インフルエンザはどうやってうつる?感染経路と予防策を解説

インフルエンザ 感染経路

インフルエンザは毎年流行し、特に冬季には多くの人々が感染リスクにさらされる身近な感染症です。

咳やくしゃみなどの飛沫や、手や物を介した接触によって広がるため、感染経路を正しく理解し、適切な対策を講じて予防に努めましょう。

この記事では、インフルエンザがどのように広がるのか、その原因や具体的な感染経路、飛沫感染と接触感染の違い、それぞれの予防策などについて紹介します。

日常生活での感染リスクを軽減するためのポイントを確認し、インフルエンザシーズンを健康的に過ごすための参考にしてください。

インフルエンザの感染経路と原因

インフルエンザ 感染経路

インフルエンザの感染は、咳やくしゃみで放出される飛沫による『飛沫感染』や、感染者が触れた物を介しての『接触感染』が主な経路です。

ここでは、インフルエンザがどのように広がるのか、なぜ冬季に流行しやすいのかなどについて紹介します。

インフルエンザの主な感染経路とは?

インフルエンザの主な感染経路は、大きく分けて『飛沫感染』と『接触感染』の二つがあります。

飛沫感染は、感染者が咳やくしゃみをした際に放出されるウイルスを含む微小な水滴(飛沫)を、周囲の人が吸い込み、口や鼻、目などの粘膜に貼り付くことで起こります。

一方、接触感染は、感染者が触れた物体や表面に付着したウイルスに、他の人が手で触れ、その手で口や鼻、目などの粘膜に触れ、貼り付かせることで感染します。

ここで重要なことは、インフルエンザは『触れただけで感染するわけではない』ということです。

例えばウイルスが手に触れるようなことがあったとしても、粘膜に接触する前に適切な方法で手洗いをすれば感染確率を下げられます。

感染経路に対して適切な対策をすれば、感染確率を軽減できる可能性が高くなるため、後述する『飛沫感染と接触感染の予防策』で紹介している方法を参考にしてみてください。

冬季に流行する原因

インフルエンザが冬季に流行する主な原因は、気温の低下と空気の乾燥です。

低温の環境ではウイルスの感染力が維持されやすくなります。

また、空気が乾燥すると、喉や鼻の粘膜が乾き、防御機能が低下してしまい、ウイルスが体内に侵入しやすくなるのです。

さらに、寒い季節には人々が室内に集まりやすく、窓を閉め切って換気が不十分になることが少なくありません。

この環境下では、ウイルスが空気中に滞留しやすくなってしまい、感染リスクが高まります。

また、暖房の連続使用で起こる湿度の低下も、ウイルスが室内に居座り続け、感染拡大の原因です。

寒い季節でも窓を開け、こまめに空気を入れ換えたり、加湿器で湿度をコントロールするだけでも予防効果が高まるでしょう。

インフルエンザはどこから感染が広がるのか?

インフルエンザの感染は、職場や学校など、人が多く集まる場所で特に広がりやすくなっています。

オフィスや教室は密集度が高く、飛沫や接触による感染リスクが増大します。

共用のパソコンや電話、ドアノブなどを介してウイルスが拡散されることも少なくありません。

また、家庭内での感染経路も見逃せません。家族の一人が感染すると、同じ空間で生活するほかの家族も感染しやすくなります。

特に小さな子どもや高齢の人は免疫力が低いことが多く、重症化するリスクが高まるため、感染防止を意識した生活が重要です。

家庭内での感染を防ぐためには、手洗いやうがいの徹底、共有物の消毒、適切な換気などの予防方法をできる限り実践していきましょう。

飛沫感染と接触感染の違い

インフルエンザ 感染経路

前述しましたが、インフルエンザの感染経路には主に飛沫感染と接触感染があり、それぞれの違いや共通点を知ることで、より効果的な予防策を講じやすくなります。

ここでは、飛沫感染と接触感染の違いについて、さらに詳しく紹介します。

飛沫感染の仕組み

インフルエンザの飛沫感染は、感染者が咳やくしゃみをした際に放出される小さな飛沫を介して感染が広がる仕組みです。

この飛沫は、ウイルスを含んだ水分の粒で、周囲の約1〜2メートルまで広がり、近くにいる人が吸い込むことで感染します。

飛沫は大きく、長時間空気中に留まることは少ないですが、人が密集する場所や換気の悪い空間では感染リスクが高まります。

また、飛沫は気温や湿度の変化にも影響を受けやすい性質です。

乾燥した環境では飛沫の水分が蒸発し、軽くなったウイルスが浮遊しやすくなるため、特に冬季に流行が見られます。

このような環境での咳やくしゃみが、飛沫感染を拡大させる要因のひとつです。飛沫感染を防ぐためには、マスクの着用や手や腕で口を隠す咳エチケットの実践がおすすめです。

接触感染の仕組み

接触感染は、感染者が触れた物体や表面に付着したウイルスが別の人の手に移り、その手で顔や口、鼻、目などの粘膜に触れることで感染する仕組みです。

特に、付着する材質によってウイルスの生存時間が異なり、金属やプラスチックなどの硬い表面では長時間生存する点には注意が必要です。

例えば、感染者がくしゃみをした手で金属製のドアノブや手すりなどに触れた場合、その場所にウイルスが付着し、長く留まります。

ウイルスが死滅する前に別の人が同じ場所に触れると、ウイルスが手に移り、その後、粘膜に接触することで感染します。

ただし、金属やプラスチック以外の材質なら短時間でウイルスが消えるということではありません。以下の表を参考にしてみてください。

材質ウイルスの生存時間
金属約24~48時間
プラスチック約24~48時間
布・紙・ティッシュなど約8~12時間

日常的に人が触れる場所は、材質にかかわらず消毒をこまめに行うとよいでしょう。触れる機会が多い場所は意識的な清掃が効果的です。

飛沫感染と接触感染の予防策

インフルエンザ 感染経路

インフルエンザの感染予防には、飛沫感染と接触感染それぞれに適した対策が必要です。飛沫感染を防ぐためにはマスクの適切な使用が有効であり、接触感染の予防には手洗いや消毒が重要です。

ここでは、このような具体的な予防方法や、感染リスクを抑えるための実践的なポイントを紹介します。

飛沫感染予防の基本

飛沫感染を予防するために重要な方法のひとつは、正しいマスクの着用です。

インフルエンザウイルスは飛沫を通じて感染しやすいため、マスクが飛沫を防ぐバリアとなります。

マスクを使用する際には以下のことを意識しましょう。

  • 不織布マスクを選ぶ
  • 鼻と口をしっかりと覆い、隙間ができないように着用する

不織布マスクを正しく着用することで、飛沫の侵入を効果的に防ぎやすくなります。

また、外出中は外さず、濡れたり汚れたりしたら新しいものに交換するとなおよいでしょう。屋内でも、換気の悪い場所や人が多い場所へ行く際には着用をおすすめします。

使用後の処理も大切です。使用したマスクはウイルスが付着している可能性があるため、密閉できる袋などに入れ、自分で廃棄するようにしましょう。

適切な距離を取る

飛沫感染リスクを抑える方法として、人と人との間に十分な距離を取ることも有効です。感染した人がくしゃみや咳をしても、飛沫が他の人に届く可能性を低減します。

具体的な距離としては、一般的に2メートル程度の距離が推奨されています。

ただし、2メートル程度離れていれば確実に感染しないということではありません。飛沫の勢いや環境によっては、2メートル程度離れていても感染する可能性があります。

ほかの対策と合わせて距離を意識し、感染確率を軽減していきましょう。

接触感染対策としての手洗い

手洗いは接触感染を予防するための基本的な対策です。外出先から帰宅した際や、食事の前後、トイレの後など、こまめに手を洗う習慣をつけましょう。

手洗いの際は石けんやハンドソープを使い、手のひらや指の間、手首までしっかりと洗います。

約20秒ほど洗った後、流水で十分にすすぎましょう。

また、外出先で手洗いが難しい環境なら、アルコール消毒の併用もおすすめです。市販の消毒薬や消毒ジェルを使ってみてください。

ドラッグストアなどで手軽に購入できますが、感染症が流行するシーズンには品薄になることもあるため、流行の少し前(インフルエンザなら10月~11月)に用意しておくと便利です。

消毒薬や消毒ジェルを持ち歩いていれば、手洗いだけではなく、ウイルスの付着が気になるものをすぐに消毒できるメリットも生まれます。

日常生活での消毒の重要性

インフルエンザウイルスは手や物を介して広がるケースも多いため、日常生活における消毒も感染予防におすすめです。

アルコール消毒を活用し、自分や家族が触れる機会が多い場所を意識的に清掃しましょう。特に以下の場所やものは接触が多いため、意識してみてください。

  • ドアノブ
  • リモコン
  • スマートフォン など

このほか、ウイルスが残りやすい部分を重点的に拭き取り、清潔な環境を維持しましょう。日常的に消毒を行うことで、接触感染のリスクを大幅に減らしやすくなります。

消毒に使うアルコールの濃度は70%以上のものがおすすめで、その濃度は手指消毒にも適しています。

消毒薬や消毒ジェルと同様、消毒用アルコールも感染症の流行時には品薄になることが多いため、インフルエンザ対策として取り入れるのなら、流行前の10月~11月に用意しておくとよいでしょう。

インフルエンザ感染リスクを減らすための生活習慣

インフルエンザ 感染経路

インフルエンザの感染リスク軽減は、毎日の生活の中で実践できるものもあります。できる範囲で取り入れ、インフルエンザの感染を予防しましょう。

ここでは、インフルエンザ感染リスクを減らすためにできる生活習慣を紹介します。

個人の衛生を保つための心がけ

インフルエンザに『感染する』『感染させる』両方のリスクを減らすためには、個人の衛生管理を徹底することも効果的です。

まずは、こまめな手洗いや手指消毒を習慣化し、手に付着したウイルスを除去するようにしましょう。

また、外出から帰宅した際は、手洗いとともにうがいを行い、口腔内や喉を清潔に保つようにしてみてください。

健康管理も感染予防には欠かせません。十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけ、健康を維持することにより、感染しにくい身体づくりが進められます。

流行前にインフルエンザワクチンの予防接種をしておくのも効果が期待できます。ワクチンと衛生管理を同時に行うことで、より効果的な予防が実現するでしょう。

外出先でできる予防方法

外出先でインフルエンザの感染を避けるためには、公共の場や混雑した場所での対策がおすすめです。

公共の場では、できるだけ他人との距離を保ち(理想は約2メートル)、混雑した場所では短時間の滞在を心がけましょう。

また、手すりやエレベーターのボタンなど、多くの人が触れる部分は接触感染の可能性が高い部分です。

直接触れないことがもっともよいですが、触れた場合は手洗いや消毒薬・消毒ジェルを使い、手指を清潔に保つよう心がけます。

公共交通機関を利用する際には不織布のマスクを着用し、外出先から戻った際には、すぐに手洗いやうがいを行いましょう。

家庭内での感染予防

家庭内でインフルエンザの感染を防ぐためには、家族全員での予防対策が求められます。

特に、家族の一人が感染した場合は、部屋を分け、接触をできるだけ避けるようにしましょう。

家庭内の共有スペースでは換気をこまめに行い、新鮮な空気を取り入れてウイルスを拡散させないことが大切です。

ドアノブやテーブルなど頻繁に触れる場所は、アルコール消毒で定期的に清掃し、感染リスクを減らします。

タオルやコップなどは共用を避け、個別のものを使い、接触感染を軽減しましょう。

また、家族そろっての予防接種もおすすめです。全員が難しくても、免疫力が低い子どもや高齢の人が受けるだけでも予防効果が高まります。

予防接種を受けても100%感染しないわけではありませんが、接種していた場合、万が一感染しても重症化を防ぎやすいメリットがあるため、ぜひご家族で検討してみてください。

まとめ

インフルエンザの感染経路は『飛沫感染』と『接触感染』があり、それぞれ適した予防方法があります。

不織布マスクの着用やこまめな消毒など、日常生活の中で取り入れやすい予防方法を実践して、インフルエンザが流行する冬季も健康を守りながら生活しましょう。

広尾クリニック 内科・消化器ではインフルエンザの予防接種を行い、患者さんの健康を守るお手伝いをしています。同時に予防方法の疑問や質問などについてもご相談いただけますので、ぜひお気軽にご連絡ください。