の協力
検査のストレスを軽減するためには、事前のサポートや検査後のケア、患者さん自身の協力も関係します。
検査前には体調や持病、希望を医師やスタッフに詳しく伝えるようにしましょう。
医療機関では事前に体調確認や不安についての聞き取りが行われ、安定した環境で検査を進められるよう配慮されていますが、患者さん自身の申告も重要です。
また、検査後には体調の変化や注意点について説明があり、必要に応じて安静時間を設ける医療機関もあります。
この時点で気になる症状があればすぐに相談して、適切な対処を受けてください。
「あまり細かく言ったら呆れられるかも…」と心配する人もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
安定した環境でストレスを軽減した検査をするためには、医師の技術やスタッフの対応も大切ですが、患者さんの情報提供もとても重要です。
どんなことでも遠慮せずに、違和感を持った時点ですぐに相談してください。
リラックスするための工夫
検査中の緊張や不安が強いと、同じ刺激でも痛みを感じやすくなります。
リラックスすることによって検査のストレスを軽減しやすくなるため、自身に合ったリラックス方法を取り入れてください。
例えば以下のようなことは取り入れやすく、おすすめです。
- 深呼吸する
- 身体の力を意識的に抜く
- 痛みや不安を感じた場合はすぐに伝える など
医療機関によっては落ち着いた雰囲気づくりや、検査前後にリラックスできる環境を用意しているため、そのような環境が整った医療機関で検査を受けるのもよいでしょう。
前処置はしっかり行う
大腸内視鏡検査にあたって、腸をきれいにするための前処置はとても重要です。
検査の前に下剤などを使って腸内をきれいにしておくことで、カメラが大腸内を進みやすくなり、スムーズな操作や時間の短縮につながります。
腸に便が残っていると視界が遮られるだけでなく、カメラの進行が妨げられ、余分な操作が増えてしまうことが多いです。
その結果、患者さんが痛みや違和感を覚えるリスクが高くなってしまいます。
前処置が適切に行われていれば、腸内の状態を把握しやすくなり、カメラもスムーズに進むため、検査を円滑に行うことができます。
痛みや苦しさの軽減だけではなく、検査の精度にも反映されるため、前処置はしっかり済ませておきましょう。
数日前から食事の内容に配慮しておくと、前処置がスムーズに進みやすくなるためおすすめです。
食事について気になる方は以下の記事をご覧ください。
大腸内視鏡検査3日前からの食事例│準備やOK・NG食材を紹介
まとめ
大腸カメラ検査は「痛い」「苦しい」と不安を持つ人が多いですが、感じ方は腸の形や体質、医師の技術やカメラの種類、前処置の精度など多くの要素で変わります。
医療機関では鎮静剤の利用や丁寧な声かけなど苦痛を減らす工夫がされているため、心配し過ぎずに検査を受けましょう。
患者さん自身も不安や希望を事前に医師に伝え、指示された前処置を守ることで検査中のストレスを軽減しやすくなります。
信頼できる医療機関で相談し、痛みや苦しさを軽減した検査への準備を整えましょう。
広尾クリニック内科・消化器では、痛い、苦しいなどのストレスを軽減した大腸カメラ検査を心がけています。
専門医・指導医による丁寧な診察や検査、スタッフのきめ細かい対応など、大腸カメラ検査に不安を持つ方でも、心配しすぎずに検査を受けられる環境です。
「大腸カメラ検査を検討している、でも検査のストレスが気になって…」という方は、まずはご相談だけでもお気軽にお越しください。