大腸カメラ検査(下部内視鏡検査)は、大腸の健康を守るために重要な検査ですが、初めて受ける方には不安がつきものです。「準備が大変そう」「どんな病気が分かるんだろう」といった心配や悩みもあるでしょう。
先に前日からの準備や流れ、大腸カメラ検査で分かる病気などについて知っておけば、検査に対するストレスを軽減できます。
この記事では、検査の準備や当日の流れ、下剤の飲み方や服装の選び方、大腸カメラ検査で分かる病気や受診をおすすめしたいケースについて紹介します。
大腸カメラ検査が初めてでもスムーズに受けられるよう、この記事を参考にしてみてください。
大腸カメラの検査の流れ
大腸カメラ検査は、事前の診察や前日からの準備を経て当日の検査へ臨みます。
ここでは、検査前日の準備から当日のスケジュール、注意点などを詳しく紹介します。
前日準備
大腸カメラ検査の前日は食事制限が必要です。
広尾クリニック内科・消化器で検査をする場合、20時までに夕飯を済ませていただき、以降の水分摂取は水・お茶・スポーツドリンクのみになります。
検査の妨げになる可能性があるため、消化に悪いものは避け、消化しやすい食事を摂取しましょう。具体的には以下のような食事がおすすめです。
分類 | 食事例 |
---|---|
ご飯類 | おかゆ・豆やよもぎ類が入っていない餅 |
麺類 | うどん・米粉の麺(フォー、ビーフンなど) |
肉・魚類 | 鶏ささみ・豚モモ・タラ・鮭 など脂肪分の少ない種類 |
その他 | 豆腐・卵・お麩 など |
このような食事以外では、すでにパッケージになっている内視鏡(大腸カメラ)検査専用食が指定されることもあります。
医療機関によっては、前日の夕食以降の食事に検査専用食を指定することもあるため、事前に確認しておきましょう。
普段の食事と異なる部分が多く、物足りなさを感じるかもしれませんが、翌日の腸内洗浄の効果や検査の精度を高めるために必要な準備です。
当日の流れ
次に、検査当日の流れを見てみましょう。一般的には検査の数時間前に腸内洗浄を行うことから始まります。
ここでは、当院の大腸カメラ検査を例に紹介します。以下の表を参考にしてみてください。
順序 | 内容 |
---|---|
検査前 | ・普段飲んでいる薬があれば、検査予約時の指示通りに服用します。 ・水分摂取は水とスポーツドリンクのみです。 ・検査の4時間前から下剤を服用し、お腹の中をきれいにします。 |
検査 | ・大腸カメラで検査を行います。 ・所要時間は約15~30分です。 ・病変切除などの処置がある場合、長引く可能性があります。 |
検査後 | ・鎮静剤を使用した検査の場合は休憩します。 ・医師から検査結果の説明を受けます。 |
検査の4時間前から腸内洗浄を行うため、検査時間に合わせてスタートしましょう。『便が出し切れなかった』『下剤の効果がない』ということがあれば、早めに医師に連絡してみてください。
検査そのものの所要時間は短く、病変切除などの特別な処置がない場合は約15~30分で完了します。
検査後は医師から検査結果の説明を受けて完了です。鎮静剤を使用した検査をした患者さんは、リカバリールームで休憩してから説明を受けることになります。
【注意】検査前の薬の服用について
治療や健康維持のために常用している薬がある人は、事前の診察時に必ず医師へ相談して、当日は指導通りに服用するようにしましょう。
特に以下の薬を服用している場合は注意が必要です。
- 血液をサラサラにする薬
- 糖尿病の薬
- 心臓の薬
- 抗てんかん薬
- 喘息の薬 など
このような薬は、患者さんの自己判断で薬の使用・中断をすると病状に悪影響が出る可能性があります。
検査のために病状が悪化しては元も子もないため、医師の指導通りにしましょう。
前日・当日の注意点
大腸カメラ検査は、前日・当日の準備がありますが、それと同時に注意しておきたい点もあります。健康や安全に関わるものもあるため、以下を参考にしてみてください。
- 検査前日は早めに就寝し、体調を整える
- 検査で鎮静剤を使う場合、当日は運転を控える
- 検査後の食事は特に制限がないが、消化のよい食べ物を推奨
- ポリープ切除を行った場合、出血予防のため2週間ほど飲酒や遠方旅行を控える
- 同じく激しい運動やサウナ、長風呂も避ける
どの項目も健康や安全を守るために欠かせません。検査後しばらくは意識しながら生活しましょう。また、検査後に何らかの異常を感じたら、すぐに医師への相談をおすすめします。
検査前に服用する下剤の必要性や代表的な種類
大腸カメラ検査を受ける際には下剤を服用し、腸の中をきれいにします。
服用する下剤の種類や服用方法は、患者さんの体調・体質や医療機関の方針によって異なるため、事前の説明を詳しく聞くようにしましょう。
ここでは、下剤の必要性、医師への相談が必要な場合、大腸カメラ検査で使われる代表的な下剤の種類について詳しく説明します。
大腸カメラで下剤が必要な理由
大腸カメラ検査では、検査の精度を上げるため、下剤を服用して腸にある便を可能な限り排出し、内部をきれいにする必要があります。
腸内に便が残っていると、以下のようなデメリットが発生する恐れがあります。
- カメラ(内視鏡)の視界が遮られる
- 医師が正確な診断をしにくくなる
腸がきれいな状態であれば、ポリープや炎症、がんなどの異常を発見しやすくなり、診断精度が大きく向上します。
また、内視鏡の動きに支障をきたすと検査の時間が長引いたり、再検査が必要になったりなど、患者さんの負担が増す可能性もあります。
下剤の服用は患者さんがスムーズに検査を済ませるためにも欠かせないステップです。飲むことに負担を感じるかもしれませんが、大切な検査の一環としてご協力ください。
こんな時には医師と相談を
検査に必要といっても、どうしても飲めない事情がある場合や緊急時は必ず医師に相談しましょう。例えば、以下のような状況です。
- どうしても下剤が飲めない
- 下剤を全量飲んでも便がすべて出ていない気がする
- 発熱などの体調不良 など
人によっては下剤に強い抵抗感を持ち、飲めないことがあります。その際は医師が代替手段を提案するため、早めに相談してみてください。
また、強い便秘症の人は下剤を飲んでも腸内に便が残る可能性があります。事前に便秘症であることを相談しておくと、当日はスムーズに進めやすくなるでしょう。
発熱や血圧低下など、急な体調不良も必ず相談しましょう。検査の延期・中止が必要になり、下剤の服用を中止することもあるためです。
なお、医療機関にもよりますが、貧血は胃がんや大腸がんの兆候である可能性が否定できないため、検査を延期・中止しない場合があります。
代表的な下剤
大腸カメラ検査で飲む下剤は、液状・錠剤を合わせて数種類あり、医療機関の方針や患者さんの状態で決められます。代表的な下剤には以下があります。
当院ではマグコロールP、ニフレック、サルプレップを採用しています。
下剤名 | 特徴 | 総量 | 飲み方 |
---|---|---|---|
マグコロールP(液剤) | スポーツドリンクのような風味で、水で溶かして飲む | 水を入れて1800mlにした量 | 約1時間30分かけて全量を飲む |
ニフレック(液剤) | レモン風味があり、水で溶かして飲む | 水を入れて2000mlにした量 | 約2時間かけて全量を飲む |
サルプレップ(液剤) | レモン風味があり、服用量が比較的少ない | 製剤480~960mlを2回に分けて飲む 飲み終えた後に水またはお茶を合計1500ml飲む | 1回目:480mlを約30分かけて飲み、水またはお茶を60分かけて1000ml飲む 2回目:240mlを約15分かけて飲み、水またはお茶を500ml飲む |
モビプレップ(液剤) | 水、お茶などに溶かして飲む | 製剤1000ml+水分1000ml | 約2時間で全量飲む ※約180mlを10分ほどかけて飲むのが目安 |
ピコプレップ(液剤) | 前日夜と検査当日の2回服用する | 前日:製剤150ml+透明な飲み物1250ml以上 検査当日:製剤150ml+透明な飲み物750ml以上 | 前日:約2~3時間で全量を飲む 検査当日:約1~2時間で全量を飲む |
ビジクリア(錠剤) | 一般的な薬のように飲める | 錠剤50錠+2000mlの水分 | 約2時間30分で全量を飲む |
どの下剤を使用するかは医師の判断によりますが、既往症や普段の腸の状態、患者さんの体調などが考慮されます。
大腸カメラで分かる病気は?
大腸カメラ検査はお腹に関するさまざまな病気を発見しやすい検査です。
ここでは、大腸カメラ検査で発見される代表的な病気や症状を紹介します。大腸カメラ検査を受ける際の参考にしてみてください。
大腸ポリープ
健康診断で便潜血反応が陽性になった場合、大腸ポリープが関係していることが少なくありません。大腸ポリープは無症状であることが多く、健康診断で初めて気付く人が多いです。
大腸ポリープの発症原因としては遺伝的な要素や食生活の欧米化などがあります。
大腸ポリープは大腸がんに移行する可能性があるため、大腸カメラ検査で詳しく確認する必要があります。
大きさが10mmほどであれば日帰り切除も可能なため、医師と相談して切除をするかどうかを決めるとよいでしょう。
なお、ポリープができたからといって必ず大腸がんになるわけではありません。気になる場合には定期的に大腸カメラ検査を行い、変化がないか確認することをおすすめします。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜を中心に潰瘍やびらんができる病気です。以下のような症状がみられます。
- 下痢
- 血便
- 腹痛
- 便意があっても出ない
- 少量の便しか出ない
潰瘍性大腸炎は国が難病指定をしている病気です。難病ではありますが、適切な治療が行われれば、健康な人とほぼ同様の生活を送ることが可能です。
定期的に大腸カメラ検査を受け、病状を把握し、患者さんの状態に合った治療を進めることになります。
クローン病
クローン病は全身の消化管に浮腫や潰瘍ができる病気で、はっきりとした原因が分かっていません。以下のような症状が見られます。
- 腹痛
- 下痢
- 血便
- 痔ろう
- 発熱
- 栄養障害 など
潰瘍性大腸炎と同じく、国によって難病指定を受けていますが、適切な治療をすれば一般的な日常生活を送れる病気です。
定期的な大腸カメラ検査やCT検査を取り入れ、病状を把握しながら治療を進めることになります。
大腸がん
大腸がんは近年、患者数が増加している病気です。自覚症状がなかなか出ないため、気付かないうちに進行することが少なくありません。
健康診断で便潜血反応が陽性になったり、下痢や便秘、血便などが気になったりした場合には、可能な限り早めに医療機関を受診してみてください。
がんは早期発見と早期の治療スタートが肝心です。大腸カメラ検査で細部を確認し、早期発見や健康維持に努めましょう。
大腸カメラ検査をおすすめする人・受けられない人
大腸カメラ検査は多くの人が受けられますが、場合によっては受けられない人もいます。
ここでは、大腸カメラ検査をおすすめする人や、医師の判断によって受けられない可能性がある人について紹介します。
大腸カメラ検査をおすすめする人
大腸カメラ検査をおすすめしたいのは、お腹や便に異常や違和感があったり、年齢や遺伝的な心配がある人です。具体的には以下のような症状が気になる人におすすめします。
- 血便が出る
- 腹痛を伴うお腹の張り
- 下痢や便秘がひどい
- 健康診断の便潜血検査が陽性だった
- 40歳以上で大腸カメラ検査を受けたことがない
- 家族・親戚に大腸がんになった人がいる
血便に関しては、「痔があるからその出血だと思う」と考える人もいるかもしれません。しかし、他の病気が隠れている可能性もあるため、一度大腸カメラ検査を受けて確認しておくことをおすすめします。
また、自覚症状や便潜血検査での異常がなくても、40歳以上の人は大腸がんの発症率が上昇する年代です。定期的な大腸カメラ検査で早期発見を目指しましょう。
大腸カメラ検査を受けられない可能性がある人
一部の人は大腸カメラ検査が受けられません。受けられない場合はほかの検査方法を検討しましょう。
以下のような人は、大腸カメラ検査を受けられない可能性があります。
- 妊娠中の人
- 体重が重すぎる人(120~130kg以上)
- 検査当日の血圧が高い人
- その他、医師が検査できないと判断した人
体重制限は検査機器に負担がかかりすぎ、正確な診断ができない可能性があるためです。
具体的な体重は医療機関や検査機器によって異なりますが、120~130kgを目安にしている医療機関が多いです。
医療機関によっては特定の病気を治療中の人や高齢者の人は受けられないなど、このほかにも基準を設けているケースがあります。
ただし、検査の可否は事前の診察で医師が判断するため、「どうせ受けられないし…」と諦めず、まずは診察を受けてみてください。
まとめ
大腸カメラ検査は、お腹の病気の早期発見や早期治療に欠かせない重要な検査です。初めて受ける際には下剤の服用や検査の流れなど、気になることは少なくないかもしれません。
しかし、昨今の大腸カメラ検査は患者さんの負担を可能な限り軽減し、スムーズに行えるように考えられています。
不安があればどんな小さなことでも質問して、リラックスしながら検査を受けてみてください。
広尾クリニック内科・消化器では、患者さんの負担を軽減しながら精密な検査結果を出す大腸カメラ検査を心がけています。
お腹の調子や健康診断の結果、年齢や遺伝的要素で気になることがあれば、ぜひ一度、早めにご相談ください。