
大腸カメラ(大腸内視鏡検査/下部内視鏡検査)は、大腸がんやポリープなどの病気を早期に発見し、重症化を防ぐために有効な検査です。
特に40代以降では病気のリスクが高まり、受診の重要性が増してきますが、「何歳から受ければいいのか」「年齢制限はあるのか」など、年齢について不安を感じる人も多いでしょう。
この記事では、大腸カメラの目的や流れ、推奨される受診年齢、加齢に伴うリスクの変化、検査を受ける際の注意点などを紹介します。
これから大腸カメラ検査を受ける予定の人や、受けるかどうか悩んでいる人は、ぜひ参考になさってください。
大腸カメラ検査の目的と基本的な流れ

大腸カメラ検査は、大腸内を直接観察して異常を早期に見つけ、がんや炎症性疾患の進行を防ぐために行われる重要な検査です。
ここでは、大腸カメラ検査の概要や発見できる病気の例、所要時間、費用などについて紹介します。
大腸カメラ検査とは?
大腸カメラ(大腸内視鏡検査/下部内視鏡検査)とは、先端にカメラが付いた細長い内視鏡を肛門から挿入し、大腸の内部を直接観察する検査です。
粘膜の状態や小さな病変まで視認できるため、早期の異常発見に優れています。
検査中にポリープなどが見つかった場合は、その場で切除したり、必要に応じて組織を採取して病理検査を行ったりすることも可能です。
医療機関によっては検査の際に鎮静剤が用いられ、検査中に痛みを感じにくい工夫がされているため、検査中の苦痛が心配な人も受けやすいでしょう。
検査で分かる病気と早期発見の意義
大腸カメラ検査は、大腸内に発生した病気や異変を発見し、必要であれば早期治療につなげられる検査です。
無症状であっても、40代以降の人には定期的な検査が推奨されています。検査で見つかる病気はさまざまですが、以下の病気が代表的です。
- 大腸がん
- 大腸ポリープ
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病 など
中でも大腸がんは初期には自覚症状が出にくいため、検査によって早期に発見できるかどうかが、その後の治療方針や予後に大きく影響します。
また、ポリープの段階で切除することで、将来的ながん化を防ぐことも期待されます。
検査の流れと所要時間
検査の準備は前日と翌朝~検査前まで時間をかけて行います。
検査前日は、消化の良い食事を心がけ、夕食は医療機関が指定した時間までに済ませましょう。当日は朝食をとらず、指定時間に来院します。
腸内をきれいにするための下剤を服用する準備がありますが、朝食後に自宅で行うか、来院後に行うかは医療機関によって異なるため、事前の指示に従いましょう。
その後、検査着に着替え、鎮静剤を使用する場合は点滴を行い、リラックスした状態で検査を受けます。
検査時間は通常15〜30分程度ですが、ポリープ切除などの処置がある場合は、時間が延長されることがあります。当日は余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
検査後は30分から1時間ほど休憩し、医師から結果の説明を受けて帰宅します。
検査にかかる費用と保険適用の条件
大腸カメラ検査は、症状がある場合や医師が必要と判断した際には保険が適用され、自己負担は1〜3割となります。
正確な費用は医療機関によって異なりますが、ここでは当院『広尾クリニック内科・消化器』の料金をご紹介します。
実施内容 | 1割負担 | 3割負担 |
---|---|---|
大腸カメラ検査(鎮静剤なし) | 約2,000円 | 約5,500円 |
大腸カメラ検査(鎮静剤使用) | 約2,500円 | 約6,500円 |
+生検 | +約1,000円 | +約5,000円 |
ポリープ1か所切除 | 約7,000円 | 約20,000円 |
ポリープ2か所切除 | 約8,000円 | 約24,000円 |
ポリープ3か所切除 | 約9,000円 | 約27,000円 |
一方で、人間ドックや健診目的で検査を受ける場合は自費扱いになるため、全額自己負担となります。費用は医療機関によって異なるため、受診前に必ず詳しく確認しておきましょう。
大腸カメラは何歳から受けるべきか

大腸カメラ検査は、一般的には発症リスクが高まる40代以降での受診が推奨されていますが、症状の有無や家族歴の有無などによって異なる場合があります。
ここでは、一般的な受診年齢の目安や、症状や既往歴に応じた考え方について紹介します。
一般的な検査推奨年齢
大腸カメラは、40歳を過ぎた頃から受けることが推奨されています。
例えば大腸がんは、40代から徐々に発症リスクが高まり、特に50代以降はそのリスクが大きくなるため、定期的な検査が重要です。
大腸がんは早期発見・早期治療スタートができれば、5年後の生存率が80%を超えるという報告もあります。ほかの病気も発見が早いに越したことはありません。
定期的な検査で早期発見することにより、早期に治療がスタートできるため、治療の選択肢が広がり、生存率の向上が期待できます。
そのため、40歳以降は3年に1回程度の検査がおすすめです。特に気になる症状がなくても、予防として定期的な検査を受けましょう。
ただし、個々の健康状態やリスク要因によって、検査の開始時期や頻度は異なります。医師と相談して、一人ひとりの状態に合わせた検査時期を決めましょう。
症状がある場合は年齢に関係なく早めの検査を
大腸カメラ検査は、年齢に関わらず、何らかの症状がある場合には早期に受けることを強くおすすめします。
例えば、以下のような状態に気付いた時には早めに医療機関を受診し、必要であれば大腸カメラ検査を受けましょう。
- 便に血が混じる
- 慢性的な腹痛
- 便通の異常
- 体重減少 など
このような症状が見られる場合、お腹に関する何らかの疾患が隠れている可能性があります。
症状を把握したら年齢に関係なく、速やかに検査を受けることが重要です。症状が進行する前に早期に検査を受けることで、隠れた病気の進行を抑え、適切な治療に結びつけられるでしょう。
家族歴や既往歴がある人の注意点
大腸がんやそのほかの大腸疾患で家族歴がある場合、推奨年齢を待たず、若いうちから検査をしたほうがよいでしょう。
特に、親や兄弟に大腸がんの既往がある場合、遺伝的に発症リスクが高くなるため、40歳を迎える前に検査を開始したほうが予防や早期発見につながります。
また、過去に大腸の病気を経験した人も定期的な検査が重要です。医師と相談しながら検査の頻度を決め、様子を見るようにしましょう。
検査の頻度は一人ひとりの家族歴や既往歴によって異なります。検査開始年齢や頻度など調整して、リスク管理をしていきましょう。
年齢とともに変化するリスクと大腸カメラ検査の重要性

加齢に伴い、大腸関連の疾患リスクは増加します。年齢に応じて適切な検査を受けることが重要です。
ここでは、年齢を重ねるとどのようなリスクが増加するのか、検査を受けるタイミングなどについて紹介します。
加齢とともに高まる大腸疾患リスク
40歳を過ぎると大腸がんやポリープのリスクが高まるため、定期的な検査で予防や早期発見に努めることをおすすめします。
ポリープの中には大腸がんに変化するものもあり、最初の検査では問題ないと診断されたとしても、定期的・継続的な観察は欠かせません。
また、便潜血検査も活用しましょう。企業や自治体の健康診断で行われる便潜血検で異常があれば、大腸カメラ検査で精密な観察が推奨されます。
定期的に大腸カメラ検査を受け、早期に異常を発見することで、万が一何らかの病気があっても重病化する前に対処しやすくなるでしょう。
大腸がんの発症率と年齢の相関
前述の通り、大腸がんの発症率は40歳を過ぎると増加し、その後、加齢とともに上昇します。
50代、60代の場合は40代よりも発症率が高くなるため、積極的に大腸カメラ検査を受けたほうがよいでしょう。
大腸カメラ検査は大腸の内側を直接視察することができ、ポリープや異常を早期に発見できることがメリットです。
年齢的にも40代や50代、60代は働き盛りです。大腸がんをはじめ、大病をすれば人生やご家族に大きな影響が出る可能性も否定できません。
定期的な大腸カメラ検査で重大な病気を早期に発見して、ご自分の健康だけではなく、ご家族との生活も守りましょう。
定期的な検査の意義とタイミング
大腸がんは発症初期に自覚症状が現れにくく、気付いたときには進行していることが少なくありません。
そのため、症状の有無に関係なく、一定の年齢に達した段階で検査を受けることが重要です。
特に40代からはポリープが増えるため、最初の内視鏡検査をこの時期に受けておくと、その後の検査間隔の目安にもなります。
異常がなければ数年ごとの検査で済みますが、異常があった場合は医師の指示する期間ごとに再検査が必要になります。
70歳以上でも検査は必要か
大腸がんの発症率は高齢になるほど上昇するため、70歳以上でも大腸内カメラ検査の意義は十分にあります。
高齢であっても早期に発見できれば、身体への負担を抑えながら治療が可能です。
大腸カメラにより、75歳以上の大腸がんによる死亡リスクが約40%も軽減しているという報告もあります。アメリカでは大腸がん検査を75歳まで推奨しているほどです。
ただし、高齢者はほかの疾患を持っている場合も少なくありません。全身状態やほかの疾患との兼ね合いは慎重に考慮する必要があるでしょう。
医師と相談のうえ、健康状態が良好であれば検査継続を検討してみてはいかがでしょうか。
大腸カメラの年齢制限と検査時の注意点

大腸の疾患は年齢と密接に関係しており、前述の通り、加齢に伴ってがんやポリープの発症リスクが高まります。
ここでは年齢に応じた大腸カメラ検査の考え方と注意点について紹介します。
高齢者の検査におけるリスクと対策
高齢者が大腸カメラ検査を受ける際には、年齢に伴う体調の変化や持病の影響を考慮した対応が求められます。特に高齢者の場合、以下の点に注意が必要です。
- 腸の動きが弱くなっている
- 下剤による脱水や電解質異常のリスクが高まる可能性がある
このようなリスクを避けるため、医療機関では下剤の種類を調整したり、入院下での検査や点滴管理などを行う場合もあります。
高齢になるとさまざまな心配ごとも生まれますが、医療機関で綿密な準備をし、患者さんやご家族との連携があれば、リスクを軽減しながら検査を受けられるでしょう。
受診の際の健康状態や医師の判断
検査を行うかどうかは、年齢ではなく健康状態に基づいて判断されます。
日常生活に支障がなく全身状態が良好であれば、高齢であっても検査は実施可能ですし、検査に適さない持病などがある場合には、若い年代でもリスクを避けるために中止されることがあります。
医師は基礎疾患、服薬歴、検査歴、生活状況などを確認し、無理のない範囲で検査の可否を判断します。
医師が適切な判断をするためには、患者さんの協力が欠かせません。基礎疾患をはじめ、求められる情報は申告し、リスクを軽減しながら検査を受けられる状態を整えましょう。
自分に適した検査方法を選ぶには
大腸検査には大腸カメラのほか、便潜血検査やCTコロノグラフィーなど複数の選択肢があります。
大腸カメラは精度が高くポリープ切除も可能ですが、前処置や体力面での負担があります。体調に不安がある場合は、まず便潜血検査を行い、必要に応じて大腸カメラを選択する方法もおすすめです。
身体の状態や目的に応じて、医師と相談しながら自分に合った方法を選びましょう。
また、「分からないことがあるから不安」「大腸カメラをもっと負担なく受けられる方法はない?」などの質問や疑問があれば、積極的に医師や医療機関のスタッフに相談するのも大切です。
疑問をしっかり解消し、先延ばしにせず検査を受けることで、大腸の大きな病気を未然に防ぎやすくなります。
まとめ
大腸の疾患は加齢に伴って発症リスクが高まり、年齢が上がるほど定期的な検査の必要性も増していきます。
40代からは大腸がんの発症リスクが上がるため、この年代に差し掛かった人は、予防も兼ねて定期的な大腸カメラを受けることをおすすめします。
また、高齢であっても健康状態が良好であれば大腸カメラは実施可能であり、医師の判断に基づいて柔軟に対応することが重要です。
身体の状態に合わせて検査方法を選ぶことで、無理なく継続的に大腸の健康管理が行えます。年齢だけにとらわれず、自分に合った形での検査を選択しましょう。
広尾クリニック内科・消化器では、40代からの大腸カメラを推奨しています。また、年齢に関係なく、大腸の状態に異常を感じた場合にも受けていただきたいと考えております。
「大腸カメラは大変そう」「経験したことがない」というご不安や、疑問・質問などがあればどんな小さなことでも解消しておくことが大切です。
納得の上で大腸カメラを選択できるよう丁寧にご説明しますので、お気軽にご連絡ください。