その症状、腸の働きに異常が起きているかもしれません

「下痢がなかなか治らない」「慢性的に便秘で苦しい」「下痢と便秘を繰り返している」——下痢と便秘は一見反対の症状に思われますが、いずれも腸の働き(運動機能・水分調節・粘膜の状態)に何らかの異常が起きているサインです。

一時的な下痢や便秘は食生活の乱れや体調不良、環境の変化などでも起こりますが、症状が数週間以上続いたり、繰り返したりする場合には、過敏性腸症候群・炎症性腸疾患・大腸がんなどの疾患が背景に隠れていることもあります。特に、下痢と便秘を交互に繰り返す状態は、大腸がんの警告症状のひとつとしても知られています。

市販の下剤や整腸剤で一時的に症状が落ち着いても、原因となる疾患が治っているとは限りません。気になる症状が続いている方は、自己判断で放置せず、一度消化器内科で大腸の状態を確認することをお勧めします。

症状別に考えられる原因

気になる症状ごとに、どのような原因が考えられるのかをご紹介します。

下痢 — 腸の動きが速すぎる・水分吸収が追いつかない

下痢は、便の水分量が多くなり、軟便や水様便として排出される状態です。腸の動きが通常より速くなって水分の吸収が間に合わない、腸から腸管内への水分の分泌が増える、腸の粘膜に炎症が起きているといった理由で起こります。

下痢は持続期間により大きく分類されます。数日で治まる急性の下痢は感染性腸炎や食あたり、薬の副作用などが多く、一方で4週間以上続く慢性の下痢の場合は、過敏性腸症候群・炎症性腸疾患・大腸がん・食物不耐症などの可能性があるため、大腸カメラ検査などの精査が必要となることがあります。

便秘 — 腸の動きが鈍い・便が通過しにくい

便秘とは、本来体外に排出すべき便が十分な量かつ快適に排出できない状態と定義されています。排便の回数が少ない、便が硬くて出しにくい、残便感がある、強くいきまないと出ない——これらも便秘の症状です。

便秘の原因は、大腸の動きが低下して便の通過が遅くなる「弛緩性便秘」、腸のけいれんにより便の通過がうまくいかない「けいれん性便秘」、直腸まで便が来ているのに排便反射が弱まって出にくい「直腸性便秘」などの機能的なものと、大腸がんや大腸憩室症などによる物理的な通過障害があります。

急に便秘がひどくなった場合、便が細くなった場合、便秘に加えて腹痛や血便を伴う場合は、大腸カメラ検査で原因を確認することが大切です。

下痢と便秘を繰り返す — 特に注意が必要な症状

下痢と便秘を交互に繰り返す「交替性便通異常」は、過敏性腸症候群(混合型)の典型的な症状です。しかし、同じ症状が大腸がんの初期症状としても現れることがあります。がんによって腸管が部分的に狭くなると、便が詰まりやすくなって便秘となり、その後ある程度まとまって通過するときに下痢のような状態になるためです。

「体質だから」「ストレスのせい」と自己判断せず、特に40歳以上の方、血縁者に大腸がんの方がいらっしゃる方、便の形が変わってきた方は、一度大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。

こんな症状を伴うときは早めの受診を

下痢や便秘に以下のような症状を伴う場合は、注意が必要な疾患の可能性があります。早めに医療機関を受診してください。

  • 血便・粘液便が出る
  • 体重が減ってきている
  • 発熱を伴う下痢
  • 便の形が細くなった、残便感が続く
  • 夜間にも下痢で目が覚める/li>
  • 腹痛が強い、または長く続く
  • 抗菌薬の服用後に下痢が始まった、悪化した

特に夜間や早朝の下痢は、過敏性腸症候群よりも炎症性腸疾患などの器質的な疾患でみられやすい症状とされています。

これらの症状を起こす代表的な疾患

下痢や便秘が続いている場合、背景に以下のような疾患が隠れている可能性があります。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、大腸に炎症や腫瘍などの明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛・便通異常(下痢・便秘)が慢性的に続く機能性の疾患です。ストレス、自律神経の乱れ、腸内細菌のバランスの変化、腸の知覚過敏などが関与すると考えられています。

症状のタイプにより、下痢型・便秘型・混合型・分類不能型に分けられます。通勤電車の中やプレゼンの前など、緊張する場面で症状が強くなる方もいらっしゃいます。診断は、大腸カメラ検査で同様の症状を起こす他の疾患(大腸がん・炎症性腸疾患・感染性腸炎など)を除外したうえで行われます。治療は、生活習慣の改善、食事指導、薬物療法(整腸剤、便通を整える薬、腹痛を和らげる薬など)を組み合わせて行います。

機能性便秘・機能性下痢

機能性便秘は、大腸や直腸に明らかな異常がないのに便秘が慢性的に続く状態で、日本人の便秘の多くがこのタイプに該当します。食物繊維や水分の不足、運動不足、ストレス、加齢に伴う腸の運動機能の低下、排便を我慢する習慣などが原因となります。

機能性下痢は、器質的な異常がないのに慢性的に下痢が続く状態です。冷たい飲食物や特定の食品で下痢が誘発される方、朝食後に下痢が起こりやすい方なども、機能性下痢の可能性が考えられます。ただし、自己判断は避け、まずは大腸カメラ検査で器質的疾患を除外し、診断を確定させたうえで生活改善や薬物療法を行います。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

大腸や小腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が起こる疾患で、厚生労働省の指定難病に指定されています。腹痛・下痢・血便が主な症状ですが、発熱・体重減少・倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起こる疾患、クローン病は口から肛門まで消化管のあらゆる部位に炎症が起こり得る疾患です。どちらも若年成人に発症しやすく、寛解(症状が落ち着いている時期)と再燃(症状が悪化する時期)を繰り返すのが特徴です。適切な治療により症状を抑制できれば健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることが可能で、診断と経過観察には大腸カメラ検査が欠かせません。

感染性腸炎

感染性腸炎は、細菌・ウイルス・寄生虫などの病原体によって大腸に炎症が起こる疾患です。主な原因となる病原体には、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、ノロウイルス、ロタウイルスなどがあります。症状は下痢、腹痛、発熱、血便、嘔吐などで、原因となる病原体や感染した量により重症度が異なります。

また、抗菌薬の服用後に下痢が起こる場合は、腸内細菌のバランスが乱れたことによる下痢や、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CD腸炎)の可能性もあります。血便が続く、症状が長引く、抗菌薬治療後も改善しないといった場合は、大腸カメラ検査で腸の状態を確認し、他の疾患との鑑別を行います。

大腸がん

大腸がんは、日本人のがん死亡数では女性の1位、男性の2位(2023年時点)となっています。早期には自覚症状がほとんどありませんが、進行するとがんによる腸管の狭窄により便の通過が悪くなり、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなる、血便、腹痛、体重減少などの症状が現れることがあります。

大腸がんの多くは良性の大腸ポリープから発生するといわれています。そのため、症状のない段階から定期的に大腸カメラ検査を受け、ポリープの段階で発見・切除することが、大腸がんの予防につながります。

大腸メラノーシス(下剤常用による)

大腸メラノーシス(大腸黒皮症)は、大腸の粘膜が黒色〜褐色に変色する状態です。センナやアロエ、大黄などを含むアントラキノン系の刺激性下剤を長期間使用している方に起こることが知られています。

市販の便秘薬や漢方薬の中には、アントラキノン系の成分を含むものが多くあります。長期間にわたり常用すると、大腸メラノーシスを引き起こすほか、腸が刺激に慣れて本来の蠕動運動が低下し、下剤がないと便が出にくくなる「弛緩性便秘」を悪化させる原因にもなります。大腸カメラ検査で発見された場合は、下剤の種類や便秘治療の見直しを検討することをお勧めします。

症状が起こりやすい生活習慣・体質

下痢や便秘が起こりやすい生活習慣や体質には、以下のようなものがあります。

  • 食物繊維や水分の摂取が不足している方
  • 不規則な食事、朝食を抜くことが多い方
  • 運動不足で腸の動きが低下しやすい方
  • ストレスを感じやすい方、自律神経が乱れがちな方
  • 排便を我慢する習慣がある方(忙しい朝など)
  • 冷たい飲食物、脂っこいもの、アルコールを多く摂る方
  • 抗菌薬、解熱鎮痛薬、抗コリン薬、麻薬系鎮痛薬などを服用している方
  • 刺激性下剤を長期に常用している方
  • 加齢により腸の運動機能が低下している方

こうした要因が複数重なることで、腸のリズムが乱れて症状が出やすくなります。生活習慣の見直しで症状が改善することもありますが、症状が続く場合は自己判断で放置せず、医療機関にご相談ください。

下剤を長期に使用している方へ

便秘で市販薬を長期に使用している方の中には、「使い続けないと便が出ない」「以前より量を増やさないと効かなくなってきた」といった状態になっている方がいらっしゃいます。これは、刺激性下剤の長期使用により、腸が本来の蠕動運動を起こしにくくなる「弛緩性便秘」が進行しているサインかもしれません。

特にアントラキノン系(センナ・大黄・アロエなど)の成分を含む下剤を長年使い続けていると、大腸の粘膜が黒くなる「大腸メラノーシス」が起こることも知られています。大腸メラノーシス自体は直ちに治療が必要な状態ではありませんが、発見された場合は、下剤の種類や便秘治療そのものの見直しを検討することをお勧めします。

便秘の治療には、刺激性下剤以外にもさまざまな選択肢があります。現在使用している下剤に不安がある方や、下剤に頼らない便秘治療を検討したい方は、一度消化器内科にご相談ください。大腸カメラ検査でご自身の大腸の状態を確認することも、治療方針を考えるうえで有用です。

症状が続くときは早めに大腸カメラ検査を

下痢や便秘は多くの方が経験する身近な症状ですが、その背景には機能性の疾患から大腸がん・炎症性腸疾患まで、さまざまな疾患が隠れている可能性があります。市販の下剤や整腸剤で一時的に症状が改善しても、原因となる疾患が治っているとは限りません。

症状が数週間以上続いている方、下痢と便秘を繰り返している方、血便・体重減少を伴う方、下剤を長期に使用している方、40歳以上で一度も大腸カメラ検査を受けたことがない方は、一度大腸カメラ検査で大腸の状態を確認することをお勧めします。

当院では、日本消化器内視鏡学会専門医である院長が、虎の門病院を中心に培った約3万件の内視鏡経験をもとに、苦痛の少ない大腸カメラ検査をご提供しています。ご希望に応じて鎮静剤の使用も可能で、検査中に10ミリ程度までの大腸ポリープが見つかった場合は、そのまま日帰りで切除することもできます。

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よくあるご質問

下痢や便秘で何科を受診すればいいですか?

下痢や便秘などの消化器症状は、消化器内科の受診をお勧めします。大腸カメラ検査で大腸の状態を直接確認できるほか、必要に応じて腹部X線検査や腹部超音波検査、血液検査などを組み合わせて、原因を総合的に調べることができます。

ストレスでも下痢や便秘は起こりますか?

ストレスや自律神経の乱れは腸の動きに大きな影響を与え、下痢・便秘・腹痛などを引き起こす要因となります。過敏性腸症候群のようにストレスが深く関与する疾患もあります。一方で、「ストレスのせいだ」と思い込んでいた症状の背景に、大腸がんや炎症性腸疾患が隠れていることもあります。症状が続いている場合は、まず大腸カメラ検査で器質的な疾患がないかを確認することが大切です。

市販の整腸剤や下剤で症状が治まっています。受診は必要ですか?

市販薬で一時的に症状が治まっても、原因となる疾患が治っているとは限りません。特に、症状を繰り返す場合や、下痢と便秘を交互に繰り返す場合、便の形が変わった場合、血便や体重減少を伴う場合は、一度大腸カメラ検査で大腸の状態を確認することをお勧めします。また、刺激性下剤を長期に使用している方は、大腸メラノーシスや弛緩性便秘の可能性もあるため、一度ご相談ください。

何日くらい下痢や便秘が続いたら受診すべきですか?

一般的には、下痢が2週間以上続く場合や、便秘のパターンが急に変わって数週間改善しない場合、大腸カメラ検査の目安とされています。ただし、血便・体重減少・強い腹痛・発熱などを伴う場合は、期間に関わらず早めに受診してください。夜間や早朝に下痢で目が覚めるような症状も、器質的な疾患のサインのことがあるため、医師にご相談ください。

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