
大腸カメラ検査を「予約なしで当日受けたい」と思う状況があるかもしれません。
通常は前日からの下剤準備や予約が必要とされる検査ですが、出血や腹痛などの緊急症状がある場合、医師の判断で当日実施されることもあります。
そのため、症状の緊急性や重さ、検査を希望する目的などによって、当日対応が可能かどうかや検査までの流れは変わってきます。
この記事では、当日に大腸カメラを受けられるケースやその注意点、緊急時以外でも検査を検討したほうがいいタイミングなどについて紹介します。
当日検査が適切な症状か、予約検査にするべきかどうかなどに悩んでいる人は、ぜひ参考になさってください。
当日に大腸カメラ検査を受けられるケースとは

大腸カメラ検査(下部内視鏡検査)は通常予約制で、前日からの下剤準備が必要ですが、症状の緊急性によっては医師の判断で当日対応が可能な場合もあります。
ここでは、当日検査が実施される主なケースや注意点について紹介します。
下血・腹痛などの緊急症状がある場合
大腸からの出血や急激な腹痛など、消化器の異常が疑われる症状がある場合には、緊急性が高いと判断され、当日に大腸カメラ検査が行われるケースがあります。
特に以下のような症状が該当することが多いです。
- 排便時に鮮血が混ざっている
- 血便と貧血が同時に認められる
- 血便に加えて腹痛がある など
このような症状は重大な大腸の病気が関係している可能性があるため、早めの検査が求められます。
問診や診察結果から医師が検査の必要性を判断し、速やかに検査が進められるでしょう。
ただし、すべての医療機関で対応しているわけではありません。当日検査を希望するのであれば、当日検査に対応している医療機関を受診しましょう。
症状の原因を特定することにより、重大な病気の発見や適切な治療につなげやすくなります。
血便やあきらかな腸の異常を感じた場合、できるだけ早く大腸カメラ検査を受けましょう。
救急外来や消化器専門外来での対応例
救急外来や消化器を専門とする外来では、症状の緊急度に応じて大腸カメラ検査が当日に行われる場合があります。
ただし、夜間や休日は対応が難しいこともあり、すべての医療機関で当日検査が可能とは限りません。
検査枠の確保や下剤の準備なども必要になるため、まずは医療機関に相談して指示を求めましょう。
診療時間や体制については、前もって医療機関の公式情報を確認しておくと、いざというときに慌てず行動できます。
緊急検査でも事前処置が必要なこともある
当日に大腸カメラ検査を行う場合でも、多くの医療機関では腸内を空にするための下剤服用などの事前準備が求められます。
検査の精度を保つためには、腸内に便が残っていない状態にしなくてはならないため、たとえ緊急対応であっても下剤の処置を省略することは基本的にありません。
緊急の場合、下剤は来院後に院内で服用するケースが多いです。
排便が完了するまでには個人差がありますが、おおよそ1~2時間以上を見込んでおくとよいでしょう。
当日検査が可能な医療機関であっても、準備時間を含めて一定の待機が必要になるため、予想よりも時間がかかる点には注意が必要です。
緊急時に当日検査を希望する際の注意点

大腸カメラ検査を当日に受けたいと考えても、必ずしもすぐに対応可能とは限りません。緊急時に検査を希望する際の注意点を確認しておくことが大切です。
ここでは、緊急時に当日検査を希望する際の注意点について紹介します。
症状が軽度な場合は即日検査が難しいこともある
大腸カメラ検査は基本的に予約制であり、症状が軽度の場合は即日の検査が難しいこともあります。
医療機関の多くは、下血や強い腹痛などの明らかな異常がない限り、まず通常の診察を経てから検査日を設定する流れが一般的です。
実際、当日検査を受け付けている医療機関でも、「急に血便が出た方」や「検査を急ぎたい理由が明確な方」を対象にしていることが多いです。
軽度の不調では医師が緊急性を認めない場合もあるため、先に診察を受けたほうがよいでしょう。
自分では軽度かどうか判断できなかったり、軽度だとは思うがどうしても不安だと思う気持ちが強かったりするのであれば、来院前に医療機関へ問い合わせをしてください。
当日対応の可否は医療機関の体制次第
当日に大腸カメラ検査を受けられるかどうかは、各医療機関の体制によって異なります。
公式サイトに「当日検査対応」と記載されている場合でも、対応できるのは検査枠に空きがあり、担当医や内視鏡機器の準備が整っている時に限られます。
また、夜間や休日には対応が難しい医療機関が多く、診療時間や曜日によって可否が変わる点にも注意が必要です。
医療機関によっては、下剤の処置など院内での準備を含めた対応体制を整えている場合もありますが、対応できる人数や条件には限りがあるため、受診前に電話などで確認を取ることを強くおすすめします。
検査の精密性を保つためには準備が必要
大腸カメラ検査を精密に行うためには、腸内を空にする事前準備が欠かせません。
視野を確保しなくては細部までの検査が難しくなり、病気や異変を見落とすリスクが生まれます。
そのためには腸内がきれいな状態になっていることが望ましく、下剤処置を省略するのは難しいです。
多くの医療機関では、検査当日に院内で下剤を服用し、排便が済んでから大腸カメラ検査を実施する流れを採っています。
下剤の服用から排便の完了までには個人差がありますが、通常2〜3時間以上を要します。
下剤の量や使用する薬剤は医療機関によって異なりますが、複数用意している医療機関も多いです。
一人ひとりの体調や体質、病歴などを考慮した上で選ばれるため、心配しすぎずに服用しましょう。
複数の医療機関を検討しておく
当日検査を希望する場合でも、事前に複数の医療機関を調べておくことが重要です。
医療機関によって対応条件は異なり、「予約なしでも対応可能」「診察なしでも検査可」などの案内がある一方、事前診察が必須とされることもあります。
いざというときに備え、あらかじめ条件や対応体制を比較しておくことで、希望に近い形での検査を受けやすくなるでしょう。
特に緊急の症状が出た場合には、空き枠の有無が重要になるため、事前に候補を絞っておくと無駄な時間を減らせます。
緊急でなくても大腸カメラを検討すべきタイミングとは

大腸カメラ検査は緊急時だけでなく、将来的な病気の予防や早期発見のためにも有効です。
ここでは、緊急でなくても検査を検討したほうがよい具体的なタイミングについて紹介します。
定期健診や便潜血検査で異常が出たとき
健康診断や便潜血検査で異常が見つかった場合、大腸カメラによる精密検査が勧められます。
特に便潜血が陽性と判定された場合は、目に見えない出血が腸内で起きている可能性があり、がんやポリープ、炎症性疾患などが疑われるため、放置せずに早めの受診を強くおすすめします。
大腸がんの多くはポリープから発生するとされており、ポリープの段階で発見・切除すればがん化を防ぎやすくなります。
便潜血検査での異常はよくあることと軽視せず、大腸カメラで直接確認しましょう。
大腸カメラ検査で発見される病気の中でも、大腸がんは早期発見・早期治療によって、5年生存率が95%以上になるといわれている病気です。
そのためには健康診断や便潜血検査の異常を放置せず、速やかに大腸カメラ検査を受けましょう。
年齢や家族歴からリスクが高いとされる場合
大腸がんのリスクは年齢とともに高まります。
特に40代からは大腸がんの発症リスクが増加するため、一度大腸カメラ検査を受けてみることを強くおすすめします。
また、親や兄弟姉妹など血縁者に大腸がんを患った人がいる場合(家族歴)、遺伝的な要因によって自身の発症リスクも高くなると考えられています。
自覚症状がなくてもこうしたリスク因子に当てはまる人は、予防的に検査を受けることで、早期発見や早期治療につながりやすくなるでしょう。
また、初回の検査で異常がなかった場合でも、一定間隔で定期的に検査を継続する意識が大切です。
その人の年齢や既往歴、家族歴によって適切な検査間隔が異なるため、医師と相談しながら決めるとよいでしょう。
慢性的な便通異常や腹部の不快感があるとき
下痢や便秘などの便通異常が長期間続く場合や、腹部に違和感があると思った時も、大腸カメラ検査を検討する価値があります。
これらの症状は過敏性腸症候群のような機能性疾患でも見られますが、なかにはポリープやがん、炎症性腸疾患が隠れているケースも考えられるためです。
特に症状が一時的ではなく慢性的に続いている場合、自己判断で放置するのではなく、大腸カメラ検査で原因を明確にしておきましょう。
検査で自分の大腸の状態を確認することによって安心感が生まれ、ストレスや不安を軽減できるメリットもあります。
生活習慣や疾患から予防的検査が望ましいケース
生活習慣の乱れは、大腸がんのリスク要因とされています。特に以下のような生活習慣がある人は注意しましょう。
- 高脂肪食の摂取が多い
- 飲酒・喫煙の習慣がある
- 運動不足が続いている
仕事や家庭の都合によってはどうしてもこのような生活習慣になる人も多いかもしれません。だからこそ、定期的な大腸カメラ検査を自己管理のひとつとして取り入れるのもよい方法です。
また、糖尿病などの基礎疾患を抱えている場合も、大腸がんの発症リスクが高まることが知られています。
こうした事情を持つ人は、症状が出ていなくても予防的に大腸カメラ検査を受けるとよいでしょう。
特に大腸がんは、自覚症状が現れてからでは進行していることが多く、発見が遅れると選択できる治療が減る恐れもあります。
生活習慣や既往歴から気になる点がある場合には、早い段階で医師に相談し、積極的に大腸カメラ検査を受けましょう。
緊急時以外は一般診察からの大腸カメラ検査を
緊急時を除き、大腸カメラ検査は一般診察を経て日程を調整するのが基本です。緊急時と違い、以下のようなメリットが生まれます。
- 事前診察で体調や服薬状況を確認できる
- 医師とコミュニケーションが取れる
- 検査内容について時間をかけて理解できる
- しっかり腸内をきれいにできる
前もって診察を行い、体調や服薬の状況を事前に確認できれば、鎮静剤や下剤服用、検査におけるリスクや副作用を軽減できます。
また、医師と十分に話し合うことで不安や疑問を解消し、検査への理解も深まるでしょう。どんな小さな疑問でも医師の回答があれば、リラックスして検査へ臨めるのではないでしょうか。
大腸カメラ検査は苦痛や下剤服用にストレスを感じる人も多いですが、事前に医師とコミュニケーションを取ることで、リラックス効果が期待できます。
前もって消化の良い食事や食事制限をすればしっかり腸内をきれいにでき、便に隠れた病変の見逃しを防げることもメリットです。
まとめ
大腸カメラ検査は、緊急時に限らず、健康管理や予防のためにも重要な検査です。
出血や急な腹痛が見られた場合には、医療機関の体制や医師の判断により当日対応が可能なこともありますが、通常は事前の診察や準備を経て行うのが基本になります。
また、緊急ではない場合でも、健診で異常が出た時や、家族歴や既往歴、年齢、生活習慣などによってリスクが高いとされる場合には、早めに大腸カメラ検査を検討してください。
広尾クリニック内科・消化器では、血便緊急外来を開設し、緊急を要する患者さんへの対応を行っています。症状によっては即日の大腸カメラ検査、S状結腸内視鏡検査などが可能です。
また、緊急時以外でも専門医・指導医による大腸カメラ検査をご提供しています。大腸の健康が気になる方は、お気軽にご相談ください。