アニサキスとは?症状・予防法・治療や緊急時の受診について

アニサキス

アニサキスは魚介類に寄生する線虫で、生の魚を食べることで体内に入り、胃や腸に強い痛みを引き起こすことがあります。

感染すると食後数時間以内に激しい胃痛や吐き気を感じることが多く、まれに腸閉塞を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

特に刺身や寿司などの生魚を食べる機会が多い人は、リスクを理解し、適切な予防策を取ることが重要になるでしょう。

この記事では、アニサキスの特徴や症状、発症までの時間、予防法などについて詳しく解説します。

また、アニサキス症を発症した際の治療方法についても紹介するため、もしも発症した際には参考になさってください。

アニサキスとは?特徴と寄生の仕組み

アニサキス

アニサキスは魚介類に寄生する線虫の一種で、人が生魚を摂取することで感染する可能性があります。

寄生したアニサキスは胃や腸の壁に刺入し、強い痛みや吐き気などの症状を引き起こす可能性があるため、摂取しないように注意することが大切です。

ここでは、アニサキスの特徴や寄生する魚の種類、感染リスクについて詳しく解説します。

アニサキスの基本情報と特徴

アニサキスは、クジラやイルカなどの海洋哺乳類を最終宿主とする寄生虫です。

幼虫は海中で孵化し、オキアミなどの小型甲殻類に取り込まれます。

その後、これらの甲殻類を捕食した魚介類に寄生し、最終的に海洋哺乳類の消化管へ入り込むというサイクルです。

人間がアニサキス幼虫を含む魚介類を生で食べると、幼虫が胃や腸の粘膜に刺さる恐れがあります。

人体はアニサキスの本来の宿主ではないため、寄生し続けることはできませんが、刺さる時の刺激によって強い炎症や痛みが引き起こされることが少なくありません。

通常は数日以内に死滅し、自然に排出され、症状も治まりますが、症状が重い場合には医療機関での処置が必要です。

アニサキスが寄生する魚介類と刺身のリスク

アニサキスの幼虫は、特定の魚介類に寄生することが知られています。主な宿主は以下が代表的です。

  • サバ
  • アジ
  • イワシ
  • サンマ
  • カツオ
  • サケ
  • イカ など

このような魚の内臓に多く生息していますが、魚が死亡すると筋肉部分へ移動することがあるため、鮮度が高い状態で処理されていない場合は注意が必要です。

特に日本の食文化では、刺身や寿司などで魚の生食が多く、感染するリスクが高いため、調理中に可能な限り除去することが求められます。

目視でアニサキスを確認する方法もありますが、幼虫は透明で肉眼では見つけにくいため、除去が難しいケースもあります。

安全に生魚を食べるためには、事前に適切な処理が施されたものを選ぶことが大切です。

アニサキス中毒の発生原因

人体はアニサキスに適した環境ではなく、幼虫が体内で成長することはありません。しかし、胃や腸の粘膜に侵入すると免疫反応が活発になり、炎症を引き起こします。

特に、消化液や免疫細胞との接触によって幼虫が刺激を受けると、粘膜に深く刺入し、強い痛みを伴うことが特徴です。

胃に寄生した場合は数時間以内に症状が現れ、腸に到達した場合は数日遅れて腹痛が生じることもあります。

アニサキスは通常1週間以内に死滅し、自然に体外へ排出されますが、死滅するまでの間に免疫細胞の働きで組織に炎症が広がることがあります。

アニサキス症の主な症状と発症時間

アニサキス

アニサキス症になった場合、症状や発症するまでの時間は共通することが多いです。知っておくと、万が一発症した場合にアニサキス症かどうかを予想しやすくなるでしょう。

ここでは、症状の特徴や発症時間、他の食中毒との違いについて解説します。

アニサキス症の典型的な症状

アニサキス症は、胃や腸に侵入した幼虫が粘膜を刺激し、急性の炎症を引き起こすことで発症します。胃で発症すると胃アニサキス症、腸で発症すると腸アニサキス症と診断されます。

胃に寄生した場合、食後数時間以内にみぞおち付近の激しい痛みや吐き気、嘔吐が生じることが一般的です。痛みは持続的で、時間が経つにつれて強くなることもあります。

胃から腸に幼虫が移動してから発症する場合、発症までの時間が遅れ、十数時間から数日後に腹痛が出るケースが多いです。

腸アニサキス症は、まれに腸閉塞の原因となることもあり、強い痛みが続く場合には速やかな診察が必要です。

また、一部の症例では発熱やじんましん、呼吸困難などのアレルギー反応が報告されており、重症化するとアナフィラキシーを引き起こす可能性もあるため、アレルギー体質の人はより注意が求められるでしょう。

アニサキス症の発症時間と進行の特徴

アニサキス症の発症時間は、寄生する部位(胃または腸)によって異なります。

胃に寄生した場合は、食後1時間から数時間以内に症状が出ることが多く、突然の胃痛や嘔吐を引き起こします。

一方、腸に寄生した場合は、発症までに数日かかることがあり、症状が遅れて現れるため、原因の特定が難しくなるケースも珍しくありません。

症状が悪化する兆候として、以下のような症状が挙げられます。

  • 激しい腹痛が続く
  • 嘔吐が止まらない
  • 腸閉塞のような症状が見られる
  • 痛みが強くなる
  • 発熱がある

このような状態はアニサキス症が悪化している可能性が高いです。医療機関での診察を受け、症状に応じた適切な治療を受けましょう。

他の食中毒との違い

アニサキス症は、ほかの食中毒と異なる特徴を持っています。

例えば、ノロウイルスやサルモネラ菌による食中毒では、下痢が主な症状として現れますが、アニサキス症では下痢はほとんど見られず、強い胃痛・腹痛が主な症状です。

また、細菌性の食中毒では発熱を伴うことが多いのに対し、アニサキス症では発熱がほとんど見られないか、あっても軽度であることが特徴です。

発症のタイミングにも違いがあります。

ノロウイルスや細菌性食中毒は潜伏期間が数時間から数日と幅がありますが、アニサキス症は食後比較的短時間で症状が現れることが多いです。

また、持続的な腹痛や嘔吐がある場合は、医療機関での診察が必要です。適切な処置を受けることで症状が早く改善するため、自己判断せずに速やかに医療機関に相談しましょう。

アニサキスの感染を予防するには?

アニサキス

アニサキス症を予防するためには、適切な調理方法を守ることが効果的です。

ここでは、アニサキスを防ぐための具体的な対策について解説します。

加熱・冷凍による予防法

アニサキスは、高温や低温の環境では生存できません。加熱処理では70℃以上で1分間、冷凍処理では−20℃以下で24時間以上の保存で死滅します。

このため、焼き魚や煮魚といった十分に加熱された料理では、アニサキスによる食中毒のリスクは軽減されていると考えられるでしょう。

家庭で生魚を調理する際は、刺身用の魚でも冷凍処理を施したものを選ぶことが望ましいです。

また、加熱調理を行う場合は、魚の中心部までしっかりと火が通るように注意しましょう。

新鮮な魚であっても、内臓を取り除かずに保存したものはリスクが高いため、生食には適していません。

魚が死ぬとアニサキスは筋肉へ移動するため、内臓が残った状態で放置すると寄生リスクが上がってしまいます。

調理や食事時の注意点

アニサキスは肉眼で確認できることもあるため、調理時のチェックで感染リスクを減らせます。幼虫は白色または半透明の糸状で、長さは約2~3cm程度です。

特に魚の内臓や筋肉に潜んでいるため、包丁で切り分ける際に異常がないか確認し、見つけた場合は取り除きましょう。

また、アニサキスは魚の表面よりも内部にいることが多いため、単に洗うだけでは除去できません。刺身を調理する際は、魚をよく観察しながら薄く切ることで、寄生虫の有無をチェックしやすくなります。

ただし、肉眼では完全に把握できず、取り除ききれない恐れもあります。生食をする魚を購入する際には、冷凍処理されたものを選び、アニサキスの感染リスクをより軽減しましょう。

特定の魚を避けるべきか?

前述の通り、アニサキスは特定の魚種(サバ、アジ、イワシなど)に寄生しやすいことが知られています。

該当する魚を生で食べる場合は、冷凍処理されたものを選ぶか、十分な加熱調理を行うことを意識してみてください。

また、「鮮度の高い魚なら安全」と考えるのは危険です。魚が生きている間はアニサキスは主に内臓に留まっていますが、魚が死ぬと筋肉へ移動する性質があります。

そのため、市場やスーパーで販売されている時点ですでにアニサキスが筋肉内に入り込んでいる可能性が否定できません。

生食を選ぶ際のポイントとして以下を意識してみましょう。

  • 目視での確認
  • 冷凍処理の有無
  • 信頼できる販売元で購入する

特に家庭でさばく場合は、内臓をすぐに取り除き、筋肉内のチェックを怠らないようにしましょう。

十分注意すればサバやアジなどを食べること自体には問題ありませんが、飲食店での外食で、処理方法や安全性が確認できない場合は、避けたほうがいいかもしれません。

アニサキス症の治療方法

アニサキス

胃や腸の粘膜に寄生したアニサキス幼虫は炎症を引き起こします。強い痛みを伴うことが多いため、適切な治療を受けて苦痛を軽減しながら回復を目指しましょう。

ここでは、症状が出た際の応急処置や医療機関での治療方法、『アニサキス緊急外来』の利用について詳しく解説します。

症状が出たときの応急処置

アニサキス症の症状は、摂取後すぐに現れることが多く、胃痛や腹痛、吐き気などが主な症状として挙げられます。

まず、症状が軽度であっても自己判断せず、医療機関を受診しましょう。

特に、以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

  • みぞおち付近に激しい痛みがある
  • 嘔吐が止まらない
  • 腹部の膨満感や圧迫感が強い
  • 痛みが時間とともに悪化する

特に腸に寄生した場合は、発症までの時間が遅れ、数日経ってから症状が悪化することもあります。

自己判断で対処せず、速やかに医療機関を受診することが望ましいです。

受診するべきかどうか迷った時には、まず医療機関へ問い合わせをしてみてください。

その際、生の魚を食べたかどうか、食べたのはいつ頃かなどを伝えると、医療機関側が判断するための有効な材料になります。

医療機関での治療方法

アニサキス症の確定診断には、内視鏡検査が有効です。特に、胃アニサキス症の場合は、内視鏡を用いた確認と摘出処置を行うことで症状が改善することが多いです。

内視鏡による除去手術は、患者さんの胃の内部を直接観察しながらアニサキスを発見し、専用の鉗子を使って摘出する方法になります。

この治療によって、痛みがすぐに軽減されることがほとんどです。

なお、胃の中にアニサキスが見つからない場合、炎症を抑えるための鎮痛剤や抗炎症薬が処方されることもあります。

腸アニサキス症では内視鏡による摘出が難しいため、一般的には対症療法(絶食や点滴など)での対応が主です。しかし、炎症が重度であれば入院治療が必要になることもあります。

アニサキス緊急外来での対応

アニサキス症の症状が重い場合、緊急外来の受診が推奨されます。 特に激しい胃痛や嘔吐、持続する腹痛がある場合は、アニサキス緊急外来を利用することで迅速な診断と治療を受けやすくなります。

当院・広尾クリニック内科・消化器でもアニサキス緊急外来を開設しており、アニサキス症と疑われる患者さんへ診察・検査・治療をご提供しています。

特に以下のような症状がある場合、早急な受診を検討してみてください。当院のアニサキス緊急外来でも重視している症状です。

  • 生魚や刺身を食べた後に急激な腹痛や嘔吐症状が出た
  • 食後数時間以内に腹部に違和感や激しい痛みが出た
  • アニサキス症が発症する条件下で発熱や全身の不調を感じる

受診時は、事前に電話で「緊急外来を受診したい」と連絡しておくとスムーズです。症状が疑われる場合は、迷わず医療機関に相談しましょう。

まとめ

アニサキス症を発症し、強い胃痛や腹痛、嘔吐がある場合は、すぐに医療機関を受診して適切な治療を受けることが望ましいです。

胃アニサキス症では、内視鏡を用いた摘出が効果的で、摘出後すぐに症状が改善することが多いため、苦痛を早く軽減するためにも早めの受診を検討してみてください。

腸アニサキス症の場合は、自然排出を待つこともありますが、重症化すると腸閉塞を引き起こすことがあるため、やはり受診を検討しましょう。

広尾クリニック内科・消化器では、アニサキス緊急外来で緊急性の高い患者さんの診察・検査・治療を行っています。「アニサキス症かも」「ひどくなっているかも」と感じたら、迷わず当院へご連絡ください。