大腸カメラは、大腸のさまざまな疾患を早期発見・治療するために必要不可欠な検査です。
大腸の病気は症状が現れた頃には進行しているケースが多く、場合によっては命に関わることもあるため、定期的な検査が重要になります。
では、どのくらいの頻度で検査を受けるのが効果的なのでしょうか。
この記事では、大腸カメラ検査の頻度について項目ごとに紹介します。
何年おきに大腸カメラを受けるのがいいのか知りたい人は、参考にしてください。
大腸カメラを定期的に受けたほうがいい理由
大腸カメラは、以下の理由から定期的に受けたほうがいいとされています。
大腸の病気を早期発見するため
大腸の病気は初期症状がほとんどない場合が多く、早期に発見するために大腸カメラでの検査が推奨されます。
特に大腸がんは、発見が遅れると命にかかわる危険がある疾患です。
そのため、定期的に検査を受けて、病状が悪化する前に検査で予兆を発見することが重要です。
大腸の病気を予防・治療するため
大腸カメラは、大腸の病気を予防・治療する役割があります。
大腸がんの前段階である大腸ポリープは、大腸カメラで発見次第切除が可能です。
またリンパ節転移のリスクがない早期の大腸がんであれば、同様に大腸カメラでの治療が可能なため、定期的な受診での治療・予防が効果的です。
大腸にみられる病変を採取して検査するため
大腸カメラは、大腸に出現した病変を採取する役割を果たします。
生検は病気の治療計画を立てる際に重要な検査で、大腸の粘膜から病変の一部を採取し、がん化の有無や病変の正体を調べる方法です。
早期の大腸がんであれば、内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術で切除が可能ですが、生検の結果、開腹手術や腹膜鏡手術が必要と判断されるケースもあります。
大腸カメラの年齢別の受診頻度
大腸カメラの年齢別の受診頻度は以下の通りです。
30歳未満の人
30歳未満の人は大腸がんのリスクは高くありませんが、血縁者に大腸がんに罹患した経験のある人がいる場合、20代のうちに一度検査を受けることが推奨されます。
遺伝によって発症する家族性大腸腺腫症は、若年期から大腸にがん化するポリープが100個以上できる疾患で、早い場合で10歳からポリープができ始めます。
そのため、血縁者に大腸がんを経験した人がいる場合は、若いうちから大腸カメラによる検査を受け、検査頻度について医師に相談することをおすすめします。
また、大腸カメラを初めて受ける年齢の目安は40歳とされていますが、気になる症状がある場合や心配な場合は20代・30代で大腸カメラを受けても問題ありません。
40代の人
40代の大腸カメラの理想の頻度は、1回目の検査で異常がなければ3〜5年に1回、大腸ポリープが発覚した場合は1〜2年に1回です。
大腸がんは、40代から発症する人が徐々に増え始めるとされています。
以前に大腸カメラを受けたことがない場合は、40歳を目安に一度検査を受けましょう。
50代の人
50代の大腸カメラの頻度は、腸に異常がなければ3年に1回、大腸ポリープが発覚した場合は1〜2年に1回が理想です。
大腸がんは40代から増加し始め、50代になると急増するといわれています。
症状が出たときには既に進行した状態になるため、50代で一度も大腸カメラを受けたことがない人は可能な限り早く検査を受けましょう。
60代の人
60代の大腸カメラの頻度は3年に1回で、過去にポリープや腺腫を切除したことがある場合は1~2年に1回の検査が理想です。
大腸がんの罹患率は、高齢になるほど上昇します。
40代で一度大腸カメラを受けるのが理想ですが、60代でいまだに受けたことがない人は早急に検査することが推奨されます。
大腸カメラのケース別の受診頻度
大腸カメラのケース別の受診頻度は以下の通りです。
大腸ポリープがない場合
一度目の検査で大腸ポリープが発見されず、異常なしと診断された場合、大腸カメラの検査は5年に1度でいいとされています。
ポリープが発見され切除した場合でも、微小なポリープ1〜2個であれば同様の頻度で十分なケースもあります。
大腸ポリープや大腸がんの発生リスクは年齢を重ねるほどに増加するため、40歳を境に一度かかりつけの内科で検査の間隔を短くするべきか相談するのがおすすめです。
大腸ポリープを切除した場合
大きなポリープ・がん化のリスクがあるポリープを切除した場合や、大腸がんの懸念がある状態の患者さんの場合、1年に1回の頻度で大腸カメラの検査が推奨されます。
また、3〜9個の小さなポリープを切除した場合や、病変が見当たらない状態で便潜血検査の結果が陽性を繰り返す場合は、3年に1回の頻度で大腸カメラ検査が勧められるケースが多いです。
ケース別の受診頻度はあくまで目安であり、実際に大腸カメラを受けるタイミングは検査結果や個人の事情によって異なるため、医師と相談のうえ検討しましょう。
大腸カメラで発見できる病気とその検査の重要性
大腸カメラで発見できる病気と、その検査の重要性は以下の通りです。
大腸がん
大腸がんの治療経験がある人は、毎年の大腸カメラ検査が推奨されます。
ひだや排出しきれなかった便に隠れたポリープは、大腸カメラで検査しても見落とすリスクがあるため、定期的に検査して進行する前に発見・切除することが重要です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎を発症した方は、症状が寛解した場合でも1〜2年に1度の頻度で大腸カメラ検査が推奨されます。
潰瘍性大腸炎は10代や20代の期間に発がんするリスクもあるため、定期検査が重要な疾患です。
特に、慢性的な腸の炎症がみられる人や潰瘍の痕跡がある人は、大腸がんを発症するリスクが高い傾向があるため、可能であれば毎年大腸カメラを受けましょう。
大腸憩室症
大腸憩室症を発症した場合、大腸カメラによって経過観察をする必要はありませんが、医師の指示次第では定期的に検査を受けることをおすすめします。
大腸憩室症は多くの場合で無症状ですが、強い炎症によって穿孔を形成すると、腹痛や発熱を伴う可能性があります。
そのため、医師の指示に従って定期的な大腸カメラなどのアフターフォローを受けましょう。
大腸メラノーシス
大腸メラノーシスは、メラニン色素の沈着で腸壁に黒ずみが発生した状態で、病気とは異なりますが大腸カメラによって発見される現象です。
健康に直接害を及ぼす疾患ではありませんが、腸の活動が鈍くなったり、腸内環境が変化したりすることで便秘や下痢などを引き起こすことがあります。
そのため、場合によっては医師の判断で生活習慣の指導を受ける必要があります。
クローン病
クローン病と診断された場合、大腸がんや肛門部のがんの発見のため、定期的な大腸カメラ検査が推奨されます。
クローン病に罹患した患者さんは、大腸がんだけではなく小腸がんの発生リスクも高まる傾向があります。
クローン病は厚生労働省が難治性疾患に指定する病気の一つで、明確な完治の基準がないため、適切な治療で症状を抑制しながらうまく付き合っていくことが大切です。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群でみられる症状は、潰瘍性大腸炎やクローン病でみられる症状と似ているため、大腸カメラ検査を行い他の病気の有無を確認することが大切です。
過敏性腸症候群の治療期間には個人差があり、数回の受診で終了する人や何年も検査に通い続ける人などさまざまです。
病状が良くなったり悪くなったりするのが特徴であるため、体調次第での受診が推奨されます。
感染性腸炎
感染性腸炎は病原体が腸の炎症を引き起こすことで発症する疾患です。
下痢や発熱などの症状が長く続く場合は、他の病気の疑いも懸念されるため、大腸カメラを用いた検査で正確に診断する必要があります。
病原体の種類によって症状が異なり、重症化した場合は緊急の治療が要される可能性がある疾患です。
虚血性腸炎
虚血性腸炎では他の病気との鑑別や炎症・出血の状態、範囲の確認のため、大腸カメラ検査を行うことがあります。
高齢者では動脈硬化、若年層では便秘が原因となるケースが多く、その他ストレスや食生活・生活習慣の乱れなどが原因となるケースもあるとされています。
重症化することで入院を要される可能性があるため、大腸カメラによる迅速な診断が大切です。
直腸カルチノイド
直腸カルチノイドは検査を受けないと見つかりづらい病気であるため、大腸カメラ検診や便潜血検査による発見の必要があります。
症状がないケースが多く、紅潮・下痢・腹痛・右心不全・喘鳴・皮疹など、症状が出現したものをカルチノイド症候群と呼びます。
大腸カメラによる生検や切除によって治療可能ですが、外科的手術や薬物治療を要するケースもあるため、早期発見・治療が重要な疾患です。
直腸潰瘍
直腸潰瘍は、大腸カメラで直腸の出血原因を検査した場合に潰瘍が見つかることで発覚します。
貧血を引き起こすほど大量に出血する場合があり、健康状態が芳しくなく、長期間寝たきりの状態が続いた高齢者に発症しやすいです。
発症のタイミングや現在の病状を把握するために、採血や生検を含む大腸カメラ検査などが必要です。
大腸カメラの頻度を左右する要因
大腸カメラの検査頻度は、年齢やポリープ切除の有無以外に、以下の要因で左右されるケースがあります。
ライフスタイル
食生活や運動習慣などのライフスタイルは、大腸カメラの検査頻度に影響する可能性があります。
高脂肪食や赤身肉・加工肉を頻繁に食べる人、お酒を多く摂取する習慣がある人は、バランスの良い食事を心掛けている人と比較すると大腸がんのリスクが高くなりやすいです。
運動不足も大腸がんのリスク要因として挙げられるため、当てはまる場合は頻繁な検査が必要になる可能性があります。
またストレスは免疫力を低下させ、がん細胞の増殖を促進するとされているため、心当たりがある場合は医師に相談し、可能な限りライフスタイルの改善に努めましょう。
薬の副作用
薬の副作用で大腸に悪影響が及んでいる場合、大腸カメラ検査の回数が増える可能性があります。
ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は、副作用として出血性大腸炎を発症する恐れがあり、これを診断する際に大腸カメラ検査が行われます。
軽度の出血性大腸炎の場合、1週間ほど安静にすることで自然治癒するため、それ以降の大腸カメラの頻度が増えるわけではありません。
しかし、子どもや高齢者の場合は合併症により入院治療が必要になるケースもあるため注意が必要です。
まとめ
大腸がんのリスクは40代から増加し始めますが、家族歴によっては若い頃からの大腸カメラ検査が必要になるケースもあるため注意が必要です。
また、大腸の病気は症状がほとんどないものが多く、早期発見によって大掛かりな処置をせずに治療できるため、早い段階で一度行きつけの医療機関に相談しましょう。
広尾クリニック内科・消化器では、専門医・指導医が患者さんに寄り添ったつらくない内視鏡検査を行います。
定期的な大腸カメラ検査のほか、潰瘍性大腸炎やクローン病などの患者さんが健康な人と変わらない生活を送るための適切な治療とフォローを行います。
血縁者に大腸がんになった人がいる患者さんや、40代で初めて大腸カメラを受ける患者さんをはじめ、多くの方のかかりつけのクリニックとしてぜひご利用ください。